「ポスト朴槿恵」に急浮上、李在明市長は韓国のトランプか、サンダースか

FacebookやTwitterを駆使し、エスタブリッシュメント(既得権層)を強い口調で叩く。

朴槿恵大統領の弾劾訴追案が可決され、韓国では「ポスト朴槿恵」に向けた動きが既に始まっている。

中でも、ソウル南郊のベッドタウン、城南(ソンナム)市(人口約100万人)の市長を務める李在明(イ・ジェミョン)氏(53)の支持率が急上昇している。11月24日のブルームバーグは「韓国のトランプ」と紹介した。

FacebookやTwitterを駆使し、エスタブリッシュメント(既得権層)を強い口調で叩く政治手法は、トランプ氏とも通じるものがある。貧富の格差が激しい韓国で、軍事政権時代からの支配層と、高度成長期に政権が育成した財閥を、日本の植民地支配に協力した勢力と重ね「親日独裁腐敗勢力」と糾弾する。

「朴槿恵とともに財閥も厳正な法の審判台に上らねばなりません。財閥はすべての特権を享受し法の上に君臨し、国民を愚弄してきました。(中略)もう親日独裁腐敗勢力の根っこにある財閥体制を解体し、公正な社会を作らねばなりません」(Facebook、12月6日

「ポスト朴槿恵」で名前が急浮上したのは、朴槿恵氏の知人女性を巡るスキャンダルで、ソウルなどで初めて大規模な抗議集会が開かれた10月29日。「挙国一致内閣」による朴大統領の実権棚上げなども議論されていた時期に、会場で演説し「朴槿恵はもう大統領ではありません。形式的な権力をすぐに捨てて辞任しなければなりません」と朴大統領に即時辞任を迫り、喝采を浴びた。

ここから支持率が急上昇。世論調査機関リアルメーターの調査では、10月第4週の調査で5.7%の5位だった支持率は、12月第1週には16.6%で3位まで上昇した。

11月22日には、2014年に304人が死亡・行方不明になった「セウォル号沈没事故」直後に朴大統領が姿を現さなかった「空白の7時間」が、職務放棄にあたるとして朴大統領を刑事告発した

朴槿恵氏を巡る政局が過熱すると、全国各地を訪ね歩いて集会で演説し、朴大統領を批判した。ソウルでの集会には必ず現地に顔を出し、朴槿恵大統領の弾劾訴追が可決された12月9日には国会前で、「セウォル号」事故の遺族らと抱き合う李市長の姿があった。

■政策は福祉重視

ただ、本人は「私は韓国のバーニー・サンダースとして成功したい」と週刊朝鮮のインタビューに答えている。

低所得の若者に現金を直接支給したり、中学・高校生の制服を支給したりするなど、低所得者支援の独自政策を打ち出し、「バラマキ」と難色を示す中央政府と激しく対立してきた

背景には貧困に苦しんだ生い立ちがある。1964年、韓国南部の慶尚北道・安東(アンドン)に、7人きょうだいの5番目(四男)として生まれた。家は貧しく、12歳のとき、一時行方をくらました父親を追って城南市に一家で移り住む。父親とは再会できたが、李市長は小学校を出てからプレス工場で働かざるを得なかった。油まみれの服で工場に通う境遇に絶望して自殺も試みたが「死ぬ覚悟で勉強しよう」と、中卒、高卒検定を経て韓国・中央大学法学部に入学した。その後、司法試験に合格し、弁護士や市民運動家を経て2010年に城南市長に初当選し、現在2期目

「今は未完成の民主共和国を完成させる『建国名誉革命』の時期です。(中略)機会が公平に与えられ、公正な競争が保証され、与えた分だけ分け与えられる国をつくる」(Facebook、11月24日

こうした手法は与党・セヌリ党からは「ポピュリズム政治の典型」といった批判がある一方、低所得者や若年層から強い支持を受ける。

■日本も激しく批判

一方で、慰安婦問題の日韓合意や、日韓間の「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)には、韓国内で反感が強いことを背景に、日本を強烈に批判している。

「売国奴処断の第一歩は退陣・弾劾」

韓日軍事情報保護協定締結…この売国の現場を目撃する心境は惨めです。

朝鮮戦争の5年前まで日本は朝鮮半島の侵略国でした。日本はまだ侵略戦争を反省せず、むしろ独島(竹島)を巡る挑発で侵略の意思を露骨にしています。

軍事的側面から見れば、依然として日本は敵性国家であり、日本が軍事大国化した場合、真っ先に攻撃対象になるのは朝鮮半島であることは明らかです。

そんな日本に軍事情報を提供し、日本軍を公認する軍事協定とは…どうやら朴槿恵が父の祖国・日本のために死ぬ覚悟を決めたようです。

死ぬ覚悟を決めた売国奴をどうすればいいでしょうか?

12月5日放送の日テレ系「情報ライブ ミヤネ屋」でインタビューに答えた李市長は、慰安婦問題の日韓合意や、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)などに反対する理由について、こう説明した。

「韓国国民が望まないものを正統性のない政治権力(朴槿恵政権)と合意をしても、それが果たして韓日関係に役に立つのでしょうか? 長い目で見ると私はむしろ、損失をもたらすと思います」

一方で日本に対する印象については、このように語っている。

「以前は日本に対して良くない感情が多かったのですが、3~4回、日本を訪問すると、日本人は真面目で誠実で、他人を気遣う親切な国民だと分かりました。今は日本人が好きになりました」

2002年の大統領選では、当初は本命と見なされていなかった盧武鉉氏が、党内予備選や本選で急速に勢いを得て大統領に当選した。李市長が「第2の盧武鉉」になるのかが当面の注目の的だ。

SOUTHKOREA-POLITICS/

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