トランプ大統領、初の施政方針演説 議事堂では何が起こっていたのか

トランプ氏初の議会演説の様子を時系列で振り返る。
WASHINGTON, USA - FEBRUARY 28: (----EDITORIAL USE ONLY MANDATORY CREDIT - 'JIM LO SCALZO / EPA / POOL' - NO MARKETING NO ADVERTISING CAMPAIGNS - DISTRIBUTED AS A SERVICE TO CLIENTS----) US President Donald J. Trump delivers his first address to a joint session of Congress from the floor of the House of Representatives in Washington, United States on February 28, 2017. Traditionally the first address to a joint session of Congress by a newly-elected president is not referred to as a State of the Union. (Photo by Jim Lo Scalzo/EPA/Pool/Anadolu Agency/Getty Images)
WASHINGTON, USA - FEBRUARY 28: (----EDITORIAL USE ONLY MANDATORY CREDIT - 'JIM LO SCALZO / EPA / POOL' - NO MARKETING NO ADVERTISING CAMPAIGNS - DISTRIBUTED AS A SERVICE TO CLIENTS----) US President Donald J. Trump delivers his first address to a joint session of Congress from the floor of the House of Representatives in Washington, United States on February 28, 2017. Traditionally the first address to a joint session of Congress by a newly-elected president is not referred to as a State of the Union. (Photo by Jim Lo Scalzo/EPA/Pool/Anadolu Agency/Getty Images)
Anadolu Agency via Getty Images

アメリカのドナルド・トランプ大統領は2月28日、議会上下両院の合同会議で就任後初めてとなる施政方針演説を行った。

ワシントンポストによると、トランプ氏は演説で、環太平洋経済連携協定(TPP)の離脱や不法移民の強制送還など、矢継ぎ早に大統領選の公約を実現した実行力をアピールした。また、インフラ投資に1兆ドル(約113兆円)をかける法案の承認を議会に求めたほか、年4%の経済成長を実現するために「アメリカ経済のエンジンを再び動かす」と述べ、法人税の引き下げなど「歴史的な税制改革を実現する」と強調した。

また、オバマ前大統領が進めた医療保険制度改革「オバマケア」は撤廃し、「選択肢を増やして保険の価格を下げ、優れた医療を提供できるようにする」と述べた。

トランプ氏初の議会演説の様子を時系列で振り返る(時刻はハフィントンポストUS版編集部がリアルタイムで投稿したものを示す)。

午後9時01分 ホワイトハウスが演説の抜粋を公開

ホワイトハウスが、トランプ氏の演説に先立ちその抜粋を公開した。

午後9時04分 連邦議会議事堂にトランプ氏登場

トランプ氏は午後9時過ぎに下院本会議場へ入り、握手を交わしながら通路を歩いた。

午後9時09分 「指定生存者」は…

施政方針演説では、議事堂が攻撃を受けて大統領以下が職務執行不能になった場合に備え、大統領継承権をもつ行政長官のうち一人が「指定生存者」に指名される。指定生存者は議事堂から離れた安全な場所で待機する。今回は、退役軍人局長官デービッド・シュルキン氏が指名された。

午後9時15分 トランプ氏、ヘイトの高まりを非難

トランプ氏は会議への演説を始めるにあたり、最近の反ユダヤ主義の脅威と破壊行為を非難した。

「最近起きたユダヤ人コミュニティーセンターを標的にした脅迫、ユダヤ人墓地の破壊行為、先週のカンザスシティでの銃撃も同じだ。覚えておこう、我々は政治に関しては分断している国かもしれない。しかし、どんな形のヘイトと悪に対しては、団結して糾弾する国だ」

午後9時16分 トランプ・ジュニア氏が応援ツイートを投稿

手堅いスタート。 お父さん、流石です

午後9時27分 トランプ氏、スカリア元最高裁判事の未亡人がいることに気づく

トランプ氏は演説の最中、2016年2月に急逝した最高裁判所判事アントニン・スカリア氏の未亡人モーリーン・スカリアさんに合図を送った。スカリアさんはトランプの来賓の1人として施政方針演説に出席していた。

午後9時32分 テロリズムの脅威を強調、しかしテロによる死者と銃による死者を比較してみると…

トランプ氏はイスラム原理主義者のテロの脅威を強調し、「アメリカ国内にテロリズムの拠点を作らせない」と述べ、国防総省に過激派組織IS(イスラム国)壊滅のためのプログラムを作成するよう指示した。

9.11の同時多発テロ事件以来123人のアメリカ人が殺害された。一方、同じ期間、銃による死者は45万人だ。

午後9時33分 トランプ氏、「企業の決定は自分の功績だ」と語る

大統領選の勝利以来、トランプ氏は大手企業が雇用の増加を発表するたびに、自分の功績として語ってきた。今夜の施政方針演説で、彼はその件を再び持ち出した。

「私の当選以来、フォード、フィアット・クライスラー、ゼネラルモーターズ、スプリント、ソフトバンク、ロッキード、インテル、ウォルマートをはじめとする多くの企業が、アメリカに数十億ドルの投資を行い、国内に数万の雇用を創出すると発表している」

実際は以下の通りだ。

フォード――フォードは1月3日、メキシコの工場新設を取りやめる、アメリカ国内の工場に7億ドルを投資して700 人を新規雇用すると発表した。しかしこの発表は、ここ数年の市場の動向に反応したものだ。ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ両政権の政策によるものでもあり、それをトランプ氏は自分の手柄にしている。

フィアット・クライスラー――自動車大手フィアット・クライスラーは1月8日、ジープの新型モデルなどをアメリカで生産するため、10億ドル(約1175億円)を投資すると発表した。しかし、フォード・クライスラーの広報担当ジョディ・ティンソン氏は「この計画は2015年時点で進行中だった」と述べている。「今回の発表は、その最終確認に過ぎません」。政治や選挙の影響は全くないか、と質問されると、彼女は「全くありません」と答えている。

ゼネラル・モーターズ――自動車大手ゼネラル・モーターズは28日、7000人の雇用をアメリカに創出し、国内の製造部門に10億ドル(約1100億円)を投資するという計画を発表、その後トランプ氏のTwitterでも功績として宣伝された。しかしゼネラルモーターズによると、実際にはその計画は、「何年間も準備してきた」ものだという。

スプリント/ソフトバンク――日本の通信大手ソフトバンクはアメリカで500億ドルの投資を行い、5万人の雇用を創出すると発表した。問題は、トランプ大統領やスプリントの報道発表(CEOによる最近のTweetもあった)は 、ソフトバンク(スプリントの親会社)のCEO孫正義氏が以前から発表していたことであって、トランプ大統領と協議した結果ではない。

ロッキード・マーチン――トランプ氏は1月30日、防衛大手ロッキード・マーチンがステルス戦闘機F35の価格を6億ドル(約700億円)引き下げたと発表した。ロッキード・マーチンのマリリン・ヒューソンCEOも2016年12月23日、F35のコストを圧縮させるとトランプ氏に伝えていた。最新のデータによると、ロッキードは、アメリカ政府最大の請負業者だ。

インテル――半導体大手インテルは8日、アリゾナ州に建設している半導体工場に70億ドル(約7800億円)を投資すると発表した。しかし、このプロジェクトは完全にトランプ氏の功績だけではない。インテルは2011年、同じアリゾナ・チップ工場に50億ドルの投資を発表している。インテルの広報担当者ウィリアム・モス氏によると、その資金は工場の骨組みを建設するために使われたが、製品の需要不足のため工場は未完成のままだった。プロジェクトは現在、需要が再び上向きになりつつあるので、再開するところだという。

ウォルマート――小売大手ウォルマートは1月17日、国内で約1万人の雇用を創出すると発表した。しかしウォルマートは、発表の中でトランプ氏に言及していない。トランプ氏の存在が、大統領就任の数日前に発表されたこの決定に影響を与えたかどうかは不明だ。ウォルマートは、コメントを控えている。ウォルマートのダグ・マクミロンCEOは、トランプ氏の経済諮問委員会の委員を務めている。

午後9時35分 「共和党議員が覚えていること」(ハフィントンポストUS版政治記者マット・フラー)

この演説はあっという間に忘れられてしまうだろう。でも議事堂にいる共和党議員は覚えているだろう。トランプ氏が彼らに撤廃や差し替えを求めるのであって、トランプ氏自身はできないことを。

アメリカ大統領には予算提出権や法案提出権がないため、トランプ氏が施政方針演説で語った政策を実現するためには、上下両院で多数を占める共和党の動向が鍵となる。

午後9時36分 気候変動に触れず

演説の中では気候変動について触れられなかったが、誰一人驚きはしなかった。その一方で、トランプ氏はエネルギー関連の話題にもほとんど触れていない。大統領選中の街頭演説と比べてもかなり少ない。

トランプ氏は、石炭と石油パイプライン建設について少しだけ述べた。「偉大な炭鉱夫たちの将来と生計を脅かす規制を止めるつもりだ。私たちはキーストーンとダコタ・アクセス・パイプラインの建設への道を開いた」

演説の後半で、トランプ政権は「清潔な空気ときれいな水を推進する」ために働くと述べた。しかし、トランプ政権は、環境保護的な政策を弱体化させている。

午後9時37分 「移民制度改革の中味はない」(ハフィントンポストUS版政治・難民問題担当記者エリス・フォーリー)

アメリカ人の雇用と賃金を改善し、国家の安全を強化し、法律の尊重を回復するという目標に焦点を当てていれば、現実的で積極的な移民改革が可能だ。アメリカ国民の利益を最優先にすることで、我が国が何十年も実現出来なかった結果を出せる。

トランプ大統領の移民改革=中味ゼロ

午後9時40分 「イスラム過激派のテロリズム」という言葉の使用、政権内で意見が分かれる

演説前から、政権内では「イスラム過激派のテロリズム」という言葉の使用をめぐり、意見が分かれていた。新しい大統領補佐官(国家安全保障担当)のH. R. マクマスター氏はこの用語の使用したがらない。一方、トランプ氏のスピーチライターを務める大統領補佐官スティーブン・ミラー氏は、施政方針演説でこの言葉を多用する予定だと語っていた。

予想通り、ミラー氏の言った通りとなった。「アメリカ国民に奉仕し、安全を守り、防衛するのが我々の義務だ。イスラム過激派のテロリストから我が国を守るため、強力な措置を講じていく」と、トランプ氏は語った。

政治ニュースサイト「ポリティコ」によると、それでもマクマスター氏は「自分の主張を続ける」という。そしてあらゆる当局者が「次第に変化させていく」というマクマスター氏を受け入れたという。

午後9時42分 民主党の激しいブーイング

トランプ大統領が「オバマケアを廃止する」と述べると、少数の民主党員が親指を下げるジェスチャーで激しく反対した

午後9時44分 「共和党議員のすべてが拍手したわけではない」(マット・フラー)

すべての共和党議員が、トランプ大統領の医療保険制度改革の方針に同意したわけではない。後列には拍手をしていない共和党議員も見受けられた。

午後9時45分 民主党の一部がトランプ氏に称賛の拍手

トランプ氏は家族のために有給休暇を取りやすくする方針を示した。これには一部の民主党議員から称賛の拍手が沸き起こった。

民主党がこの夜、共和党を初めて圧倒した場面。家族のための有給休暇取得

午後9時49分 「女性の健康について、覚えておいてほしい…」(ニューヨークタイムズのコラムニスト、ニコラス・クリストフ)

トランプ大統領が「女性の健康に」投資すると発言。彼のグローバル・ギャグ・ルールは、女性の命を救うNPOに対する資金を削減する

グローバル・ギャグ・ルール(口封じの世界ルール)とは、人工妊娠中絶を支援する非政府組織(NGO)に連邦政府が資金を支出することを禁じるもの。

午後9時54分 トランプ氏、VOICEを発表

トランプ氏は国土安全保障省不法移民の犯罪被害者を支援するオフィス「VOICE」(Victims Of Immigration Crime Engagement)を設立するよう指示した。不法移民の凶悪犯罪を強調することで、自身の不法移民対策の正当性を強調するトランプ氏に、民主党議員からブーイングが富んだ。

トランプ氏がVOICEという新しいオフィスを発表すると、民主党はヤジを飛ばし、非難した。

午後9時55分 トランプ大統領、労働力について奇妙な台詞を繰り返す

トランプ大統領はまたもや根拠不明の数字を用いて、衝撃的な数のアメリカ人が仕事もせずにだらだらしていると示唆した。

「9400万人ものアメリカ人が職に就いていない」と、トランプ大統領は選挙期間中に何度も繰り返した台詞を述べた。

労働省によると、失業者数はわずか760万人だ。これより大きな数字を作るために、トランプ氏は「労働力として数えない」政府の定義に当てはまる人々、つまり、「職に就いていないが、求職もしていない人々」を含めている。こうした人々のほぼ半数は退職者で、残りは障害があるか、学生か、あるいは家族の世話をしているために職に就いていない。トランプ氏はこのことに言及していない。

午後10時 イエメン掃討作戦で死亡したネイビー・シールズ司令官の妻に称賛の拍手

トランプ氏が大統領就任後初めて承認した軍事行動となった、1月29日のイエメン掃討作戦。この軍事行動で死亡した海軍特殊部隊「ネイビー・シールズ」のライアン・オーウェンズ司令官の妻が、トランプ氏の娘イヴァンカ氏の隣に座っていた。トランプ氏が亡くなったオーウェンズ氏に触れ、出席者が妻にスタンディングオベーションを送ると、彼女は感極まった様子だった。

ライアン・オーウェンズ司令官の妻キャリン・オーウェンズさん(中央)。右はイヴァンカ・トランプ氏

オーウェンズ氏の父親は、トランプ大統領との対話を拒否し、息子の死の調査を要求している

午後10時13分 「トランプ氏を見送る民主党議員は2人だけだった」(ハフィントンポストUS版政治記者ジェニファー・ベンデリー)

議事堂に留まり、トランプ氏を見送った民主党議員は、マーシー・カプター下院議員とジョー・マンチン上院議員の2人だけだった。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

(スライドショーが見られない方はこちらへ)