電通本社に強制捜査に入る厚労省の職員ら=7日午前9時27分、東京都港区、北村玲奈撮影
ABCやドンキも立件 電通を捜査する「かとく」とは
厚生労働省は7日、広告大手、電通の本社(東京・汐留)と全国の3支社に労働基準法違反の疑いで一斉に強制捜査に入った。過労自殺した女性新入社員の高橋まつりさん(当時24)の労災認定を受けて、高橋さんの母親が記者会見してからちょうど1カ月。労働基準法違反容疑での立件に向けた動きが加速している。
高橋さんの労災認定は9月30日で、遺族が記者会見したのは翌10月7日。東京労働局などが労基法違反の疑いで電通本社を抜き打ち調査したのは、その1週間後の14日だった。全国の主要子会社5社にも18日までに立ち入り調査に入った。
違法な長時間労働について労働局が調べる際、立ち入り調査に着手してから、立件に踏み切るまで1年単位の時間をかけるのが通例。今回は「同時期に本社と支社、子会社を一斉に調査するのは異例」(厚労省関係者)というスピード捜査となっている。7日の強制捜査には全国で88人を動員したが、これも「異例の規模」(同)だ。
捜査にかかわるのが、過重労働撲滅特別対策班(かとく)。過重労働が疑われる企業を集中的に調査する特別チームで、東京・大阪の両労働局だけにある。「ブラック企業」問題の深刻化を受け、悪質な事例の取り締まりを強化する狙いで、昨年4月に発足した。
これまでに、靴チェーン店「ABCマート」や、ディスカウント店を展開する「ドン・キホーテ」などの違法残業の案件を立件してきた実績があり、行政指導にとどまらず、企業や経営陣の刑事責任を追及するケースが目立つ。いずれも、立件までの過程で強制捜査をしていて、法人だけでなく、労務管理の責任者だった店長や役員らも書類送検している。
(朝日新聞デジタル 2016年11月07日 17時11分)