「保護者・地域の要望・苦情への対応」が小中学校教員の負担トップ 労働時間は週60時間超が7割以上

教員の慢性的な長時間労働の実態が浮き彫りに。
Kei Yoshikawa

小中学校の教員のうち、1週間あたりの労働時間が60時間を超える人の割合が7割以上だったとする調査結果を、連合のシンクタンク「連合総研」が発表した。1月27日、連合総研の報告会が東京・千代田区で開かれた。

連合総研では、全国の公立小中学校の教員約4500人を対象に教職員の労働実態について調査。その結果、教員の慢性的な長時間労働の実態が浮き彫りになったという。

■「労働時間が週60時間以上」小学教員の72.9%、中学教員の86.9%

調査によると、週60時間以上働いている教員の割合は小学校が72.9%、中学校が86.9%だった。小中学校とも、週50時間未満の教諭はいなかった

単純比較はできないが、他業種で週60時間を超えて働いている人の割合を見ると、医師40%(2011年労働政策研究・研修機構の調査)、建設業13.7%、製造業9.2%、運輸・情報通信業9.0%(いずれも2016年連合総研の調査)などを大きく上回っている。

また、教員が出勤・退勤する平均時刻も調査でわかった。出勤は小学校が7時31分、中学校が7時25分退勤は小学校が19時04分、中学校が19時37分で、教員が職場(学校)にいる時間は小学校が平均11時間33分、中学校が平均12時間12分だった。

■小中学校の教員が負担を感じる業務とは?

小中学校の教員が「負担だった」と答えた業務は、「保護者・地域からの要望・苦情への対応」(小学校教員の84%、中学校教員の81.8%)、「国や教育委員会からの調査・アンケートの対応」(小学校教員の82.8%、中学校教員の80.3%)、「児童・生徒の問題行動への対応」(小学校教員の77.9%、中学校教員の79.3%)、「学校徴収金(給食費など)未納者への対応」(小学校教員の64.7%、中学校教員の79%)などだった。

また、中学校教員の74.5%は「クラブ活動・部活動指導」について「負担だった」と答えている。

こうした業務のうち、「国や教育委員会からの調査・アンケートの対応」については約7割の教員が、「学校徴収金(給食費など)未納者への対応」については9割の教員が「他職に移行すべきだ」と回答した。

「クラブ活動・部活動指導」を「他職に移行すべきだ」と答えた教員は小学校は64.5%、中学校は55.4%だった。

一方で、8割近い教員が負担と感じている「児童・生徒の問題行動への対応」について、「他職に移行すべきだ」と答えた教員は小学校は14.5%、中学校は12.9%だった。生徒指導を教員の本分的な役割と考えている現場の教員が多いことがうかがえる。

「負担だ」とする回答が最も多かった「保護者・地域の要望・苦情への対応」について、「他職に移行すべきだ」と答えた教員は、小学校は42.5%、中学校は42.3%だった。

■「やりがいの搾取」専門家が警鐘

報告会の様子

27日の報告会では、調査・分析を担当した専門家が調査結果について見解を述べた。

教育政策が専門の青木純一・日本女子体育大学教授は、小中学校とも所定労働時間数を「知らない」と答えた教員が半数以上だったことに触れ、「自分の勤務時間を知らないという先生が想像した以上にいた。極めてショックだった」と、長時間労働の背景には労働時間への意識の希薄さがあると指摘した。

一方で、教員の多忙化を解消する方策については「現在実施されている校内会議や学校行事の削減は、実施しても数年後にまた同じような話が出る。今の業務改善策が限界にきているのでは」と訴えた。

教育学が専門の早稲田大学大学院の油布佐和子教授は、「課題が山積の現場では(仕事を)やりぬける強い教師を求める声がある。現場は制度ではなく、個人の頑張りでなんとかしようと考えている」と説明。これについて油布氏は、「『やりがいの搾取』ではないか」と警鐘を鳴らした。

労働法が専門で明治大学の青木覚教授は、「(学校行事や職員会議など4項目について、時間外勤務を広い範囲で認める)『給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)』という法制度が異様に拡大されて適用された結果、学校現場では労働時間の無法地帯となっている」と指摘。「教職員の先生方は労働基準法などの適応はないと思い込んでいる人が多いが完全な間違いだ」と、教職員の労働時間意識に対する希薄さを訴えた。

【UPDATE】タイトルを修正しました。(2017/01/27 23:00)

注目記事