恐怖を煽るトランプ大統領の「強制送還部隊」 不法移民の拘束が全米で広がる

朝、職場に向かうボーイフレンドを見送った数分後、彼は拘束された。

【テキサス州オースティンより】 ドナルド・トランプ大統領の公約である不法移民の取り締まりが猛威を振っており、全米で強制送還が増加している――2月10日、不法移民擁護の活動家と国会議員たちは語った。

移民の権利擁護団体は、移民税関捜査局(ICE)による拘束が増加していると報告した。これには、先月トランプ大統領が署名した、不法移民のほぼ全員を重点送還対象とする大統領令に署名するまでは優先度が低いとみなされていた移民の拘束が含まれる。

ニューヨークタイムズによると、6〜10日にかけてニューヨーク州、ジョージア州など少なくとも6州で不法移民の一斉取り締まりが行われ、数百人が拘束された。

当初、ICEの高官は、この週にとられた措置は「日常業務の範囲内であり、異例なものは何もない」と言っていた。しかし、10日夕方の記者団との電話会見の中で、ICEの高官は矛盾する発言をした。当局は複数の都市を「一斉取り締まりの対象にした」と語った。

電話会見でロサンゼルスのICE高官は、当局は「一斉取り締まり」でロサンジェルス、ニューヨーク、シカゴなどを対象としたと、記者たちに語った。

国土安全保障省のケリー長官は13日、全米で不法移民を一斉摘発し、680人以上を逮捕したと発表した。

ケリー長官は声明で、摘発の対象は「有罪判決を受けた犯罪歴のある外国人や、ギャングら市民の安全を脅かす者、移民法に違反した個人」で、逮捕者の75%は犯罪歴のある不法移民だたと述べたが、犯罪歴のない人も含まれており、摘発の基準は定まっていない。

民主党のワキーン・カストロ下院議員によると、ICEのサンアントニオ事務所から、南部、中部テキサスも「クロス・チェック」と呼ばれる作戦の対象に含まれると伝えられたという。

ICEサンアントニオ事務所から、『クロス・チェック』の一環としてテキサス州の南部、中部を対象とする作戦を開始した、と知らされました。 私は、ICEに対して、対象となる人物が、本当に我々のコミュニティにとって危険で暴力的な脅威なのか、当地で穏やかに家族を養い、我が州に貢献している人物ではないのか、明らかにするよう要請しています。この状況を中止していく所存です。

このような作戦が新しい基準になることを、不法移民たちは恐れている。

テキサス州オースティンで10日朝、エンジェル・ベラスケスさんはいつものように、ボーイフレンドのヒューゴさんと仕事に出かける前にキスをした。ヒューゴさんはいつものように、「仕事場についたらメールする」と言った。

数分後にベラスケスさんが受信したのは、「移民当局に拘束された」と伝えるスペイン語のメールだった。「私は『ねえ、切らないで。すぐそっちに行く』と伝えました」と、ベラスケスさんはハフィントンポストUS版に語った。

ネイティブ・アメリカンのアメリカ市民であるベラスケスさんは、姉と一緒にヒューゴさんが拘束された場所へ急行した。車を走らせながら、ヒューゴさんには、質問、特に移民の身分に関することは答えないようにと電話で伝えた。ベラスケスさんは、ICE職員に令状を要求したが、「令状は不要だ」と言われた。ベラスケスさんはそのことを、ヒューゴさんと面会した時に伝えた。

ヒューゴさんは、この地区で9〜10日にかけて拘束された10数人の移民の1人だった。オースティンの不法移民擁護の活動家や地元議員によると、ICEは通行中の不法移民を呼び止めて拘束し、自宅で拘束し、市北西部のスーパーマーケット「HEB」の周辺をパトロールしていたという。

オースティン中心部の裁判所を出て、エンジェル・ベラスケスさんは涙をぬぐった。ヒューゴさんは、2017年2月10日に移民税関捜査局に拘束され、国外退去に直面している。

ICEのテキサス州広報担当者は、移民たちを拘留した理由について特定を避けた。しかし、ベラスケスさんは「ヒューゴには飲酒運転違反チケットの記録があるからだ」と言った。

「この数週間で目にしているICEの取り締まり規模は、過去に例がありません」と、NPO「労働者擁護プロジェクト(WDP)」の弁護士ステファニー・ガラカーニャン氏は記者に語った。

移民の権利団体「グラスルーツ・リーダーシップ」には、この2日間でホットラインにおよそ20家族から問い合わせの電話があった。「弁護士を紹介しています」と、電話対応している活動家の一人アレハンドロ・カセレス氏は、ハフィントンポストUS版の取材に答えた。「相談者には、ドアを開けるなと伝えています」

ある相談者は、警官がICE職員に同伴して拘束された、とカセレスさんに伝えた。トラヴィス郡保安官サリー・フェルナンデス氏が1月に表明した「サンクチュアリ」(不法移民を保護する地域)にするという方針とは矛盾しているようだ。オースティン警察当局からのコメントはすぐには得られなかった。

ICEの全米事務所は、通常業務を逸脱しているという批判に反論した。

「ICEが検問している、あるいは無差別に取り締まっているといった根拠のない報道で溢れかえっているが、こうした報道は間違いであり、危険で、無責任だ」と、ICE当局はロサンゼルス地区での拘束について声明を出した。「このような記事はパニックを生み、コミュニティと警察職員を不要に危険にする。このように間違った記事を書く人物は、自分が支援していると主張する人々にむしろ危害を与えている」

にもかかわらず、当局はロサンゼルス地区での「一斉取り締まり」を認めた。5日間の作戦で、ICE当局は160名を拘束し、10名を除く全員に「犯罪歴」があった、と発表した。

国外退去を監視している移民権利擁護団体によると、複数の都市で拘束数が明らかに増加しているという。その中には、14歳の時に入国し、アメリカ市民2人の母親グアダルペ・ルピタ・ガルシア・デラヨスさんが9日に強制送還された件も含まれている。

ジョージア州サバンナの地元メディア「WTOC」によると、ICE当局はサバンナ市内で26名を拘束した。アトランタでは、当局は集合住宅やトレーラー・パークの戸口訪問を行っている、と擁護団体は語った。ミネソタ州アップル・バレーのトレーラー・パークでは、少なくとも建設作業者として働く男性9名が拘束されたされたとうい。

不法移民の若者活動グループ「United We Dream」理事のクリスティーナ・ヒメネス氏は、報道陣との電話会見で「バージニア、ニューヨーク、オクラホマ、フロリダの各州で、増加する強制送還に関して問い合わせの電話を受けている」と語った。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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