ソマリアで深刻化する干ばつ 国際社会は26万人が死亡した2011年の失敗を繰り返している

9歳の子供は、弟たちを苦しめないようにと自分の食事をあきらめている。

干ばつに見舞われたソマリアでは食料が極度に不足しており、ファトマ・アブディルさんは毎日つらい選択に直面している――7人の子供のうち誰に食事を与えればいいのか?

「食べ物が非常に少ない場合は、食べ物が最も必要な、一番小さい子供に与えます」とアブディルさんは今週、ソマリアの首都モガディシュでロイター通信に話した。アブディルさんの家族は先日、家畜のヤギの群れが飢えで死んだあと、モガディシュに逃れてきた。

アブディルさんの9歳の子供は、弟たちを苦しめないようにと自分の食事をあきらめている。「この子は自分を犠牲にしています」と、アブディルさんは悲しげに話した。

サロ・モハメド・ムーミンさんが2歳の息子を見つめる。この子は政府が運営する診療所で肺炎・重度の栄養失調と診断された。2月25日ソマリア・シャダで撮影。ムーミンの家族は干ばつのため全ての家畜を失い、より良い環境を求めて150km旅をした。国連によると、現在ソマリアは飢饉の寸前で、人口の約半数が深刻な飢えに直面している。ANDREW RENNEISEN/GETTY IMAGES

ソマリア全域で、アブディルさんの家族が経験したような想像を絶する苦しみが広がっている。長期の干ばつに加え、イスラム武装勢力「アル・シャバブ」との内戦が継続している影響もあり、水と食料が極端に不足している状態が続いている。ある頬がこけた母親は2人の幼い子供を連れて、食料・水・住まいを求めて100マイル(約161km)以上歩いた。3歳の娘は高熱に苦しみ、道中ずっと泣いていた。家族が食料を見つけるのを手伝うために学校をやめなければならなかった子供がいる。子供に食べさせるために食事を控えたせいで、次第に弱っていった父親がいる。

国連によると、現在ソマリアでは人口の約半数にあたる620万人以上が緊急の援助を必要としているという。世界保健機関(WHO)によると、このうち36万3000人の子供が急性栄養失調、7万人の子供が重度の栄養失調で救命支援を必要としている。

ソマリアのハッサン・アリ・カイレ首相は3月4日、ソマリア南西部のベイ州で飢えとコレラのために2日間で110人以上が死亡したという。

ソマリア国内で難民となった子供。栄養失調と診断され、コレラ患者のための病棟内で治療を受けた。ソマリアの首都モガディシュのバナディール病院で3月5日撮影。FEISAL OMAR/REUTERS

ソマリアの子供たちがバナディール病院で1台のベッドを共有している。3月9日撮影。国連によると、ソマリアでは現在300万人の子供がこの危機のために学校を追われている。FEISAL OMAR/REUTERS

ソマリアの女性が鼻から胃に管を通した栄養失調の子供を抱いている。3月5日バナディール病院の病棟で撮影。FEISAL OMAR/REUTERS

アントニオ・グテーレス国連事務総長は7日にソマリアを緊急訪問し、悲惨な状況が広まっているのを視察し、「言葉を失った」と述べた。

「私たちが出会った全ての人が、それぞれ恐ろしい苦しみを体験しています。それを言葉で言い表すことはできません」と、グテーレス氏は、モガディシュの北西にあるバイドアのコレラ病棟を訪問後、会見で述べた。

水源が干上がったため、ソマリアの人たちは命に関わるようなコレラ菌が感染した水を飲まざるをえない。今のところ約8000人がコレラに感染し、180人以上が死亡した。WHOの報告によると約550万人がコレラの危険にさらされているという。

「豊かさが存在する今日の世界で、このようなことがまだ起こりうるとは非常に残念です。信じられません」とグテーレス氏は述べた。

世界は「今こそ行動しなければなりません」と、グテーレス氏はTwitterに投稿し、ソマリアのさらなる人道危機の回避を呼びかけた。

飢饉とコレラを注視するための緊急訪問で、たった今ソマリアに到着しました。人々が亡くなっています。これを止めるために、世界は今こそ行動しなければなりません。

2011年の失敗を繰り返す

国連によると、今回の飢饉はソマリアで過去25年間で3度目の発生となり、食い止めるための時間は限られている限られた時間しかないという。2011年に発生した前回の飢饉では約26万人が死亡した。そのうち約半数は5歳未満の子供だった。

「2011年の悲劇を繰り返さないためには、国際社会からの大規模な支援が必要です」と、グテーレス氏は7日の記者会見で述べた。

しかし人道団体によると、2011年の失敗が、すでに繰り返されているという。

「セーブ・ザ・チルドレン」イギリス支部のケビン・ワトキンス支部長はインタビューで、今のところ国際社会の対応は、この危機に十分対処するのに必要な連携とスピードが欠けていると話した。

「6年前に飢饉を経験し、今回もこれだけ大規模な危機なのに、期待される水準の詳細な救済計画がないのです」と、ワトキンス氏はフィナンシャルタイムズ紙に語った。「すでに支援の約束は4億5000万ドル(約517億円)にのぼっています。しかしこの資金をどこから集め、どこに・いつ・どうやって届けるのか誰も全くわかっていません」

国連の6日の発表によると、世界的に援助を要請した8億6400万ドル(約991億円)のうち、わずか6%しか集まっていないという。

ソマリアの人たちは干ばつによる水不足や飢えと戦いながら、電気や水のないテントで生活を続けようとしている。モガディシュのカクスダ地域で3月8日撮影。SADAK MOHAMED/ANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

アメリカはどこへ行った?

グテーレス氏の訪問中に、ソマリアのモハメド・アブドゥライ・モハメド大統領は、かつては同盟関係にあったが、長い間対立していたアメリカに支援を要請した。

ソマリアは、ドナルド・トランプ大統領が出した入国禁止令のイスラム圏6カ国に含まれている。トランプ氏はまた、海外援助や外交の予算を大幅に削減すると明言している

トランプ氏の入国禁止令では、アメリカの難民受け入れプログラムを120日間停止したため、多くのソマリア難民にも影響が出るとみられる。アメリカへの移住を計画していた約1万5000人のソマリア難民は現在、世界最大の難民キャンプがあるケニアのダダーブで足止めを食らっている。

AP通信によると、アメリカとソマリアの両方の国籍を持つモハメド氏は会見で、「この入国禁止令が解除されることを望んでいる。もちろんアメリカと対話しなければならない。なぜなら、誰もが知っているようにアメリカにはソマリア人の大きなコミュニティがあり、彼らはアメリカの経済に貢献していると確信しているからだ」と語った。

モハメド氏はさらに「(ソマリアの人たちは)アメリカの経済と社会にさまざまな形で貢献してきた。問題を引き起こす少数の過激派よりも、ソマリアの人たちがどれだけ貢献してきたかについて話す必要がある」と訴えた

ソマリアは世界で最も貧しい国の1つだ。20年以上内戦が激しく続いており、近年の気候変動によって干ばつが増加して食料不足が起きている。

「私たちはできる限り大きな声を上げる必要があります」と、グテーレス氏は強調し、苦境にある何百万人ものソマリア人への世界的な支援を呼びかけた。「紛争、干ばつ、気候変動、病気、コレラ。これらが組み合わさると悪夢のようです」

干ばつの被害に苦しんでいる国は、東アフリカとその周辺地域でソマリアだけではない。国連児童基金(ユニセフ)の2月に発表した報告によると、ナイジェリア、ソマリア、南スーダン、イエメンで発生した飢饉のために、2017年は約140万人の子供たちが重度の栄養失調のために「死の危険」にさらされているという。下の地図は、この地域の食料不足の程度を示している。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

SOMALIA-DROUGHT/

ソマリアの飢饉

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

注目記事