【韓国大統領選】李在明氏、日本は「軍事的脅威だ」 歯に衣着せぬ既得権層批判(インタビュー)

支持率は下落を続け、今は一桁にとどまっている。しかし李在明氏になんら変化した部分はないように見えた。

韓国大統領選に立候補をめざす野党第一党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏は、ソウル南郊のベッドタウン、城南(ソンナム)市の市長を務める。歯に衣着せぬ発言で朴槿恵大統領やサムスンなどの財閥、そして日本やアメリカをぶった切る演説やソーシャルメディアの発言は、スカッと爽快な「サイダー」と歓迎されて国内で支持率を伸ばす一方、日本や欧米のメディアは「韓国のトランプ」と呼んだ。

李在明(イ・ジェミョン)城南市長は雄弁家だ。話に淀みがない。一見即興的で無秩序なようだが、滑らかで秩序があり整頓されている。「あの…」「だから…」「私が言いたいのは…」といった言葉もほとんど挟まない。耳にすっと入ってくる。

回りくどい話もほとんどない。いつも直線的だ。「これはこうだ」「それは、まさにこのためだ」「このようにしなければならない」。普通の政治家とは違う。「~ではないと思う」や「~という世論が多い」「~を一度検討してみたい」といった言い方を李在明は使わない。保身を図ることがない。彼の話し方は独特だ。

そこから、演説が爽快だという意味で「サイダー」というニックネームがついた。彼の話には、人々の心にぐっと突き刺さる力がある。朴槿恵大統領の退陣を求めて盛り上がった「ろうそくデモ」の政局でも、彼は人々の顔色をうかがわない珍しい政治家だった。他の政治家たちはもちろん、党指導部でさえ朴槿恵大統領の弾劾を躊躇していたとき、誰よりも先に弾劾を主張した。弾劾訴追案が国会で可決される1カ月前だった。支持率は跳ね上がった。

2カ月が過ぎ、多くのことが変わった。一時15%を超えていた支持率は下落を続け、今は一桁にとどまっている。2位だった順位も4~5位に急落した。憲法裁判所の弾劾審判が大詰めを迎えた今、新たに浮上したのは「協調型政治」と「民主主義」を強調する安熙正(アン・ヒジョン)忠清南道知事だった。「サイダー」ではなかった。

李在明氏になんら変化した部分はないように見えた。ハフィントンポストが2月9日にインタビューしたときも、ためらう様子は見られなかった。今回の大統領選挙は「70年もの間、積もり積もって、一度もきちんと整理されることのなかったものへの歴史的な清算」に向けた選挙だと述べた。「不法と不正、不合理で不公正な構造を通じて不当な利益を得る勢力」、つまり「不法かつ腐敗した既得権益を有する勢力」を「退けなければならない」と強調した。

自信に溢れる姿も相変わらずだった。彼はよく「こんな話は私にしかできない」と言った。主に「正義」を語るときに顕著だった。「主流」の政治家たちと「非主流」の自分を、また「上手くやっているふりをしては逃げる」政治家たちと「最後まで突き進む」自分を比べるときもそうだった。彼は「ふらふらと流される」指導者に代わって「強い意志と勇気のある」指導者が必要だとも力説した。

支持率の回復に向け、彼が「討論」を待っていているのは明らかだった。討論が始まり、国民が自分の真価を知るようになれば「支持率は大幅に回復する」というわけだ。いらだつ場面もあった。インタビューの終盤、自分が「本質的なアウトサイダー」のため「自身の真の思いが伝わっていないと思うことが多い」と話した場面だ。それは予想できない言葉だった。

彼はスーツに黒のスニーカーを履いて現れた。「最近のおすすめスタイル」だそうだ(靴は写らないと言うととても残念がった)。通念を破った彼のスタイル、彼の政治的挑戦は成功するのだろうか。

聞き手はハフィントンポスト韓国版編集主幹・孫美娜(ソン・ミナ)

李在明(イ・ジェミョン) 慶尚北道・安東(アンドン)で7人きょうだいの5番目として生まれる。家は貧しく、小学校卒業後からプレス工場で働く。中卒、高卒検定を経て韓国・中央大学法学部に入学し、司法試験に合格。弁護士や市民運動家を経て2010年に城南市長に初当選し、現在2期目。城南市の財政改革を進める一方、低所得の若者に現金を直接支給したり、中学・高校生の制服を支給したりするなど、低所得者支援政策を打ちだした。朴槿恵大統領の知人女性を巡るスキャンダルでは、演説やソーシャルメディアで朴氏を厳しく糾弾し、次期大統領候補の主要人物に躍り出た。

目次

政治

「腐敗、既得権益を清算して公正な国家を建設」

――高い支持率を維持していましたが、最近になって急落して安熙正知事に抜かれてしまいました。この質問を避けることはできないと思いますが、支持率急落の理由は何だと思いますか。

李在明:世論調査ではその調査サンプルが人気度、好感度といったものに影響を受けやすいと言えます。テレビにたくさん出て有名になって支持率も上がったけど、実際に検証する時になって冷静さを取り戻し、また上がったり下がったりするのです。私の場合は「ろうそくデモ」の時に過度に高くなりすぎたという側面があるのです。なぜなら、ろうそくデモはとても激しい、まさに変化の瞬間であり、私はその中心にいたために、たくさんの人々が現場で私を見て、その結果好感度が高くなりましたが、国会で弾劾訴追が議決され、今は未来についての話をする段階になりました。

政策、ビジョン、そして実現可能性、こういったものを一つ一つ検討する段階になったので、今は少し冷静さを取り戻した状態だと思います。予備選挙が始まり、また今最も多く支持を集めているといわれる文在寅(ムン・ジェイン)「共に民主党」元代表と一対一の討論が行われることになれば、実現可能性や一貫性、責任、公約履行率、ビジョン、財閥との態度・関係、こうしたことを国民が知り、私はかなり支持率を回復できるだろう、そのように思っています。

――今回の大統領選挙は本当に重要なものです。今回の大統領選挙における時代的な精神傾向はどのようなものだと思いますか?

李:すべての国民が望むものは明らかです。公正な世の中になってほしい。不平等で不公正なもののために莫大な格差が生まれ、皆が不幸を感じる時代。そして未来への希望も消え、自分は果たして何ができるのだろうと疑問を持つようになったのではないでしょうか。さらには子供を望まない、そんな状況にまでなりました。子供を望まない一番の理由は膨大な保育・教育費に加え、大学を卒業しなければ就職もできず、(子どもが)自分よりより良い人生どころか、自分よりも質の落ちる人生を生きるのではないか、そんな不安のせいで出産をあきらめるのではないでしょうか。

それらすべての中に不公正さが浸透してしまっています。抑強扶弱(強きをくじき弱きを助ける)。私はこれを政治の本質と見ていますが、強者の横暴を抑え、多くの弱者を守り一緒に生きられるようにするのが国家の第一の役割だと思います。またこの役割を果たすように、国民が政治家に政治権力を与え、地位と名誉を与え、予算も税金でまかなっているのではないでしょうか? ところが政治、または行政に参加する国民の代表者は、実際は強者の横暴に付和雷同し、利益を得ています。その結果、多くの弱者がますます生きづらくなるのです。

国民の生命さえまともに尊重されなかった2014年のセウォル号沈没事故で政府が取った対応。これを見た国民の鬱積した不満が、朴槿恵・崔順実ゲートで爆発しました。国民の要求の核心は、70年もの間、積もり積もって、一度もきちんと整理されることのなかったものへの歴史的な清算です。腐敗、既得権益、不法や不正義を清算して、公正で合理的な社会を作ろう。公正な国家の建設。これが時代的な精神の傾向だと思われます。

――大統領候補として「支持層の広がりが少ない」との指摘もあります。熱烈な支持層も多い半面、どのように思われますか?

李:ご存知のように私は、法の原則から外れて立場を変えたことは一度もなく、韓国社会のまさにタブーの聖域と激しく戦ってきました。情報機関の国家情報院とも戦い、検察とも戦い、さらにはメディアとも戦いました。大統領とも激しくやり合いましたが、そういったことから過激で広がりがないのでははないかと言われています。

しかし、私がはっきりと申し上げられることは、私は城南市を改革していく過程でも、法の原則から外れたことは一度もありません。法に従い、原則通り多数の利益のために。まさに既得権益を持つ強者と戦って城南市の改革に取り組みました。その結果、城南市の「保守地盤」と呼ばれた盆唐・板橋地域は、私を積極的に支持してくれる地域に変わりました。私は市長を務めていますが、国民の相当数が「お前に大統領を任せても上手くやれそうかな?」「大統領になったらどうだろう」と呼び出されたという側面があります。いざ私が大統領になったからといって、混乱が起きるということもないでしょうが…。

それは何かというと、今の支持率で見て国民の10%近くが、市長を任せても上手くやっているから、大統領という、さらに大きな役割を任せたらきっと上手くできるだろうと期待してくれていることなのです。それが実際の私の支持層の広がりを証明しているのです。私がたくさんの弱者と話をし、労働者とも話し、財閥解体の話をして、国家情報院や国家機関、さらにメディアとも戦う。そのため一般的には心配するのではないでしょうか。しかし私たちが広げていかなければなければならない対象は、合理的思考を持った保守的な、まさに教科書的な意味での保守層であり、保守の名を借りた不法・不正による勢力ではありません。そこまで私が手を広げてはいけないのです。

国民が望むのは、この不法、不正、不合理で不公正な構造を通じて不当な利益を得ている勢力を清算することではないでしょうか。私が彼らを抱え込んで手を組むのであれば、それは変化ではないのです。それは国民が望むところではないのです。私が確信していることは、多くの国民の利益となる政策を、いわゆる既得権益が作り上げたタブー・聖域に接触しながらも、できることは全てやり、実際に戦い、意思を貫徹する。そういったことを有能な進歩として国民に示すことができれば、中道層・浮動層が自分には力となるのですが、彼らが支持しない理由はないと思います。

自分の立場を明らかにもせず、左へ右へとふらふらしていては、この賢明な浮動層は支持してくれません。信じてくれません。しかし城南市の市政を通じて盆唐、板橋の保守層が私の支持に転じたように、またそれを基盤に全国で韓国の10%に近い国民が「あの人は今は市長だけれど、韓国の大統領を一度任せてみたい」と思ってくれたこと自体が、大きな拡張性をすでに証明したことになったと思っています。

「既得権益に頼って生きたくなかった」

――以前、あるインタビューでご自分を保守主義者だとおっしゃったことがありますが、今「保守派ですか、進歩(革新)派ですか」とお聞きした場合、どうお答えになりますか。

李:以前の話を整理すると、保守主義者と言ったのではなく、私は保守の立場にある人間だと言ったのです。普通、現在の望ましい価値、原則と法秩序をきちんと守ることを保守と呼び、何か新しい秩序や価値を生み出すことを進歩と呼びます。ところが韓国社会は、保守派とされる集団は、保守の名を借りた不法な犯罪集団、または腐敗した既得権益を持つ勢力です。彼らは真の保守ではありません。韓国社会での真の保守派は進歩の範囲に含まれているのです。そして本当の意味での進歩、例えば正義党や労働党、緑の党などは極左と捉えられているのです。このように腐敗した既得権益を持つ勢力が保守の座を不当に占拠しているのですから、私たちはこの勢力を追い出さなければなりません。

韓国の社会基準で見てみた場合、私は進歩派に相当するように思います。しかしこれを進歩派と呼ぶこの現実を、私は悲しく思います。進歩、保守といった言葉が実際には政治的な攻防の手段として用いられ、人々は保守と進歩の価値を混同してしまっています。そのため私は糾弾の声を上げるのです。真の保守とは何なのか、真の意味での保守が実際に保守派として存在できる社会が真に正常な社会だと、声を上げたわけです。

――いつご自身が大統領になろうと決心されたのでしょうか。

李:決心してからまだ1年ほどしか経っていません。私は政治的地位そのものを追い求めたことはありません。私は貧困のため、小学校を卒業後に工場へ通った人間です。そんな中で何度も労災事故に会い、においもよく分からない、耳もよく聞こえない、また腕も完全に曲がっています。プレス事故で障害が残ってしまいました。

私がこの話をする理由は、今もなお多くの人たちがこういう厳しい暮らしをしているからです。大多数の人々の生活が、現実は改善されずにむしろ悪化している。大学に通っている時に(1980年の)光州の民主化運動が歪曲されて認識されていく様子を目にしました。また盧武鉉大統領と会えたことで、人権弁護士として生きていく道があると知り、判事や検事への道も全部捨てて、500万ウォンを借りて26歳で開業しました。1年ほど判事や検事を勤めれば給料は高いし、やめた後も元公務員の関係で影響力や仕事を得られることもできましたが、私は既得権益に頼って生きたくなかったのです。それからは労働運動家として、人権派弁護士として、または市民運動家として激しく既得権益を持つ者と戦いました。その後、刑務所に入るようなことや、指名手配されて罰金を払ったこともありました。

私の生涯の夢は、誰も悔しい思いをしないで済む社会、公正な環境の中で誰にでも機会が与えられる社会を作ることです。それでこそ人々は希望を持てるのではないでしょうか。例えば弁護士であれ、市民運動家であれ、城南市長であれ、また今後私に与えられる大統領の地位であれ、私にとってそれらは一つの道具であり、地位そのものを欲しいと思ったことはありません。大統領の地位や権力や名誉が必要なのではなく、城南市長という小さな権限でさえ、こんなに多くのことを変えることができ、たくさんの人々が恩恵を受け、本当に楽しみ、喜びを得られました。大統領の権限で韓国全体に本当に望ましい変化を生みだすことができるなら、どれほどたくさんの人々を幸せにできるでしょうか。それが私の夢です。

財閥改革

「財閥一族の不当な横暴を排除するだけで善良な財閥が生まれる」

――財閥改革ではなく「財閥解体」という表現まで使っていますが、具体的にはどうするつもりなのか、最終的な目標は何なのかが気になります。

李:経済が成長するには、特定少数の強者が過大な利益を多数の弱者から略奪し、その企業が腐敗して不正行為を働くような状態を克服しなければなりません。不公正な市場競争、これを公正にさせることが重要ですが、結局、韓国では財閥の大企業がそうした不当行為をしています。財閥大企業を実質的に支配する少数のオーナー一族が5%未満の持ち株で100%を支配する支配権の乱用、これを整理しなければなりません。自分たちに有利な相続をするためにグループ企業を動員し、会社の裏金を崔順実被告や大統領の側近に与えて政治と癒着する。こういうことが結局は企業の競争力を弱めるのです。

私が言っているのは、財閥解体ではなくて財閥体制の解体、財閥システムの解体、財閥の縁戚支配の解体を通じて不当な支配ができないようにする。不当な内部取引によって背任をさせないようにする。不当な相続をさせないようする。財閥一族の個人的な相続のために、企業が犯罪行為に動員されないようにする。中小企業の成果をむやみに奪い取れないように、取引単価引き下げのような不道徳なことができないようにする。労働者の弾圧をできないようにする。こういうことをすべきだと言っているんです。現在ある法律と常識の原則がまともに守られるようにするだけ、財閥一族の不当な横暴を排除するだけで善良な財閥が生まれる。そうすれば本当の競争が生まれ、国際的競争力があって国民から愛される企業として生まれかわるでしょう。これが経済を本当に生き返らせる道なのです。

――今までの大統領はそれををなぜできなかったのでしょう。

李:理由は単純です。財閥にあまりに深く絡め取られているからです。少なくとも財閥企業から金を受け取ったり、そうでなければ助けを得たり、何か縁があったり。明確に言えますが、現在、立候補を表明しているどの大統領候補よりも、私は財閥から自由な候補者です。自信を持って言えます。(他の候補者は)財閥が損する話はできないでしょう。財閥の法人税を8%増税してもOECDの中間水準にしかならないのに「15兆ウォン増収になる。それで国民福祉を高め、有効需要を生んで経済成長させなければならない」という話は私にしかできません。法人税増税の話を誰もできないのだから。

また、例えば財閥大企業が負担している法定負担金があります。どこかに団地を開発する場合は学校用地の負担金を支出して学校を作らなければならないというものです。1年に15兆ウォン程度になりますが、ある候補者はそれを免除するといいます。するとその金は結局、国民が一人当り毎年30万ウォンずつ負担しなければならないんです。

また、犯罪行為で得た財産は還収しなければなりません。盗んだ財産をそのまま持たせていてはいけません。李在鎔氏(サムスン電子副会長)が国民年金管理公団を使って自らの経営権継承のためのグループ内合併を推し進め、何兆ウォンもの利益を得ました。それは法律を作ってでも回収するのが正しいやり方です。ところがこの不法行為で得られた財産を没収しようという主張は、私以外に誰もできません。

私たちの社会は公正な社会になるべきだという国民的な夢、熱望が、2016年末の「ろうそくデモ」で示された民心なのに、韓国社会を実質的に支配している実際の権力者は誰ですか、財閥です。財閥の既得権者ら少数の一族に対して、誰も厳しい声を上げられません。できるのは私だけです。なぜか。私は貧しい家の出身で、今も相変らずアウトサイダーの非主流派だから。私を信じてください、みなさん(笑)。

対日外交

「慰安婦合意は『無効』でなく『存在しない』」

――韓国と日本の政府が2015年末に結んだ慰安婦合意について批判的な立場を表明されました。次期政権はこの問題をどのように解決するべきでしょうか。

李:間違ったことは正すべきです。政府が国民を支配するのではなく、政治家である大統領は国民の代理なのですから、国民の考えが尊重されなくてはいけません。慰安婦問題は、日韓関係の根本に関する問題でもあり、特に被害者が同意していないのに、国家に何の権限があって被害者個人の問題を最終的に永久的に不可逆的に合意できるんでしょうか。実は言語道断なことなのです。国家間の(請求権の)問題は、すでに日韓協定で解決済みというのが政府の立場です。では今回は何を同意したんですか。個人の(請求権の)問題で合意したんでしょう。あまりにおかしなことが多い。国家間の合意の要件も満たさず、権限もないのに。

だから私は、合意は「無効」ではなく「存在しない」と見るのが正しいと考えています。韓国の国民が反対する意味が明白ならば、例えば国会で「これは協定として、国家間の合意として有効ではない」と議決なりを下して、世論の合意を待って白紙に戻してから再び始めなくてはいけません。おかしな合意を放置しているから、今「なぜ慰安婦の像を造ったのか」という話になるのです。いや、あなたたち(日本)は間違っていたことは認めたけど、侵略された悔しい被害者の立場で、韓国人がその事実を記憶するために像を造って、それを拝んだり、道端に設置したりすることに、どうして他人のことに関与するのかということです。それは侵略者として、被害を被った人に対して、罪を認めて反省する姿勢ではありません。私はそれは内政干渉だと思います。

――「日本は敵性国家」と発言して「日本国民の反感を買っている候補」と日本で言われているそうです。反論はありますか?

李:正確な表現としては「敵対性が解消されない状態だ」と言いました。韓国人がはっきり覚えておかなくてはいけないのは、北朝鮮が韓国に侵攻した1950年の朝鮮戦争の5年前まで、36年間にもわたってこの朝鮮半島を不法に侵略し、占拠していた人々がまさに日本人だということです。ところが、この日本が、朝鮮半島を占拠し、侵攻した人々が、相変わらずその事実をきちんと認めず、反省していない態度なのです。さらには何ですか、独島(竹島)は自分たちのものだと言っています。侵略の野望を露わにし続けているのです。

日本と日本人は、韓国人がともに共存すべき隣国、善き隣人であることに違いないのですが、このような状態で、軍事的な面では韓国がその脅威を見過ごしてはいけないのです。軍事的な面では敵対性が完全になくなった状態ではない。私の言葉に同意できませんか? 例えば、韓国が北朝鮮に対してだけ防衛すればいいでしょうか。実際、日本も軍事大国化を追求していて、憲法改正をして海外に進出できるようにしようと目論んでいるではありませんですか。自衛隊ではなく、軍隊を作ろうとしているんです。ところが、韓国は日本と「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)という協定を結んで、自衛隊が「軍」であることを認めてあげたのです。ここに問題があります。

日本が軍事大国化した時、その最初の進出対象地が朝鮮半島だということを、私たちが否定するのはやめようということです。それなら、当然、韓国が軍事力、そして日本に対応して海洋警察力、海軍力を増強しなくてはいけません。ところが、そうした点を指摘したことで「敵性国家だと言っている」と興奮しているのですが、敵性国家の性質を日本自身が解消しなくてはいけません。独島が自分のものだと言い張り、過去の侵略の事実を認めず、慰安婦問題に対して「少女像を置くのはやめろ」と、こういう内政干渉的な主張をしている状態で「実際に敵対性がない」と言うのは、問題を一部分しか見ていないのです。

北朝鮮・トランプ政権のアメリカ・中国

「韓国も明確で強い意志と勇気を持った指導者が必要」

――対北朝鮮政策について。開城工業団地と金剛山観光の再開について、意見をお聞きしたいです。

李:開城工業団地は、南北交流協力法という現行法に明白に違反して、大統領の越権行為で閉鎖したものですから、いわば不法に閉鎖されたわけです。北朝鮮との協議を経て、できるだけ早い時期に再開させなければなりません。金剛山観光の問題も、安全や北朝鮮の責任についての問題を少し解決したら、再開することが、韓国の安全保障のためにも、経済のためにも望ましいと思います。北朝鮮に対して我々が封鎖政策を実施し、対話ルートまで断ち切って、経済協力をすべて終わらせてしまいましたが、それによって北朝鮮と韓国、どちらが厳しくなったのかと言えば、韓国が一層厳しい状況になったと言えるのではないでしょうか。

ですから、私はこのような強圧的で、自らに有害な対北朝鮮封鎖・断絶政策、圧迫一辺倒の政策を素早く整理します。そのような政策が必要であれば実施しますが、対話と交流、協力は、互いに役立つものです。平和こそ、最高の安全保障の手段なのです。ですから、北朝鮮の態度の変化を引き出すための穏健な政策も、強硬政策と織り交ぜて実施するのが、私たち自身のためにもより良いことだと考えています。

――北朝鮮との関係や、日本との関係だけをうまくやっていればよいわけでもありませんよね。トランプ大統領が就任し、いろいろと不安を煽る状況が続いていますが、このトランプ時代、韓国は今後、どのように対処していくべきでしょうか。

李:トランプ大統領は、世の中の人々が考えるような、非合理的な人ではないと思います。もし、感情に振り回され、いい加減に振舞うのが本当に彼の行動パターンだとすれば、不動産王として成功はできません。取引のスタイルが、少し過激なのです。結論を下すに当たっては、非常に合理的な人です。絶対に損をしないようにする人だということです。在韓米軍を含む米韓同盟も、実際はアメリカと韓国にとって互いに利益があるわけです。それなのに、何か不当な要求をして、韓国が聞き入れないからといってさっさと撤収してしまい、アメリカ軍の世界戦略を狂わせるような決定を下す人ではありません。

我々も、そのような点をもう少し考慮しなければなりません。どこも自国中心主義の強硬な指導者が登場してきているので、韓国も実際に国益中心の自主的なバランス外交を強く貫くことができ、合理的に、互いにWin-Winとなる結論を下せる、強い意志と哲学を持った指導者が必要です。しかし、もしあちこちに振り回され、要求されるがままに全て与え、やれと言われるとおりにやっていれば、どうなるでしょうか。中国が何か言えば中国に引っ張られ、日本が何か言えばそこに引っ張られていれば、今度はロシアも何か要求してくるでしょう。そこにまた引っ張られれば、何が残るでしょうか。このような姿勢では駄目なのです。

大国に囲まれた半島国家の立場では、自国の利益を守るための強い意志、あちこち振り回されない軸、そして、左右のバランス感覚、こうしたことが非常に重要になってきます。半島国家には栄える国もあり、滅びる国もありますが、栄えるのは機会をしっかり生かすからであり、滅びるのは、弱々しく振り回されるからなのです。両方の可能性が同時に開けています。ですから今、周辺の大国に強硬な指導者たちが登場しているので、韓国も、明確で強い意志と勇気を持った指導者が必要なのです。

――アメリカ軍のミサイル迎撃システム(終末高高度防衛ミサイル、THAAD)の韓国内配備を巡って、大きな論争がありました。特に、アメリカと中国の間で、私たちはどのように外交的なバランスを取っていくべきだとお考えですか。

李:(韓国政府は)自主的なバランス外交という観点では、今まで韓国なりに貫いてきた面があります。しかしTHAADミサイルは、北朝鮮の核ミサイルを防ぐというよりも、韓米日の軍事同盟を通じて、中国大陸を監視しているという疑いを受けるので、中国が敵対的になっています。そのため、中国は経済制裁も加えていますし、韓米日の軍事同盟を結んで中国を封鎖しようとしているという印象を持たれたため、中国と北朝鮮の関係が急接近しています。そうして、核ミサイルの開発を抑制するための国際協力が事実上、崩れることで、北朝鮮はかえって余裕ができました。朝鮮半島の安全保障に役立つのではなく、さらに状況を悪くしていることは明らかです。経済的にも損失です。また、韓国とアメリカの関係が、対等な関係ではなく、それこそアメリカから言われるがままに従う、従属関係になってしまいました。

韓国と日本の関係でも、アメリカの支援をバックにしている日本を相手に、我々が屈辱的に、無理矢理、慰安婦問題で合意させられたり、「日韓秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)を結んだりする中で、日本が傲慢になり、韓国の内政にまで干渉する状況に至っています。中国との戦略的な協力、友好関係は維持すべきです。それなのにアメリカの要求、圧迫に屈して、結局は自主性を失い、バランスを失ってしまいました。THAADの配備によって、大変危機的な状況が訪れているのです。公平性というのは、実際のところ、常識的に考えればよいのです。韓国の国益を中心にして見れば、アメリカに利益になることを聞き入れるために、なぜ中国との関係が悪化する選択をするのでしょうか。これは間違っています。

それは、強い意志を持って元に戻さなければなりません。一部では、既に合意したことを、アメリカの意に反して元に戻せるのかと言いますが、それが必要なことであり、このままでは韓国の国益に深刻な危害を及ぼすのであれば、戻さなければなりません。そういったことを元に戻すために、我々は権力を委ね、大統領を選ぶのです。簡単なこと、誰でもできることをするというのなら、何のためにこんな競争までして大統領を選ぶのでしょうか。大臣にでもさせればよいわけでしょう。

朝鮮半島は、THAADの配備、特にこの非正常的な米韓関係のせいで外交的なバランスを崩しています。このまま行けば、のちのち、どのようになる可能性があるかと言えば、正に朝鮮王朝(李朝)時代の末期、大国が朝鮮半島で代理戦争(1894~95年の日清戦争やその発端となった甲午農民戦争時の軍事介入、1904~05年の日露戦争)をしたように、国際的な代理戦争の戦場となり得るのです。私が少し過激なことを言えば、今はまだ、我々は南北間の軍事衝突を心配しているだけですが、もし中国とアメリカの間で軍事衝突が起これば、中国東部にあるミサイルはどこに飛んでくると思いますか。当然、THAADが配備されている朝鮮半島に飛んでくるのです。今や、中国とアメリカの軍事紛争まで、我々が心配しなければならなくなったのです。これのどこが、韓国の安全保障に役立つというのでしょうか。たとえ大変でも、元に戻さなければなりません。

福祉

「ベーシックインカム導入、財源は土地」

――国土保有税を新設してベーシックインカム(基本所得保障)を導入すると公約していますが「趣旨は良いがやや現実性に乏しく、時期尚早ではないか」という意見もあります。

李:最も簡単にできることです。予算というのはお金の優先順位を決めることです。その中で例えば国民の福祉に優先的な価値を与えれば、できるんです。

私は28兆ウォン(約2兆7000億円)程度の国家予算を節約して、新生児、児童、学生、若者を支援します。みな貧しいですから、出産や保育・教育を支援する効果があります。次に65歳以上の方の生活支援をします。また、障害者はとても苦しいので支援をします。農業、漁業従事者は輸出大企業を支援する政策の見返りとして、農産物の市場開放で打撃を受けたので、年間100万ウォン(約9万8000円)ずつ支援しましょう。そのまま渡したら貯金してしまうかもしれませんから、必ずその地域で使わなければならない地域商品券や地域貨幣で支給しましょう。そうすればその地域の自営業者がみな生き返るでしょう。このようにすれば地域経済も生きかえり、経済も活性化するでしょう。

韓国の国家予算が今年は400兆ウォン(約39兆円)です。生活費に置き換えて考えると、1カ月に400万ウォン使うのに、12万ウォン(約1万円)出すのは大変ですか? 28万ウォン用意するのは難しいですか? それは気持ちの問題でしょう。李明博政権で産油国の開発に投資した「資源外交」数十兆ウォンはどう用立てたのか。四大河川(訳注:李明博政権の大型公共事業)の工事になぜあんなに使うのか。または、繰り返される防衛産業の汚職で浪費される予算はどれほどか。崔順実被告を助けるために支出した巨額の文化予算、このようなものがとてつもなく多くはないでしょうか。

国家予算の使い道を見ると、儲かっている輸出大企業の技術開発、これは自分たちの金儲けのためにしているのに、政府が支援しています。このようなものを投資だと言うのです。土木工事予算もそうです。ところが、国民生活の改善と経済の循環に本当に役立つ弱者支援政策をすると「ポピュリズムだ」「国民を怠惰にさせる」と言われます。

経済の活性化という次元から見ても、土木工事、または内部留保金として積み立てるだけの大企業に支援すれば、帳簿上の数字が増えるだけではありませんか。経済の流れも阻害しています。だったらその予算を100%使うしかない庶民に支給すれば、それは経済に直接貢献しますよ。国民は今、生活に必要な金もなく、銀行で借りて消費に回す状況でしたが、それすら終わりました。もうこれ以上借りられない状況です。それでは経済が停滞します。だから予算を回せないというのは実際言い訳に近いのです。

次に、私が2段階でやりたいのが、総合不動産税(固定資産税)を拡大再編して、土地に対する国土保有税をみなが払おうというものです。土地は国家国民のものだから。そうするとこの国土保有税は15兆ウォン(約1兆4700億円)ほど増収になりますが、これは他のことに使わずに無条件で国民に100%返す。これが完全に国民の所得になります。韓国の国土保有資産が6500兆ウォン(約636兆円)なのに、私たちが税金として払うのは全部で9兆ウォン(約8800億円)にしかなりません。自動車を持っていれば約2%の自動車税を払います。ところが6500兆ウォンを所有している不動産資産家は0.2%も払っていません。これを正さなければなりません。

ところで15兆ウォン程度を(国土保有税として)払うと誰が損するか。損害はありません。払ったものを100%国民に返しても、計算してみると土地を持っていない人が半分程度で、およそ3~5%の人が莫大な土地を所有しています。すると一人当り約30万ウォン(約2万9000円)。払った額より受け取る額が少ないのは国民の5%未満で、95%は払った額より多く受け取ります。払わないで受け取ることもあります。こうすれば本当に国民基本所得が生まれますが、最初は少しずつ、年30万ウォン程度です。しかし国民が「ああ、私が払う税金は100%返ってくるんだな」と思えば、租税への抵抗がぐっと減ります。そうすれば税金を納めて返す方式でいわゆる「中負担・中福祉」に進める道が開けるのです。

これを「ポピュリズムだ」と言わず(土地保有税として集めた)15兆ウォン程度を使って、やっと一部の不均衡を是正できますが…韓国の格差がどれくらい深刻かといえば、上位10%が韓国の資産の66%を保有しており、下位50%、国民の半分がたった2%を分けあっています。このような不均衡が拡大し続けたらどうなりますか。国家が滅びます。だからこの不均衡を少しでも是正しようという志で作ったのが国土保有税です。

経済

「李在明式ニューディール成長政策」

――ところで福祉政策についてはたくさんお話されますが、成長についての政策はあまり聞いたことがない気がします。もう少しマクロ的に、韓国経済成長のために持っている政策はどんなものがあるのか教えてください。

李:成長には2種類の政策があります。少数が成長の果実を得るよう後押しする方法があります。今まではいわゆるトリクルダウン効果で、儲かった人から多数の貧しい人々に経済成長の果実が分配される。80年代中盤までは実際そうでした。

ところが最近ではご存知のように、世界的な富豪企業が生まれる一方、ほとんどの人々はますます苦しくなっています。これが何を意味するかといえば、成長の果実が特定の少数にだけ属し、多くの人々は成長の果実を分け与えられず購買力が落ちて、金がないから使えない。そして企業の成長が不可能になるという状況になりました。大企業は今、内部留保を貯め込んでいますが、これは経済が循環しなくなったことを表しています。これを正して、成長の果実を多数が公平に分かち合う方式にしなければならないということです。

つまり、労働者の労働基本権を保護して力を育て、労働者を保護して労働の役割を増やし、中産階級を作りだす。また、巨大企業の不当な横暴を抑制する。韓国の場合は、財閥企業がオーナー一族に完全に犯罪手段として悪用されています。そのような財閥一族の不当な支配を引き剥がし、経済的活動をする企業、または経済の主体が本当に自由に競争できるようにする、善良な財閥企業を作り出せば、まともな競争が生まれるのではないでしょうか。

さらに、例えば所得が多すぎる集団には税金をきっちり払わせ、国民の可処分所得を少し増やす。こうしなければ本当の成長にはならないということを、最近は国際金融機関が推奨しています。IMFや世界銀行、ILOが、成長の果実を偏って分配するのでなく、労働者と国民に均等に分け与え、また政府の再分配政策を正しくしなければ有効需要や購買力が生き返って経済が正常に成長できないと主張しています。

これをいわゆる包容的成長論、または所得主導成長論と呼びますが、これを一部の人が攻撃しています。分配すれば成長にならないと言いますが、今や公正な機会、公正な分配、公正な再分配にならなければまともに成長できないというのが、すべての経済研究機関の一貫した結論です。そのため(異議を提起する人々は)過去に成長促進政策を取った、例えば(1960~70年代の)朴正煕政権時代や80年代の話を今でもしています。そのために今、経済が壊れています。あまりに一部に多くの富が蓄積されているから。

これはすでに大恐慌を経験したアメリカで、1930年代にルーズベルト大統領がニューディール政策という名前で実行したことです。韓国も本当に成長するには、この機会と結果が公平に与えられてこそ、安定的成長が、正しい成長が可能です。だから私は名付けました。李在明式ニューディール成長政策。これが本当の成長政策です。

女性・マイノリティ

「正規・非正規格差は平等の原則に反する」

――正規雇用と非正規雇用の賃金格差も問題ですが、男性と女性の間の賃金格差も非常に深刻です。

李:韓国のように、同じ現場で同じ仕事をして同じ成果を出していても、女性か男性か、正規か非正規かによって差別する国も他にないように思います。非正規雇用はもともと非正規なのですから、同じ仕事をしたらより多くの報酬を与えるべきなのです。一部の例を挙げるなら、オーストラリアのような国は実際にそうですよね。ところが、韓国は半分か40%です。特に女性の報酬が非常に低い。これが韓国の憲法で定める平等の原則、つまり同一労働同一賃金の原則に反するものであり、国家が政策として厳正に管理していかなくてはいけません。それこそが本来国家がなすべきことなのです。

ところが、国家がこのような差別を通じて利益を得ている強者の味方をするせいで、こうした事態になるのです。それゆえ国家指導者の役割は本当に重要です。同じ現場で同じ仕事をするなら当然、同じ機会を与え同じ報酬にするべきなのです。国家政策として推進し、行政の力だけでも十分にできることは多く、必要なら差別禁止法にこれを明示して、同一労働同一賃の原則が守られ、男女平等の原則が守られる、そんな国にしなければと思います。

――自分がフェミニストだと思いますか。

李:フェミニストでありたいと努力しています。でも、まだ相変わらず、私は(保守的な地方の)慶尚道で、母が父と一緒に食事をすることのない家庭で育ったため、努力はしていますが、まだその名残が少しあります。本当に必死に努力はしています。ジェンダーの感受性も高めようと努力しています。例えばうちのスタッフにも男女を区別するな、ただ一人の人間だ、女はとか男はとかいう話自体が問題だと教えますが、まだ足りないところが多いです。常に気をつけるようにしています。

――家では家事を一緒にしますか。

李:もちろん努力しています。時間ができれば一緒に分担しようとしますが、妻は専業主婦ですし、私は時間がなくて多くのことはできないんですが…。

――主にどんなことを…

李:主に掃除…、まあ、そういうこと…、家の中を片づけたり…、私は整理整頓は上手なんです…。

――2人の息子さんにもそのように教えていらっしゃるんですか。

李:させていますよ。これからは多分、お前たちの世代はお父さんの世代みたいにやっていたら追い出されるぞ。そう教えています(笑)。

――人工中絶を合法化すべきだという主張があります。どのようにお考えですか。

李:本当に難しい質問です。女性が自分の身体決定権を尊重しなければならないことは、私も基本的に同意します。そうしないといけません。しかし、これが母親か父親か、片方だけが選択できることではないと思います。尊重はしますが、例えば、それも一つの生命なのに、例えばかなり成長した胎児を自由に中絶できることに、国民が簡単に共感できるだろうか、そういう問題があります。一種の時期か限界を設けて、自由な女性の身体決定権を尊重する方向には進むべきです。しかし、ただ自由化するのには少々社会的な合意を図る必要があると思います。

――アメリカをはじめ全世界的に同性婚を合法化する傾向にありますが、どのようにお考えですか。

李:本当に難しい質問ばかりですね。それぞれの生き方は尊重されなければいけません。マイノリティに関する政策的配慮、またはマイノリティの生き方、それ自体を認める度合いによって、その社会の文明レベルが決定付けられると言いますよね。そのように各自の生き方は十分に尊重されなくてはいけませんし、それが差別の理由になっては絶対にいけないということまでは私も同意します。

しかし、これを合法化、例えば結婚の一つの形態として認めると、私が積極的に主張できるかという問題は、やはり少し慎重になる面があります。尊重はするが、それを一つの制度として受け入れるには、それこそ多くの努力が必要なのではないかと思います。

――女性や性的少数者の問題は、実は韓国社会で非常に深刻な問題ですが、大統領になられたら、そのようなマイノリティのためにどのような努力をするつもりですか。

李:私は、政府の一番の役割は弱者を保護することにあると考えます。多数でも少数でも弱者は保護されサポートされるべきなのです。悪いことをしているわけではないし、特に性のマイノリティの問題は持って生まれたものですよね。性というのは両性だけがあるわけではなく、絶対的な線引きもできず、国民の認識を改善していくのは多くの努力が必要です。認めること、それを受け入れること、包容すること、違うからと排斥しないこと、それが公共分野の義務だと考えます。

人間・李在明

「私は『過激だ』と言われる。悔しい」

――ご自身への批判の中で、これだけは不当だと思うものはありますか。

李:私は「過激だ」と言われますが、強盗を捕まえるとき、優雅に捕まえるでしょうか。私は社会悪、不正腐敗、不当な既得権者たちと闘ってきましたが、他の政治家のように、適当に闘っているふりをして退散したり、自分が損すると見ると放り出したり、妥協したりしませんでした。とにかく、とことんやりました。しかし、こういう姿を見て、人々は「過激だ」と言うのです。大統領や国家情報院、検察、マスコミとなぜ闘うのかと言われますが、おかしいものと闘うことをせずに、どう正すのですか。そこは本当に悔しく思います。私は普通、隣近所の人と喧嘩はしません。理由がない。それなのに、まるで私が誰とでも喧嘩するかのように、まるで何にでもいちゃもんをつけるゴロツキであるかのように、私を侮辱し、歪めて伝えられることに、本当に悔しく思います。

――では、元々の性格は、おとなしいほうなのですか。

李:私はかなり内向的で、おとなしい人間です。代わりに、不当な既得権や不条理なことに、我慢できないことがたくさんあります。それに立ち向かうことが私の使命だと思うので、熾烈に闘うのです。皆さん私が恐れを知らない人間かのように思っていますが、実際は怖いんです。「いや、こんなことしてたら、本当に排除されるのではないか」と。ガス銃を購入して、スーツの後ろのポケットに3年ほど携帯していたこともあります。本当に、殺すと言われるのですから。銃口部分がこすれてポケットに穴が空きました。子供たちを殺すと言われ、家族が避難したりもしました。

そういう経験をしながら、今は内面も少し強くなりましたが、相変わらず、怖くもあります。財閥体制を解体して、財閥の一族は企業経営から手を引かせよう、企業を思いのままに操れないようにしよう、李在鎔を逮捕しよう、財閥が政治と経済に癒着できないようにしよう。こんなことを言えば、誰も私を助けてくれません。「お金がある人、既得権、力の強い者たちを制圧するのは国家の義務だ!」と言えば、その力の強い人々が私に1票入れてくれるでしょうか。それどころか、政治的にも密かに激しく危害を加えてくるでしょう。自分たちを守るために。皆、怖がるのです。私も怖いんです。しかし、闘わなければなりません。そこで闘わなければ、この世の中は変わりません。私のような、少しやり過ぎに見える人もいてこそ、世の中が変わるのです。国民は、それを私に期待しているのではないでしょうか。

――今まで生きてきた中で、一番よくやったと思うことと、本当に深く悔いていることを一つずつ挙げるとしたら、どのようなことでしょうか。

李:一番よくやったと思うのは、もう6~7年くらいになりますが、市長として、小さな役割ではありますが、多くの人に喜びを与えられたであろうことです。100万都市であれば、その市長の1時間には、100万時間の価値があります。私が公務員の人たちによく言う言葉です。そのような面で、「市政の成果」とでも言いましょうか、与党・セヌリ党(現・自由韓国党)の多数の議員が反対しても、市民と一緒に闘って、政策を貫き通してきました。

悔やまれることは、私が3番目の兄との争いで、少し至らない点があったということです。私にとっては耐え難いことでした。一生涯、7人の子どもたちを育てるために苦労した母を、兄が自分で体も支えられなくなるくらい殴りつけて入院させたり、母が大事にしている家財道具をみな壊したりするのを見て、私も頭に血が上り、感情をコントロールできませんでした。私は暴言を吐き、兄はそれを録音して「その録音を公開する」と脅したのです。その時、兄の要求を全部呑んでいれば、このようなこともなかったでしょう。その後、兄は市政に介入しようとして、人事に口を挟んだり、利権を握ったりしようとするのを私が防いだので、争いが起こりました。兄は今「パクサモ」(朴槿恵を愛する人々の集い)の支部長をしています。あの時、適当に取りなしていれば、果たしてこのような苦しみを味わっていただろうか、と考えると、時々、悔やまれることもあります。

――もし、スーパーパワーと超能力のうち、一つを選べるとすれば、どちらを選びますか。

李:今だったら、迷うことはありません。世間の人々の心を変えることです。今、とてももどかしいのは、私の本当の気持ちがうまく伝わらないと感じることが多いことです。私は非主流、アウトサイダーの人生をずっと生きてきましたが、それは自分で選んだことです。判事や検事ではなく、あえて街の弁護士になり、中央の政治より地方政治を選び、いつでも高い所より低い所を選んできました。いつも草の根、根っこを重視する人間です。本質的に、アウトサイダーなのでしょう。今は脚光を浴びることもありますが、それでも相変わらず、韓国社会の主流、既得権とは遠い所にいます。既存のシステムの恩恵を受けられないわけでしょう。そのような面から見れば、私の本当の気持ちさえ、本当に伝えることができるならば…と、そのようなことを夢見る時があるのです。

ハフィントンポスト韓国版に掲載された記事を翻訳・編集しました。

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