狩猟で絶滅の危機に瀕したバイソン、130年ぶりにカナダで野生に復帰へ

「北アメリカの歴史の中で、野生生物の保護にとって素晴らしい日です」

カナダの国立公園を管理する政府機関「パークス・カナダ」は2月6日、アルバータ州中部のエルク・アイランド国立公園で保護されていたバイソンが、国内最古のバンフ国立公園に移送したと発表された。

カナダのバイソンは狩猟が原因で絶滅の危機に瀕し、バンフ国立公園地域では1885年に設立されてから姿が見られなかった。

動画には、バイソンの歴史的な復帰の様子が収められている。2月1日、ヘリコプターが輸送コンテナを吊るして運び、バンフ国立公園の渓谷に降り立った。コンテナの扉が開くと、16頭のバイソンが勢いよく飛び出し、雪の中を駆け回った。

「今日は、バンフ国立公園にとって素晴らしい日です。カナダにとっても素晴らしい日です。もっと言うと、北アメリカの歴史の中で、野生生物の保護にとって素晴らしい日です」とカナダの自然保護活動家ハーヴィー・ロック氏はCBCに語った。

パークス・カナダは、バンフ国立公園に野生バイソンを復帰させることを綿密に計画していた。

当局はまず、エルク・アイランド国立公園にいるバイソンを選んだ。大部分が妊娠した2歳の雌のバイソンだ。その後、バイソンを隔離し、病気を検査した。

1月末、バイソンは輸送コンテナに入れられた。コンテナはバイソンが過ごしやすいよう特別に改良したものだ。バイソンは最初に、バンフ国立公園近くの大牧場にトラックで輸送され、その後、ヘリコプターでバンフ国立公園内の管理牧草地に運ばれた。

パークス・カナダによると、バイソンはその牧草地で16カ月間過ごし、くわしく観察されるという。2018年夏には解放され、公園内を自由に動き回れるようになる。

1月9日、カナダのアルバータにあるエルク・アイランド国立公園取扱施設のバイソン。この公園に保護されている健康な群れから選ばれた野生バイソンが、新天地のバンフ国立公園へ旅立った。/ PARKS CANADA/REUTERS

今回の移送活動は、5年にわたる計画の一環で、バンフ国立公園に野生バイソンを復帰させるものだ。パークス・カナダは、この計画を「歴史的に重要な文化的偉業」と呼んでいる。

「バンフ国立公園にバイソンが復帰したことで、この地域に要となる種が戻り、文化的なつながりが再び育まれ、新たな発見を呼び起こし、管理と学習の機会が得られる」と公園のウェブサイトには記載されている。

「長期的にみて、バンフ国立公園の歴史的な領域内に新たな野生動物が復帰すれば、国内、また、国際的なバイソンの保護活動に大きく貢献する」

1月31日、改良された輸送コンテナを運ぶトラック。コンテナにはバイソンが乗っている。トラックは、エルク・アイランド国立公園から250マイルを旅し、ヤ・ハ・ティンダ大牧場の観察地までバイソンを運ぶ。牧場は、カナダのアルバータにあるバンフ国立公園の近く。REUTERS

アメリカンバイソンは、北アメリカ最大の哺乳動物で、かつて北米大陸一帯に多く生息していた。

200年ほど前、メキシコからカナダ北部にかけて、およそ3000〜6000万頭の野生バイソンがいた。

しかし、19世紀に狩猟で絶滅の瀬戸際まで追いやられた。

カナダには、草原バイソンが生息していたが、これは2種類いるアメリカン・バイソンの亜種のひとつで、1880年代に野生から絶滅した。

他の亜種である森林バイソンもまた、絶滅の危機に瀕している。

2月1日、アルバータにあるバンフ国立公園に復帰したバイソンを見守るパークス・カナダの資源保護スタッフ、サウンディ・ノリス氏とディロン・ワット氏。/ HANDOUT/REUTERS

絶滅の危機に瀕したことで、カナダ政府は牧場経営者や自然保護活動家らと共に国内の野生バイソンを救済しようと、さまざまな対策を実施した。狩猟制限や、現在のバンフ国立公園の活動のような復帰プログラムを含む保護規制を導入した。

1906年、アメリカ・モンタナ州に住む牧場経営者ミシェル・パブロ氏が、大量の草原バイソンの群れをカナダ政府に売却した。翌年、約400頭のバイソンが新しく設立されたエルク・アイランド国立公園に鉄道で輸送された。現在カナダに生存している草原バイソンの大部分は、パブロ氏の群れの子孫だ。

野生生物保護学会(WSC)によると、カナダには現在、約2200頭の草原バイソンが生息している(バンフ国立公園のバイソンもこの種だ)。また、約1万1000頭の野生の森林バイソンがいる。これらの数字には、飼育・商業用のバイソンは含まれていない。飼育・商業用のバイソンは、はるかに多くいる。

カナダでは、2つの亜種が野生から絶滅する恐れがある。WSCによると、最大の脅威のひとつは、生息数が少なく、長期的に遺伝子を引き継げなくなっていることだ。生息地の減少や病気もまた懸念材料となっている。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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