マララさん 「子供の意見でも、世界中に伝わることがある」カナダでスピーチ(全文)

「若い難民は、今後世界に平和をもたらしてくれる未来のリーダーたちです」
Pakistani Nobel Peace Prize laureate Malala Yousafzai (C) receives a standing ovation while standing with Canada's Prime Minister Justin Trudeau and his wife Sophie Gregoire Trudeau during a joint session of Parliament in the House of Commons in Ottawa, Ontario, Canada, April 12, 2017. REUTERS/Chris Wattie
Pakistani Nobel Peace Prize laureate Malala Yousafzai (C) receives a standing ovation while standing with Canada's Prime Minister Justin Trudeau and his wife Sophie Gregoire Trudeau during a joint session of Parliament in the House of Commons in Ottawa, Ontario, Canada, April 12, 2017. REUTERS/Chris Wattie
Chris Wattie / Reuters

パキスタン出身のノーベル平和賞受賞者マララ・ユスフザイさん(19)が4月12日、カナダ下院議会で演説し、人の心を鼓舞するだけでなく、ユーモアに満ちあふれたスピーチで聴衆を魅了した。

ノーベル平和賞を共同で受賞したマララさんはカナダの首都オタワで、名誉市民権の授賞式に出席した。その後下院議場で女子の教育について演説した。マララさんが強調したのは、カナダが国際社会に貢献するために何が必要か、ということだった。

マララさんの演説の間、国会議員たちの称賛の拍手と笑い声が絶えないものとなった。拍手があまりにも頻繁に起きたので、マララさんは聴衆に「スタンディングオベーションを控えめにして、疲れないようにしてください」とお願いする一幕もあった。

マララ・ユスフザイさんが、2017年4月12日演説するためにオタワのカナダ連邦議会の下院議場に到着し、ジャスティン・トルドー首相と握手をする様子を見守る国会議員たち。首相の左はジョージ・フレイ上院議長。

マララさんは下院議場で、「ヒーローたちの国」カナダの名誉市民に選ばれたことに感謝の意を述べた。それでも、マララさんが入国するにはビザが必要だ(パキスタンのパスポートを所持する人はカナダ入国にビザが必要となる)。

「これって別な話ですけどね」とマララさんが付け加えると、会場は笑い声と拍手に包まれた。

その後しばらくして、マララさんは自分が「ヨガをし、タトゥーを入れている」ジャスティン・トルドー首相と会うことについて友人たちがどれだけ盛り上がっていたかを語った。「だから私が名誉市民になるなんて誰も気にしてなかったと思いますよ」と語り、マララさんは議場を沸かせた。

マララさんのスピーチ全文は以下の通り。

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ビスミッラー ヒル ラーマン イル ラヒム

最も寛大で慈悲深い神の名にかけて、お話しします。

グッドアフタヌーン。ボンジュール。アッサラーム・アライクム。パケールラグレイ。

首相閣下とグレゴワール・トルドー夫人、議長様、上下両院の議員の方々、来賓の皆様、両親のジアウディンとトール・ペカイ、カナダ国民のみなさんへ、温かく歓迎していただき感謝申し上げます。

カナダ国内を旅行するのは今回が初めてですが、この国に入国しようとしたことが以前ありました。2014年の10月22日に、父と私はトロント空港に到着し、この素晴らしい国に初めて訪問したことに胸を躍らせていました。

それからまもなくして、ある男が連邦議会を襲撃したと知らされました。カナダ軍の兵士が殺され、けが人が出て、今日私がいる建物にいた議員や公務員の皆さんが危険な状態になりました。

カナダのセキュリティー専門家に予定を変更するよう勧められました。悲しい気持ちで、イギリスへの帰途につきましたが、いつの日かカナダに戻って来ると心に誓っていました。

連邦議会を襲撃した男はイスラム教徒を自称していましたが、私と同じ信仰心を持つ人物ではありません。世界中で平穏に暮らす15億人のイスラム教徒とは違うものを信仰しています。私たちとは違うイスラム教を信じています。イスラム教とは、敬虔、思いやり、優しさにあふれた宗教です。

私はイスラム教徒ですが、イスラムの名のもとに銃を取り無実の人々を殺した時点で、もはやその人はイスラム教徒ではなくなると強く思います。

あの人と私の宗教は違います。それどころか、あの人は1月にケベックシティーのモスクを襲撃し、礼拝中だった6人を殺害した犯人と同じ憎悪を共有しているのです。

3週間前、ロンドンで民間人と警察官を殺した男と同じ憎悪です。

パキスタンのペシャワールにある陸軍経営の公立学校で、132人の児童を殺害した人たちと同じ憎悪です。

私を銃で撃った男と同じ憎悪です。

こういった人たちは、一般市民の間に壁を作り、民主主義、信教の自由、学校へ行く権利を破壊しようとしました。

でも皆さんは壁を作らないようにしています。生まれがどこであれ、宗教が何であれ、カナダ人は団結しています。このことを最も証明しているのは、皆さんが難民問題に深く関与されていることです。

世界中で、私たちはカナダにヒーローたちがいることを耳にしています。

ここオタワでファースト・ユナイテッド教会の皆さんがアミナとエブラヒム・アラマドという新婚夫婦のために寄付金を募ったと聞きました。数カ月後、アラマド夫妻には最初の赤ちゃんが生まれました。マーヤという女の子です。教会はさらに寄付を集め、エブラヒムさんの弟とその家族をカナダに呼び寄せました。マーヤちゃんがいとこたちと一緒に成長できるようにです。

コロンビアでの暴力から逃れるため、子供の頃カナダに難民としてやって来て、バンクーバーに住んでいるホルヘ・サラザールさんのことも聞きました。若者ですが、子供の移民や難民問題に取り組み、子供たちが新しい祖国に適応する援助をしています。

さらに、ファラー・モハメドがマララ基金の新しい会長に就任したことをお知らせできることをとても誇らしく思います。彼は子どものときウガンダを逃れ、カナダにやってきました。カナダ人が今後世界中の女子教育を押し進める運動を導くことになるのです。

私の祖国パキスタンから多くの人が約束の地をカナダに見つけてやってきています。マリア・トオーパカイ・ラザールをはじめ、今日ここにいる私の親戚もそうです。

カナダにいる難民と同じように、私も自分が安全なのか分からず怖い思いをした経験があります。お母さんが家の裏にはしごをかけて何かあったら逃げられるよう準備をしたときのことを覚えています。

学校へ通っていた時も、誰かが私を呼び止めて危害を加えるのではと思い、恐怖を感じていました。教科書をスカーフの裏に隠して通っていました。

爆弾の音で夜中に目を覚ますこともよくありました。毎朝のように、また無実の人が亡くなったという知らせを聞きました。通りでは銃を持った男たちの姿を目にしていました。

パキスタンの私の故郷、スワット渓谷は以前より平和になりました。しかし、私たちのような家族は、パレスチナ、ベネズエラ、ソマリア、ミャンマー、イラク、コンゴといった国で、暴力を振るわれ、故郷を逃れることを余儀なくされているのです。

「カナダへようこそ」という言葉には、ニュースの見出しやハッシュタグ以上の意味があります。この言葉は、家族が危険な目に遭っている、ありとあらゆる人が切望する博愛の精神です。皆さんが国境と心を、世界で最も無防備な子どもたちや家族に対して開き続けて下さることを祈ります。そしてお隣の国々の方々も、カナダを見習ってくれることを希望します。

皆様の国カナダの名誉市民権を、謹んでありがたくお受けさせていただきます。私は常に誇り高きパシュトゥン人でパキスタン国民ですが、それと同時にヒーローたちの国カナダの名誉市民であることをありがたく思います。

今朝、この国の首相にお会いできたのも大変うれしかったです。積極的な難民の受け入れ、カナダで初めて男女の数を同数にした内閣、成長戦略の中心に女性や女子を置くことに常に熱心な首相の姿勢には感銘を受けました。

トルドー首相の話はしょっちゅう耳にしていました。でも私が驚いていることが1つあります。みんな首相がとても若いということばかり話しているのです。

こう言ってます。

「あの人はカナダ史上2番目に若い首相だよ!」

「ヨガをやってるんだって!」

「タトゥーを入れてるんだよ!」

政府の長としてトルドー首相は確かに若いかもしれませんが、カナダの子どもたちにこう言ってみたいですね。「トルドー首相ほど歳を取ってなくても、リーダーになれるんだよ!」

以前は、リーダーになるためには大人になるまで待たないといけないと思っていました。でも子供の意見でも、世界中に伝わることがあると、分かるようになりました。

カナダの若い女性の皆さん、前に踏み出して意見を述べてください。次回こちらにお邪魔する時、もっと多くの女性が議席に座っている姿を目にしたいのです。

カナダの男性の皆さん、誇りをもってフェミニストになってください。そして女性が男性と同じチャンスを得られるよう手助けしてあげてください。

そして今日こちらにいらっしゃるカナダの指導者の皆様方へ。政策や優先事項は人それぞれですが、皆様方それぞれが、世界で最も喫緊の課題に対処しようと努力されているのを、私は存じております。

私は世界中を旅し、たくさんの国の人々に会ってきました。戦争、経済不安、気候変動、健康危機など、この目でじかに現代世界が直面する問題を目にしてきました。だから問題の解決策は女の子だと、皆様に断言できます。

女子に中等教育を受けさせることで、コミュニティー、国、世界が変わります。統計データでは以下のようになっています。

・すべての女子が学校に12年間通ったら、低・中所得の国々のGDPは年間920億ドル増加すると見込まれる。

・教育を受けた女子は若くして妊娠したり、エイズウイルスに感染する確率が下がる。さらに産んだ子供が健康に育ち、教育を受ける確率も上がる。

・ブルッキングス研究所は女子に中等教育を受けさせるのが、気候変動を食い止めるのに最もコスト効率が良く、効果の高い投資であるとの研究結果を出している。

・国がすべての子供たちに中等教育を提供すれば、戦争が起きるリスクが半分になる。

・教育は世界中の安全保障に欠かせない。なぜなら過激主義を産むのは不平等だからだ。チャンスが与えられず、意見が言えず、希望がないと人々が感じる場所で過激主義が生まれる。

女性が教育を受けると、あらゆる人に対する職が増えます。母親が子供を失わずにすみ、学校に通わせることができると、希望が生まれます。

しかし世界中で、学校に通っていない女子は1億3000万人いるのです。研究結果は読んでいないかもしれませんし、統計データは知らないかもしれません。それでも、彼女たちは教育こそが明るい未来を手にする唯一の道筋だということは理解しています。だから学校に通うため闘っているのです。

昨年、ケニアを旅していたとき、紹介された女の子は自分が会った中で一番勇敢な子でした。

13歳のとき、ラーマさんの家族はソマリアを逃れ、世界最大の難民キャンプがあるケニアのダダーブにたどり着きました。

それまで教室の中に入ったことはありませんでしたが、懸命に勉強してみんなに追いつき、数年後に小学校を卒業しました。

18歳のとき、ラーマさんは中学生でした。そのとき、ラーマさんの両親はソマリアに戻ることに決めました。両親はラーマさんにソマリアに戻っても学校には行かせてあげると約束しました。

しかし家族がソマリアに戻ると、ラーマさんが通える学校はありませんでした。父親はもう学校は十分だと言い、「お前はもうすぐ50歳の男性と結婚するんだ」と言いました。本人の知らない男性でした。

ラーマさんは難民キャンプにいた友達が、奨学金をもらってカナダの大学に進学したことを思い出しました。近所の人のインターネット回線を借りて、Facebookを通じて彼と連絡を取りました。インターネットを通じて、そのカナダの大学生はラーマさんに70ドル送金してくれました。

夜中に、ラーマさんはこっそりと家を出て、バスの切符を買い、8日かけて難民キャンプに戻ってきました。そこしか学校に通える場所を知らなかったのです。

持続可能な開発目標(SDGs、2015年9月の国連総会で採択)を通じて、国連はあらゆる女子が学校に12年間通えるようにすると約束しました。先進国と途上国が協力して、世界で最も貧しい女子たちがこの夢を実現できるようにすることを約束しました。

政治家がすべての公約を実現できるわけでないことは承知しております。でもこの公約は守っていただけなければなりません。世界の指導者たちはもうラーマさんみたいな女の子が、1人で闘うことを期待するわけにはいかないのです。

地球に平和をもたらし、経済を成長させ、公衆衛生を向上させ、空気をきれいにすることができるのです。そうしなければ次の世代の女子たちの能力を無駄にすることになりかねません。

家出をすることがどういうことかを知っていて、いつになったら学校へ戻れるのか悩んだことがあるので、私は女の子たちの声を代弁しています。

教育を受ける権利を奪われ、夢が危うくなることがどういうことか分かるので、私は女の子たちの味方です。

私は自分の役割を認識しています。皆さんが私に味方してくれるのなら、あらゆるチャンスを生かしてこれからの1年間、女子教育を促進していただきたいのです。

カナダの皆さん、以下の点について、もう一度世界をリードしてください。

まず、来年カナダで開催されるG7首脳会談で、女子教育を中心議題にしてほしいのです。

それから皆さんの影響力を使って、世界の教育予算の格差を解消するよう努力してもらいたいです。昨年モントリオールで「グローバルファンド増資会合」を主催したとき、皆さんは何十億ドルものお金を集め、人の命を救いました。同じリーダーシップを教育の面でも示していただきたいのです。

次回の「教育のためのグローバルパートナーシップ」を主催して、世界各国の首脳を集め、女子が学校に通うための新たな予算を募ってください。カナダがリーダーなら、世界は必ず付いてきます。

最後になりますが、難民に対する12年間の教育を優先事項にしてください。現在、難民の子供の4分の1しか中等教育を受けていません。故郷を追われる子供たちに、夢もあきらめてくれと頼むわけにはいきません。そして私たちが認識しなければいけないのは、若い難民は今後世界に平和をもたらしてくれる未来のリーダーたちだということです。

世界には人道に尽くすリーダーが必要なのです。所有している武器の数ではないのです。カナダはその点で主導権を握ることができます。

現代社会には問題が沢山あります。でも解決策は身近にあるのです。すでに解決策はあります。

ある女の子はヨルダンの難民キャンプで生活しています。グアテマラで5キロ歩いて学校に通う子がいます。インドでは入学金を払うためサッカーボールの糸縫いをしています。それぞれが、現在世界中で学校に通えない女の子たちの1人なのです。

何をすべきかはわかっています。でも自分たちを良く見つめなおし、約束を守る意思を確認しなければなりません。

地球という大きな家族の一員である皆様、現代人は世界をより良くする責任があります。本やiPadやその次にどんなものが発明されるか分かりませんが、将来の世代が私たちの歴史を読んだとき、ショックを受けてほしくないのです。1億3000万の少女たちが学校に行けず、それを放っておいたと。何百人もの家族が故郷を奪われておきながら、子供のために行動を起こさなかったと。可哀そうな子どもたちを見捨てたという、汚名を着せられたくないのです。

将来の世代に、現代を生きる我々こそが行動を起こしたと言ってもらいましょう。全ての女子が教育を受けられ、怖れることなくリーダーになれる世界を作ったのは、我々の世代だと言われるようにしましょう。

ご清聴ありがとうございました。

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ハフィントンポスト・カナダ版より翻訳・加筆しました。

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