フィデル・カストロ氏「人類は広島の教訓を学び取っていない」来日時に訴えた平和への思いとは

「広島と長崎の人たちは全く罪のない犠牲者。哀悼の意を表したいという長年の願いがかなった」

11月25日に90歳で死去したキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長。親日家として知られたカストロ氏だが、2003年3月の来日時には広島を訪問している。1962年、人類史上最も核戦争の危機が高まったとされる「キューバ危機」を経験したカストロ氏にとって、広島の訪問は「長年の夢」だったという

平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花するキューバのフィデル・カストロ国家評議会議長 2003年03月03日

平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花するキューバのフィデル・カストロ国家評議会議長 2003年03月03日

■「人類は広島の教訓を学び取っていない」

2003年3月3日、広島を訪れたカストロ氏は平和記念資料館(原爆資料館)を訪問。原爆投下後の広島市内のパノラマ写真などを見学した。

この時カストロ氏は、平和記念資料館の芳名録に、こんな言葉を書き遺している。

このような残虐な行為を、決してまた犯すことのないように


カストロ氏は、この日開かれた歓迎昼食会の席で、広島に原爆が投下されたニュースを当時のラジオ放送で聞いたエピソードを明かし、「様々な戦争のエピソードの中で最も衝撃を受けた」と述べた。その上で、広島の被爆の教訓を、人類は学ぶべきだと訴えた。

人類は広島の教訓を十分学び取っておらず、世界はまだ危険のふちにいる。たくさんの人々が広島を訪れなくてはならない

朝日新聞・2003年3月4日朝刊・広島版

62年、米ソ対立で人類史上最も核戦争の危機が高まったとされる「キューバ危機」を経験したカストロ氏は、広島に対して「連帯の気持ちを表明したかった」と語った。

広島と長崎の人たちは全く罪のない犠牲者。哀悼の意を表したいという長年の願いがかなった

朝日新聞・2003年3月4日朝刊

■「日本国民は一言も恨みを発しなかった」


キューバ帰国後、カストロ氏は広島訪問時の所感について国会で演説。世界に向けて広島を訪問するよう訴えた。また、原爆を投下したアメリカを痛烈に批判した。

何百千万の人々があの地を訪れるべきだ。あそこで起こったことを人類が真に知るために

朝日新聞・2003年3月15日朝刊・広島版

あの攻撃はまったく必要のないもので、モラル上も正当化できない

朝日新聞・2003年3月15日朝刊・広島版

その上で、被爆国日本についてこう評価している。

日本国民は一言も恨みを発しなかった。それどころかそのようなことが2度と起こらないよう平和を願う記念碑を建てた

朝日新聞・2003年3月15日朝刊・広島版

アメリカのオバマ大統領が、アメリカの現職大統領として初めて広島を訪問したのは、それから13年の月日がたった2016年5月のことだった。

▼「フィデル・カストロ氏」スライドショー▼

フィデル・カストロ(左)とチェ・ゲバラ

フィデル・カストロ氏


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