電通と高橋まつりさんの元上司を書類送検 強制捜査からわずか1カ月半

労働局は全社的に違法労働が常態化しているとみて、全容解明を目指す方針。

社員に違法な長時間労働をさせたとして、厚生労働省東京労働局は12月28日、広告代理店大手の電通と同社の幹部社員1人を労働基準法違反の疑いで書類送検した。朝日新聞デジタルなどが報じた。

産経新聞によると、書類送検された社員は、2015年12月に過労自殺した新入社員・高橋まつりさんの当時の上司。高橋さんの時間外労働は約105時間にのぼり、長時間の過重労働が原因で鬱病を発症したとして、2016年9月に労災が認められた。

朝日新聞デジタルによると、電通の本社(東京)と3支社(関西、中部、京都)で、少なくとも計約30人の社員の労働時間が過少申告されていた疑いがある。今後、残業代の不払いについても調査を行い、全容解明を目指す方針だ。

■電通「重く受け止める」とコメント

電通は労働基準法違反容疑で書類送検されたことを受け、コメントを発表した。

時事ドットコムによると、電通は「このことを重く受け止めております。このような事態を招き、関係各位に心よりおわび申し上げます」と謝罪した。その上で、「労働環境の改善と長時間労働の撲滅に向け、実効性を挙げるよう全力で取り組みます」とした。

■強制捜査から1カ月半、異例のスピードで立件

電通をめぐっては、違法残業が全社的に常態化しているとみて、高橋まつりさんの労災認定から1カ月余りで東京労働局と三田労働基準監督署が本社に立ち入り調査に入った。調査には、「ブラック企業」を専門に取り締まる東京労働局の「過重労働撲滅特別対策班」のメンバーも同行した。

立ち入り調査から1カ月後の11月7日には、労働基準監督官が電通本社の強制捜査に乗り出した。12月23日からの3連休中には石井直社長を含む幹部社員に任意の事情聴取を行なっており、強制調査に着手してからわずか1カ月半という異例のスピードで立件が進められた。

高橋まつりさんの過労自殺から1年経った12月24日には、母・幸美さんが手記を公表している

幸美さんは手記で、「会社(電通)の役員や管理職の方々は、まつりの死に対して、心から反省をして、二度と犠牲者が出ないよう、決意していただきたいと思います」と綴り、「まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがしたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います」と伝えた。

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