フランスの若者、極右政党「国民戦線」に傾く 大統領選の動向は流動的

EU離脱賛成派やトランプ支持者が主に古い世代だったのに比べ、ルペン氏の支持者は主に若い有権者だ。

フランスの極右政党「国民戦線」を率いるマリーヌ・ルペン氏は、4月23日に行われるフランス大統領選挙の第1回投票を前に、熱狂的にキャンペーンを締めくくった。投票結果はなお不透明だが、世論調査によれば4人の候補者がしのぎを削ることになりそうだ。

ルペン氏は現在、独立系候補のエマニュエル・マクロン氏と第1回投票に向けて激しいつばぜり合いを繰り広げ、2002年以来初の第2回投票への進出をかけている。しかし、世論調査によると最終投票で他の主要候補者が一騎打ちで彼女を破るだろうとみられており、ルペン氏の最終投票の見通しは厳しい。

ルペン氏は、イギリスの欧州連合(EU)離脱や、アメリカのドナルド・トランプ大統領の勝利と同じように、世論調査をひっくり返してみせると意気込んでいる。しかし、EU離脱賛成派やトランプ支持者が主に古い世代だったのに比べ、ルペン氏の支持者は主に若い有権者だ。

キャンペーン全体を通して行われた世論調査によると、国民戦線は他のどの党よりも若い有権者から支持されている。3月のフランス世論研究所(Ifop)による調査では、18〜24歳の投票者の39%がルペン氏を支持していた。

ヨーロッパ全体のポピュリストの動きを通してみても、ルペン氏の支援者に占める若者の割合は際立っている。例えば、3月のオランダ下院選で全体の得票率が13%だった反イスラムの極右政党「自由党」(PVV)ヘルト・ウィルダース氏に投票した18〜24歳の投票者はわずか3%前後だった。EU離脱のイギリス国民投票でも、若い有権者の75%前後が残留を望んだし、4期目を目指すドイツのアンゲラ・メルケル首相も、他の候補と比べ若い有権者からより多くの支持を得ている

フランスの若い有権者は、現在の国のシステムが機能していないと主張する政党にとって格好のターゲットのようだ。近年のフランスの若者の失業率は25%前後で、EUの平均よりもはるかに高く、フランス全体の失業率の2倍以上だ。若いフランス国民の多くが、移民とEUのせいでフランス人の職が奪われているとの主張を土台に展開する政党に、喜んで投票しようとしている。

フランスの若い有権者が伝統的に強い政党に背を向けるこの状況は、国のすべての年齢層でフランスの政治がより断片化していることが背景にある。第2回投票で最も有力と思われるシナリオは、ルペン氏とマクロン氏の一騎打ちで、いずれかの候補がエスタブリッシュメント(既得権益層)以外から立候補した初の大統領となるだろうとみられる。与党の社会党は崩壊の危機に面し、以前は力を誇っていた共和党も腐敗に悩まされている。

伝統的な投票ブロックが崩れる中、国民戦線は既存の政治に取って代わる唯一の正当な存在としての地位を確立しようとしている。この主張は、露骨に特権階級を守り、反ユダヤをかざす国民戦線のリーダーだったマリーヌ氏の父親ジャンマリ・ルペン氏の時代の記憶が薄く、高失業率に苦しんでいる若い有権者には響きやすい。

マリーヌ・ルペン氏は、父が設立した国民戦線を、より社会的に適応した、あからさまな差別をしない政党にするための戦略を長年にわたって立ててきた。近年では父の反ユダヤ発言で対立し、2015年に父を党から完全追放している。

マリーヌ・ルペン氏は、ホロコーストでのフランスの役割を軽視したり、イスラム教徒の移民の怒りを買うような発言を続けていたりするにもかかわらず、彼女の政党を主流に導き、若い有権者を満足させることに成功した。 2015年の調査では、フランスの若者は、国民戦線は他の党に比べより幅広い問題に取り組んでいると回答し、中でも失業問題に対しては一般層よりもはるかに高く国民戦線を評価している。

党は、多くの若い政治家を前に出し、党の中心層として宣伝している。マリーヌ氏の姪であるマリオン・マレシャル=ルペン氏は、フランス国会の最年少となる27歳で、イベントにも頻繁に登場している。

フランス国民前線を率いるマリーヌ・ルペン氏(左)と政治家マリオン・マレシャル=ルペン 氏。ERIC GAILLARD / REUTERS

国民戦線は、フランスの若者の間で広く支持されているが、党はもともと若者に対してアピールを続けてきた。1970年代から等には青年部があり、党中央部の反イスラムと反移民を中心のスローガンを掲げてきた。国民戦線青年部長のゲイトン・デュソサイエ氏は、青年部のウェブサイトに数多く投稿し、政府がフランス生まれの国民を無視して、移民に大きな恩恵を与えているという不満を書き連ねている。

しかし、国民戦線への若い有権者による支持が実際にどれだけ大きな影響を及ぼすかは、まだ不透明だ。急進的な変化を願う若者の国民戦線への支持は一時の気まぐれだという可能性もある。ル・モンド誌が発表した「イプソス・ソプラ・ステリア」の調査では、極左「左翼党」のジャン=リュック・メランション氏が1カ月足らずの間に18〜24歳の有権者の支持を12%から44%に伸ばした。しかし、この調査からはメランション氏の支持に回った有権者がもともと誰を支持していたのかが明らかでなく、ルペン氏の支持が減ったかどうかも不明だ。

また、若い有権者からの支持が必ずしも得票数に反映されるわけではない。2012年の大統領選前の数週間、ル・モンド誌の調査では、18〜24歳の有権者のルペン氏の支持率は26%だったが、第1回投票で実際に彼女に投票した若者票は、わずか18%だった。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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