「サンクチュアリ・シティ」(聖域都市)への補助金を停止するトランプ氏の大統領令、連邦地裁が差し止め

トランプ氏が出した移民に関する大統領令は、裁判所から相次いで差し止め処分が下されている。
U.S. President Donald Trump holds a joint news conference with Italian Prime Minister Paolo Gentiloni at the White House in Washington, U.S., April 20, 2017. REUTERS/Aaron P. Bernstein
U.S. President Donald Trump holds a joint news conference with Italian Prime Minister Paolo Gentiloni at the White House in Washington, U.S., April 20, 2017. REUTERS/Aaron P. Bernstein
Aaron Bernstein / Reuters

アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコの連邦地裁判事は4月25日、ドナルド・トランプ大統領が出した、不法移民を保護する「サンクチュアリ・シティ」(聖域都市)に対して連邦政府の補助金支出を停止する大統領令の差し止めを命じる仮処分を下した。

トランプ氏が移民・関税執行局(ICE)と連携して制限をかけようとしていたサンクチュアリ・シティのカリフォルニア州サンフランシスコ市郡とサンタクララ郡の2つの地域は、トランプ氏の大統領令に異議を申し立てていた。

トランプ氏が出した移民に関する大統領令は、裁判所から相次いで差し止め処分が下されている。

連邦地裁のウィリアム・オリック判事は、大統領令の執行を停止する全国的な一時差し止め処分を下した。この処分により、訴訟を起こしているサンクチュアリ・シティや、トランプ氏の反移民政策に同調せず連邦政府から交付を停止されているその他の地域への補助金支出が可能になる。

「憲法は大統領にではなく、議会に補助金支出の権限を与えている。大統領令が連邦政府の補助金に新たな条件を加えることは、違憲だ」と、バラク・オバマ前大統領が任命したオリック判事は説明した。「地方自治体が、大統領の同意しない移民政策を選択しているという理由で、移民政策と何の関係もない連邦政府の補助金支出が脅かされることはあってはならない」と、オリック判事は付け加えた。

トランプ大統領が、就任して最初の1週間で署名したこの大統領令は曖昧すぎるため、各自治体の資金を奪い取る可能性があり、合衆国憲法修正第5条に抵触し、違憲であるとオリック判事は判断を下した。またオリック判事は、この大統領令が合衆国憲法修正第10条と三権分立にも違反する可能性があると付け加えた。

14日の聴聞会で、司法省は大統領令をより狭義に解釈するよう求め、大統領令で危機にさらされる補助金はほとんどなく、サンフランシスコ市やサンタクララ郡の行政サービスに影響に及ぼすことはほとんどないと主張していた。

オリック判事は、司法省の主張に懐疑的で、仮処分命令のなかで「法的に説得力がない」と断言した。オリック判事は審理で、司法省の主張と矛盾するジェフ・セッションズ司法長官とトランプ大統領のコメントを引用した。セッションズ氏は3月、サンクチュアリ・シティへ交付した資金を「回収する」 と表明し、トランプ氏は資金交付停止を、不法移民政策への協力を拒む都市への「武器」と表現した。

「大統領令の及ぶ範囲には疑問があるのに、大統領と司法長官は公式の発言でそれを認めていない」と、オリック判事は述べた。

オリック判事はまた、司法省の狭義の解釈は、実際の大統領令と矛盾していると述べた。

「司法省は違憲の命令である第9節aの全文を読み上げ、高圧的で、誤解を招く、権限のない脅迫をしようとした」と、オリック判事は説明した。「こうした解釈は大統領令の文言と矛盾するものであり、大統領令の内容と異なることは明らかだ。法的行為を法的に無意味にするような狭義の解釈は、どうみても筋が通っているとは考えられず、大統領令の意図と一致するものではないことは明らかである」

司法省はまた14日の聴聞会で、大統領令は「全面的に認められる公職の権威」の行使であり、大統領の優先事項として移民取り締まりを強化する目的を持ったものだと主張した。

しかしオリック判事が下した判断は、大統領令は法的権限を備えているため、それらを単に修辞上の問題と解釈するのは合理的ではないと記した。

「大統領は自らの政策を施行するために公職の権威を使用する権利を持っている」と、オリック判事は述べた。「しかし第9節aは、単に修辞上の問題ではない」

一方で、サンフランシスコ氏とサンタクララ郡は、もし大統領令が差し止められなければ、「すぐには回復できない被害に直面する可能性が高い」と訴えていると、オリック判事は述べた。彼はまた、もし訴訟が進行すれば、彼らは大統領令を違憲として異議を申し立て、認められる可能性が高いとも語った。

「不確実な大統領令では、郡の予算編成・将来の計画、住民への適正な行政サービスに影響を及ぼす」と、オリック判事は語った。「大統領令が合法となる範囲の明確化がなければ、郡は、数百万ドルもの連邦補助金を失うリスクを軽減する対策を講じる。資金の確保や行政サービスの削減につながる。こうしたリスク軽減の対策は郡に取り返しのつかない害を生じさせる」

トランプ政権は今も、何をもって「サンクチュアリ・シティ」とするかを明確にしておらず、地方自治体が補助金支出を打ち切られるのを恐れ、大きな混乱をもたらしている。国土安全保障省は25日、サンクチュアリ・シティの定義は最終決定しておらず、それまでは資金が打ち切られないと語った。

オリック判事は、セッションズ氏や国土安全保障省のジョン・ケリー長官が、厳密にどのように「サンクチュアリ」の管轄区を定義するか、ガイドラインを発表する可能性について言及した。オリック判事はまた、トランプ政権が市に対して特定の不法移民について報告するよう指示する、連邦法への承諾については差し止めを認めなかった。

「サンクチュアリ・シティ」という用語には様々な政策が含まれるが、主に移民・関税執行局の「拘束者」全員に及ばない法的権限が適用されている。つまり、連邦政府からの要請で、地方の法執行機関に不法移民を拘束させることだ。サンクチュアリ・シティがこうした拘束を拒否するのには、さまざまな理由がある。警察と移民・関税執行局と同列に扱うのは公共の安全のために良くない、連邦政府の代わりに個人を長期間拘束するのには費用がかかる、拘束は違憲だ、といったものだ。

トランプ政権は、連邦の法執行機関と情報共有するための法的権限を行政区に求める「合衆国法典8編1373条」を引き合いに出し、地方の法執行機関の不法移民拘束を正当化しようとした。この規則は、ほぼ全ての行政区がある程度対応している。市長や法執行機関の首脳は25日、セッションズ氏と面会した印象を語り、連邦政府は今後、情報を共有して行政区を抑えるため「サンクチュアリ・シティ」という言葉の定義をより狭くしようとしていると述べた。

政治ニュースサイト「ポリティコ」によると、ニューオーリンズのミッチ・ランドリウ市長は「私たちが聞いたところでは、現時点で規則に従っていない市はないと思う」と語った。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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