ニューヨーク州最高裁判所は10月26日、石油最大手のエクソン・モービルと同社の監査法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)に対し、ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン司法長官が指揮する捜査で発行された召喚状に応じることを命じる判決を下した。
ニューヨーク州は、エクソンが原油相場が急落してから2年経過しても資産の評価損を計上していない問題について捜査している。
シュナイダーマン司法長官は2015年11月、エクソンが二酸化炭素排出と気候変動のリスクに関し虚偽の報告を行ったとする申し立てをして、同社を法廷に召喚した。2016年8月に発行された2枚目の召喚状で、エクソンはPwCが同社のために行った業務に関する記録文書の提出を求められた。
司法長官室が26日発表した声明によると、エクソンはニューヨーク州ではなく本社のあるテキサス州の法律に基づいて、監査法人とクライアントとの間には秘匿特権が生じると主張し、PwCに対して文書提出の許可を出さなかったという。
マンハッタン最高裁判所のバリー・オストラガー判事はエクソンの主張を却下した。シュナイダーマン司法長官による召喚に際しては、監査法人とクライアントの秘匿特権を認めないニューヨーク州の法律が適用されるとの判決を下した。
シュナイダーマン司法長官は裁判所の判断を評価し、ニューヨーク州司法長官室は「エクソンの会計処理をめぐる捜査に全力を尽くす」と述べた。
彼は声明の中で「エクソンがPwCの文書開示に干渉する法的根拠はない。本日の命令によって同社が捜査を妨害するのではなく、協力することが最善の道だと気づいてくれることを願う」と述べた。
エクソン・モービルのスポークスマン、アラン・ジェファース氏はハフポストUS版の取材に、「エクソン・モービルは26日の判決を尊重するが、これに異議を唱え、上訴する予定だ」と述べた。
シュナイダーマン司法長官は、「エクソンは捜査を撹乱し、遅らせ、自らの行為が暴かれるのを防ぐために、あらゆる手を使うだろう」と述べた。
エクソンは10月、連邦裁判所に召喚状の取り消しを申し立てた。シュナイダーマン司法長官とマサチューセッツ州のモーラ・ヒーリー司法長官による捜査は「偏見に基づいており、財政上の利益を得るために政治的な野心を達成しようとしている」と主張した。
シュナイダーマン司法長官側はこの主張を否定している。エクソンの要求は「自分たちに有利な訴訟を提起しようと必死にあがいている」ものであり、同社は「捜査を撹乱し、遅らせ、自らの行為が暴かれるのを防ぐために、あらゆる手を使うでしょう」と述べた。
エクソンによると、同社は10年以上前から気候変動リスクの認識を公にしており、ニューヨーク州の捜査にも応じてきたという。26日の判決文に記されているように、シュナイダーマン司法長官の召喚に従って100万通以上の記録文書を公開した。その上でエクソンは「司法長官は気候変動に関する政策協議で、エクソンにプレッシャーを掛けるための法的根拠を求めているだけで、その根拠が乏しいことは明白だ」とコメントした。
■ 1940年代から気候変動のリスクを認識していた?
エクソンは問題が山積している。不正会計の捜査に加えて、アメリカ証券取引委員会もエクソンの調査を開始した。この調査は、気候変動と原油価格の急落が起きる中で、エクソン・モービルがどのように資産評価を行っているかを調べるものだ。
クリーブランドに拠点を置くエネルギー経済・財務分析研究所が26日に発表したレポートによると、エクソンの財務状況は「深刻な悪化の兆候」を示しており、同社は「決定的な衰退」の危機に瀕している恐れがあるという。
気候関連のニュースサイト「インサイド・クライメイト・ニュース」とロサンゼルス・タイムズによると、エクソンの上層部は二酸化炭素の排出に伴う気候変動のリスクに気づいていたが、その危険性を隠匿するための研究に資金提供を行い、規制を免れていた。これを受けて、2016年春に「アトニージェネラルズ・ユナイテッド・フォー・クリーンパワー」(クリーンパワーのための司法長官連合)という連合団体が設立された。
さらに最近の捜査では、ハンブル・オイル(現エクソン・モービル)が化石燃料と二酸化炭素排出の関連性を1957年以前から認識していたと示す文書が国際環境法センターによって公開された。そして同社が1940年代からすでに「世論操作のための研究」を行っていたことが、この調査により明らかになった。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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