ブルース・スプリングスティーンの盟友、次期副大統領に直訴した俳優を批判「いじめだ」

「俺はどんな形であってもいじめは許さない」

スティーブ・ヴァン・ザント。9月に撮影された妻のモーリーン・ヴァン・ザントとの写真。ミュージカル「ハミルトン」のメンバーたちがマイク・ペンス次期副大統領の弱みに付け込んだ、と語った。

ミュージシャンで俳優のスティーブ・ヴァン・ザントは、ミュージカル「ハミルトン」の観劇に来ていたマイク・ペンス次期副大統領に向かって、出演した俳優たちが「アメリカの価値観を守って」と直訴したことに「いじめだ」ともの申した。

「ハミルトン」はアメリカ建国の父の1人、アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いたミュージカルで、白人のキャストが少なく、ヒップホップの音楽とダンスで構成されている。2016年のトニー賞では作品賞など最多の11部門を受賞した人気ミュージカルだ。

「明日なき暴走」などで知られるロックミュージシャン、ブルース・スプリングスティーンのバックバンド「Eストリートバンド」のギタリストで、人気テレビシリーズ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」で俳優としても活躍した"リトル・スティーブン"ことヴァン・ザントは、政治的発言にも積極的だ。

ブルース・スプリングスティーン(左)とスティーブ・ヴァン・ザント

ヴァン・ザントは1985年、南アフリカの非白人隔離政策「アパルトヘイト」を批判するプロジェクト「Artists United Against Apartheid」(アパルトヘイトに反対するアーティストたち)を提唱し、南アフリカにある白人専用リゾート「サン・シティ」には出演しない、と抗議するミュージシャンたちを集結させた。「サン・シティ」にはマイルス・ディビス、ボノ、ルー・リード、ボブ・ディラン、アフリカ・バンバータ、ジョージ・クリントン、ハービー・ハンコックら錚々たるメンバーが参加している。

ヴァン・ザントは、11月18日に「ハミルトン」の出演者たちが、マイク・ペンス次期副大統領を不当に集団で攻撃したと話した。

人気ミュージカルの舞台上で、アーロン・バー役を演じている出演俳優のブランドン・ヴィクター・ディクソンは、ブロードウェイミュージカル上演後、ペンス氏に直接話しかけた。ミュージカルに来てくれたペンス氏を歓迎しながらも、ディクソンは「新政府がこの国の多様な人種にどのように対応していくのか心配している」と語り、このミュージカルがペンス氏にとって、「すべてのアメリカ人のために尽くす良い刺激となることを願う」と言った。

しかしヴァン・ザントは異論を唱えた。19日、このようにツイートした。

あれは今まで見た中で最も丁重で温和な形のいじめだ。でもいじめはいじめだ。言わせてもらうと、人権は勝ち取るべきものであって、要求するべきものではない。アーティストが舞台で演じるとき、そこはアーティストの家となる。観客は家に招かれたお客様だ。この舞台は、招かれた家で安全だと思っていた人の弱みに付け込んだんだ」

観客の多くは、反LGBT法を制定しようとし、「コンバージョン・セラピー」(性的指向を変える治療)を支援したこともあるペンス氏を、ディクソンが公然と名指ししたことを褒めたたえた。

しかしヴァンザントは、ペンス氏の方針には賛同しないが、「俺はどんな形であってもいじめは許さない」と言う。

「あれは今まで見た中でいちばん丁重で温和な形のいじめだ。でもいじめはいじめだ。言わせてもらうが、人権は勝ち取るべきものであって、要求するものじゃない」

ヴァン・ザントは、自分は無党派層で、LGBTの権利を支持していると語っている。彼はこう付け加えた。「1人の男がブロードウェイのミュージカルに足を運び、リラックスした夜を過ごせると思っていた。しかし、リラックスどころか、彼はステージから説教された。自分の活動の場ではない場所でだ。これはいじめだ。観客を名指ししてステージから恥をかかせるなんて。舞台にひどい前例を作ってしまった」

ドナルド・トランプ次期大統領はこの直訴を「無礼」だとし、謝罪を要求した。

「ハミルトン」の原作者リン・マニュエル・ミランダはTwitter上でディクソンを擁護し、このようなことがあってもこの劇場は全ての人を歓迎していると述べた。

「ハミルトン」を誇りに思う。ブランドン・V・ディクソンが愛を持って指揮したことを誇りに思う。そして、この劇場では全ての人を歓迎していることをみんなに伝えられることを誇りに思う。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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