アリゾナ州フェニックスの移民女性強制送還、トランプ大統領による移民政策政策転換が浮き彫りに

20年前にアメリカへやってきた当時、ガルシアさんは14歳で、その後アメリカに市民権がある子供2人を生んだ。

アメリカ・アリゾナ州フェニックスで2月8日、およそ20年前にメキシコ出身の不法移民の女性グアダルペ・ルピータ・ガルシア・デラヨスさん(36)が連邦移民・関税執行局(ICE)で拘束され、9日、メキシコに強制送還された。

連邦移民・関税執行局に拘束されたグアダルペ・ルピータ・ガルシア・デラヨスさん / KNXV

ガルシアさんは約20年前にメキシコからアメリカに不法入国し、アメリカで子供2人を生んだ。2人の子どもは現在14歳と16歳になっている。

ドナルド・トランプ大統領は1月25日、ロサンゼルスや、ニューヨーク、サンフランシスコなど不法移民を保護する「サンクチュアリ・シティ(聖域都市)」に対し連邦資金を交付せず、速やかに不法移民を拘束し国外退去させるよう求める大統領令に署名している。今回の強制送還は、この大統領令が執行された初のケースと見られる。

移民支援者らはこの動向を、移民税関捜査局(ICE)の強制送還方針が、トランプ大統領のもとですでに変化しつつあることを示す証拠と見なしている。

8日深夜、支援者数十名が集まり、ガルシアさんを乗せたICEの車両を取り囲んだ。抗議行動の様子はFacebookで中継され、9日早朝まで続いた。

Posted by Francisca Porchas on Wednesday, 8 February 2017

ICEに抗議する人々が、フェニックスのセントラル・アベニュー大通りに立ちふさがっている。警察がヘリコプターから「通りから退去してください」と呼びかけている。

しかしICEは最終的に抗議を無視し、アリゾナ州南部の国境の向こう側にあるメキシコのソノラ州ノガレスへ、ガルシアさんを強制送還した。

トランプ大統領の大統領令には、トランプ政権下でどのような人々が強制送還の対象になるか定義する文言が盛り込まれている。

新たに優先的な送還対象になる人々の定義は広範囲に及び、実質的にはアメリカに不法滞在しているすべての人々が強制送還の対象となりうる。起訴裁量権を行使し、ICEの限りあるリソースを重大な犯罪歴のある不法移民の捜査に絞ったオバマ大政権の方針とは一線を画する大きな変化だ。 ガルシアさんの強制送還は、ここ最近の大統領の中で最も強硬に反移民主義を公言しているトランプ大統領のもとで、ICEの動向が変化したことを象徴するものだ。

ガルシアさんは2009年に職場で不法移民の一斉摘発を受けた際、移民当局に検挙された。当時のマリコパ郡保安官ジョー・アルパイオ氏は、ガルシアさんが住んでいたフェニックス周辺地域でこのような強制捜査に力を入れたことで有名だった。ガルシアさんは、正式な書類手続きをせずに就労するため、社会保障番号を偽装使用した罪(アリゾナ州法では重大犯罪とされる)で有罪となった。

逮捕され、有罪判決を受けたにも関わらず、ガルシアさんは数年にわたって強制送還に異議申し立てをし続け、控訴期間中、多くの不法移民と同様にICEとの定期面談が義務付けられた。ICEはガルシアさんは2013年に国外退去最終命令を受けたとしている。しかしオバマ政権の方針に従い、ICEは数年にわたってガルシアさんの送還を却下し続けた。

オバマ政権下では、強制送還に向けた捜査努力を、重大な犯罪歴がある人物や合衆国との関連がより少ない不法滞在者に集中させる政策が取られていた。とはいえ、オバマ大統領は歴代で最も多くの人々を強制送還している。犯罪歴がほとんどないにもかかわらず、送還された移民も多かった。

アメリカへやってきた当時ガルシアさんは14歳で、その後アメリカに市民権がある子供2人を生んだ。2012年、幼少期に不法入国した若年層の強制送還延期措置 (DACA)によって、子供の頃に親に連れられて不法入国した不法移民の強制送還が一時的に免除されたが、ガルシアさんの入国時の年齢は対象範囲をわずか数カ月だけ超過しており、このプログラムは適用されなかった。

そして8日、ガルシアさんは拘束され、24時間足らずで強制送還が執行された。

電話取材を受けたガルシアさんの弁護人レイ・イバラ・マルドナド弁護士は「これは新しい大統領令が効力を発揮した結果だと思います」と述べた。

イバラ弁護士のコメントは、核心を突いているようだ。オバマ政権の方針の下では、ガルシアさんは優先的な強制送還対象とはならなかっただろう。オバマ政権は、重罪の有罪判決を受けた不法移民を強制送還の最優先対象と位置づけていたが、有罪判決の理由が不法移民という立場そのものに端を発している場合(つまりガルシアさんのケース)は、その基準は適用されなかった

今回の出来事で、ICEは重罪の有罪判決と退去命令を受けた人を重点的に強制送還していくことが明らかになった。

ICEのヤスミーン・ピッツ・オキーフ報道官は声明で「ガルシアさんについては、移民裁判制度の中で入国不服審査会での審議を含め、様々なレベルでの再審議がされた。その上で判事たちは、彼女にはアメリカに滞在する法的根拠がないと判決を下した」と述べた。「ICEは引き続き、重大犯罪の有罪判決と移民裁判所による国外退去最終命令を受けた個人に重点を置き、その特定と退去に取り組んでいく」

またICEは、有罪判決と退去命令を受けた人々を対象に強制送還を行うことを強調するツイートを投稿した。

ICEは有罪判決を受けた犯罪者その他の不法滞在者を優先的な捜査対象に位置づけている。

不法移民の取締範囲を、第2期オバマ政権の方針から大幅に拡大するという連邦政府の姿勢をうけ、移民支援団体は、トランプ政権の強制送還方針により強い対抗姿勢を打ち出すよう、地方自治体に期待を寄せている。

フェニックスを拠点とし、8日の抗議行動の計画に関わった市民団体「プエンテ・アリゾナ」のカルロス・ガルシア会長は「長年要求し続けてきたが、市内4番街にある収容所からICEの捜査官を退去させる必要がある」と繰り返し主張した。フェニックス市のグレッグ・スタントン市長(民主党)は2011年11月、同市をサンクチュアリ・シティとする政策を掲げて市長選で当選したが、移民保護政策はまだ実現していない。

「スタントン市長は自らの公約を果たしていません」と、カルロス・ガルシア会長は言った。「私たちは公約の実現を待ち望んでいます」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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