フランス大統領選、ネット上ではマリーヌ・ルペン氏が優勢 しかしこれはbotの仕業だった

ルペン陣営はSNSでの存在感を高めることに大きな重点を置いてきた。

HUFFPOST

フランスの極右政党「国民戦線」党首マリーヌ・ルペン氏は、フランス大統領選の支持率を維持しようと懸命になっている。中道無所属のエマニュエル・マクロン氏、保守・中道の統一候補フランソワ・フィヨン氏、急進左派のジャン・リュック・メランション氏の4氏が支持率が拮抗しており、第1回投票の行方は混沌としている。

しかしネット上では、ルペン党首が優勢だ。

ルペン陣営はSNSでの存在感を高めることに大きな重点を置いてきた。さらに現在では対立候補にフォロワーの数で優位を示すことに力を入れている。常にルペン支持派のハッシュタグがTwitterのトレンド入りしており、ルペンを支持する声が高まっているという印象を受ける。

しかし最近の分析結果によると、ルペンのSNS上の優位は、実際には少人数の組織化されたフォロワーのグループが、事前に用意したミーム(ネットに拡散させる画像、コメントなどの情報)やハッシュタグをTwitter上に急速に拡散させた結果だとみられていれる。こういったツイートの評価や内容からも、こうしたアカウントの多くが部分的または完全に自動化された「bot」(自動発言プログラム)が投稿しており、本物の支持者のものではないことを示している。

アメリカの首都ワシントンに拠点を置くシンクタンク「アトランティック・カウンシル」のベン・ニモ氏とニカ・アレクセイヴァ氏の報告書では、何千ものツイートと国民戦線を支持するアカウントを多数分析して、ルペンに対するネット上の支持の出所を探った。報告書の分析結果によると、ルペン支持やルペンの政敵に対する批判を表明するハッシュタグの数が多い3つのケースで、ほんの一握りのアカウントが流れを主導していたという。

「Twitterのトレンドを誘導するのに長けた、非常に熱心な支持者の少人数グループが存在し、草の根運動に見せかけようと暗躍しています」とアトランティック・カウンシルで情報防衛担当上級フェローを務めるニモ氏は語った。

報告書の分析結果では、ルペン支持のアカウントは組織的キャンペーンを行い、特定のハッシュタグをトレンド化したとみられる。この動きは通常ほぼ同時に始まり、アカウントを3つか4つ使用して、ルペン支持の画像やスローガン内容のコメントを組み合わせ、ツイートを作成していたとみられる。

調査結果によると、ある例では@ImRiyyrというハンドルネームを使ったbotアカウントから、わずか20分以内に95枚の別々の画像がツイートされていたという。この連投ツイートは、他のbotアカウントと疑わしいものと比較しても回数が多すぎたので、後に削除された。

報告書の中では、SNS選挙活動を仕掛けることはないが、ハッシュタグが出た直後に、ルペン支持のリツイートを何百もすることで、拡散する働きをする数多くのアカウントが特定されている。

「おそらくわずか十数人でやっているように思われますが、彼らは上手くこれをトレンドにしています」とニモ氏は語った。「マリーヌ・ルペン氏には多くの支持者がいるような書き込みをTwitterで見かけますが、私はそうではないと思います。ルペン氏には少人数ながら技術的に優れた支持グループがいるのです」

国民戦線と、こういったルペン支持のハッシュタグを増殖させるアカウントの間には表向き関係がないことになっているが、この動きはルペン氏の公式SNSの戦術と一致している。ルペン陣営は何度も標的を絞ったSNS作戦を展開しており、対立候補を攻撃するコメントを乱発している。国民戦線の青年組織や幹部も動員され、フィヨン氏がちょうど演説を始めようとした矢先に、ミームをばらまいたこともある。

アトランティック・カウンシルの報告書で取り上げられているアカウントの1つに@Avec_Marineがある。ワシントンD.C.に拠点を置くニュース専門サイト「ポリティコ」ヨーロッパ支局が2月、23歳のルペン支持者のものと特定した。

ポリティコによると、@Avec_Marineのアカウントを持つこの男は、国民戦線と非公式にも公式にも関わりがあると主張している。

しかし、@Avec_Marineや他の極右アカウントの活動は、少人数のネットワークを超えた外部の支援がなければ成立しない。さらにルペン氏の本当のフォロワーがいなければ、投稿内容にリツイートして、支持者数の見た目を大きくすることはできない。

「完全にシステム任せというわけではないですが、Twitterの傾向を見ると、システムを使って拡散しています」と、ニモ氏は述べた。「本当の支持者は、現実と釣り合わないコメントを目にしているのです」

候補者の応援や落選運動をするために、botを活用する動きが広がっているのはルペン支持者に限った話ではなく、フランスの選挙特有の現象でもない。ニモ氏はマクロン氏を応援するアカウントがルペン支持者のハッシュタグに入り込んでいることにも気が付いた。さらに2016年はTwitterでbotの大群が増殖し、ドナルド・トランプ大統領のネットでの存在感を高めるのに大活躍した

現在の世論調査では、ルペン氏は大統領選でマクロン氏に敗北する見通しだ。最有力候補だったフィヨン氏が妻や子供への不正給与疑惑で人気を落とした後、マクロン氏が浮上した。世論調査結果で一貫しているのは、ルペン氏が第1回投票を制するか2位になるが、最終的には5月7日の決選投票では大差で負けるということだ。

ルペン氏は、世論調査が間違っているという空気を作ろうとしている。トランプ大統領やブレグジット(イギリスのEU離脱)の時と同じになると主張している。彼女の主張は昔ながらの極右ポピュリスト的であり、既存のメディアや政治エリートたちにないがしろにされてきた市民の大きな層がいて、彼らが自分を大統領に押し上げ、自分たちの意見を表明することになると訴えている。

Twitterのトレンドはすぐに消費されるし、本当の支持を表すものではないにせよ、SNS上で主流派が活発に支持していると見せかける力は、そのような雰囲気を助長させる力がある。

「ハッシュタグ作戦が成功したのはそれほど大したことではありませんが、より大きいのは、ネット上の支持コメントを増やすのに成功したことなのです」と、ニモ氏は指摘した。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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