ムーニーのおむつCMに「ワンオペ育児を賛美しないで」批判⇒ユニ・チャーム「取り下げはせず」本来の意図は?

ユニ・チャーム広報室の担当者はハフポストの取材に「本来の意図はリアルな日常を描き、応援したいという思いだった」。

ユニ・チャームのおむつブランド「ムーニー」の動画広告の内容に対して、母親が一人きりで子育てに取り組む「ワンオペ育児」を肯定的に扱っているのでは?と批判が集まり、話題になっている。

ユニ・チャーム広報室の担当者はハフポストの取材に「お客様相談センターにも意見をいただいている」としたが、動画について「本来の意図はリアルな日常を描き、応援したいという思いだった」として、取り下げなどは予定していないと回答した。

動画は『ムーニーから、はじめて子育てするママヘ贈る歌。 「moms don't cry」(song by 植村花菜)』として、2016年12月にYouTube上に投稿された。4月中旬にTwitterでも投稿されたため、今になって話題にのぼったようだ。

約2分のストーリーは、子どもを出産した女性が、オムツ替え、買い物、食事など、時に苦痛の表情を浮かべながら、初めての育児・家事に取り組むというもの。

しかし、子どもが笑顔で指を握り返した様子に励まされた女性は笑顔になり、動画は「その時間がいつか宝物になる」との言葉で結ばれている。

確かに、奮闘する母親を励ますのが本来の意図だったのだろうということは伝わってくる。

■ワンオペ育児を賛美?

しかし、問題の焦点となっているのはこの女性が常に1人で事態に対処しているという「ワンオペ育児」ぶりだ。

この女性が出産した病室には夫らしき男性の姿が一瞬映り込んでいる。しかし、その後、家事・育児のシーンでこの動画に男性の影が登場するのはわずか一回だけ。

しかも、何らかの不調があったのか、夜、赤ちゃんを抱えてタクシーに乗り込む女性を、隣の席で不安そうに見ているという役柄だ。

動画が結末を迎えても、女性は夫などの家族や家事・育児サービスの助けなどを利用することなく、「気の持ちよう」でこの辛い状況を乗り越えようとしている。そして駄目押しのように「その時間がいつか宝物になる」というメッセージも女性に投げかけられる。

病児保育などを手がけるNPO法人フローレンス代表の駒崎さんは「ワンオペ育児賛美にしか見えない」として、批判の声をあげている。

感動ムービーのつもりで作っているのだろうが、ワンオペ育児賛美にしか見えない。

おむつ会社なら、「母親は1人で頑張るべきだし、それが美しい」という社会的抑圧と戦うべきだ。

そういう抑圧が、産後鬱を生み、児童虐待を生み、少子化を生むのだから。 https://t.co/saislE1sS9

— 駒崎弘樹@障害児のために働く看護師募集中 (@Hiroki_Komazaki) 2017年5月9日

また、実際にワンオペ育児を経験したという人々からは「嫌な記憶がよみがえりました」「辛い過去を思い出しました」といった声もあった。

一方で、Twitter上には「育児の現実はこう。皮肉を込めたCMでは」という意見も挙がっていた。

@moonypromotion 助けが無いことに怒りを感じるが、実際のところの育児の現実はこうですよね。夫に何か期待するほうがガッカリして余計なストレス溜めてしまうので一周回って結局女だけでやるしかないという皮肉を込めた意味のCMなんじゃないでしょうか(考えすぎ)

— しらたきめんはまだ生きています (@omote_men) 2017年5月9日

■「ワンオペ育児」は常態化

総務省の社会生活基本調査(2011)でも、母親の「ワンオペ育児」が常態化していることが読み取れる。

調査によると、末の子が就学前という夫婦世帯で、家事・育児・介護にかける1日の時間は、妻が7時間31分、夫が1時間6分。少なくとも1日6時間以上、妻は「ワンオペ」で家事や育児に取り組んでいるという実態が明らかになっている。

■本来は「リアルな日常を描き応援する意図だった」と担当者

ユニ・チャーム広報室の担当者はハフポストの取材に対して、本来の意図について以下のように回答した。動画の削除などについては、現時点で予定していないという。

子育ての理想と現実にギャップがあった、ということに悩む、母親のリアルな日常を描いて、それを応援したいという思いがありました。様々な環境で子育てをしているお母さんたちがおり、決して『ワンオペ』を肯定も否定もするつもりはありませんでした。ただ、現実にはこうした状況があるということを踏まえて、こうした環境下で子育てするママに寄り添って応援したいという意図でした。

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