
安倍晋三首相は11月11日、日本を訪れていたインドのモディ首相と会談し、日印原子力協定に調印した。インドへの原発輸出が可能になる。
日本は原子力協定を13カ国・1国際機関と締結しているが、被爆国の日本が、核拡散防止条約(NPT)未加盟の核保有国と協定を結ぶのは、フランスや中国などの例があるが、いずれも1992年に加盟している。
被爆国として核軍縮を掲げる日本が、NPT未加盟の核兵器保有国に原発を輸出する協定を締結することには強い反対もあるため、日本側は、インドが核実験をした場合は協力を停止すると条文に明記するよう求めてきた。
しかし、インド側に「核政策は主権に関わる」として拒否され、朝日新聞デジタルによると、協定とは別の「見解及び了解に関する公文」と題する関連文書に書き込むことで妥協した。
関連文書は、「日本の見解」として、2008年9月にインドが行った「核実験モラトリアム(一時停止)」声明を協定の「不可欠の基礎」とし、変更が生じた場合、協定を終了できる権利を有すると記載。インド側もモラトリアム声明を再確認し、これらを「両国の見解の正確な反映と了解する」としている。
(日印原子力協定に署名 「核実験で協力停止」本文盛らず:朝日新聞デジタルより 2016/11/11 21:46)
この日の会談では、インド西部に2018年に新幹線を着工し、2013年に開業することも合意された。安倍首相は会談後の共同記者会見で、「『強いインド』は日本のためになり、『強い日本』はインドのためになる。モディ首相と緊密に協力して日印新時代に力強く貢献していきたい」と、経済関係の強化を強調した。原子力協定については、以下のように述べている。
「インドを国際的な核不拡散体制に実質的に参加させることにつながる。核兵器のない世界を目指すわが国の立場に合致するものだ」
(安倍晋三首相「日印は最も可能性を秘めた関係」 インドのモディ首相と会談、「アジア二大民主主義国」のパートナーシップ推進(1/2ページ) - 産経ニュースより 2016/11/11 21:54)
広島市の松井一実市長は11日「核物質や原子力関連技術・資機材の核兵器開発への転用の懸念は残っている」と、インドの核不拡散体制への懸念を示す談話を発表、インドのNPT加入を日本政府に働きかけるよう求めた。長崎市の田上富久市長も「核物質や原子力関連技術・資機材の核兵器開発への転用やNPT体制の空洞化への危惧がある」として「被爆地として極めて遺憾」とする談話を出している。
首相官邸前には、毎週金曜夜の市民団体の反原発デモに「原発売るな」「日印原子力協定反対」という横断幕やプラカードを掲げる人々がいた。主催者によると「普段の4倍程度」の人が集まったと、朝日新聞デジタルは報じている。