「日常で見逃されている美を...」伝説の写真家ソール・ライターが、83歳で脚光をあびた理由(画像)

「私たちが見るものすべてが写真になる」

あなたは1950年代にニューヨークで活躍した写真家、ソール・ライターをご存知だろうか。

ライターは1946年、画家を志してニューヨークに移住。後に『LIFE』『ELLE』『VOGUE』などの雑誌でファッション写真を撮影。第一線のファッション・カメラマンとして活躍しながらも、1980年代に商業写真から退き、その後は世間から姿を消したと思われていた。

映画『Beyond the Fringe』 のキャスト(ダドリー・ムーア、ピーター・クック、アラン・ベネット、ジョナサン・ミラー)とモデル『Esquire』》 1962年頃 ゼラチン・シルバー・プリント ソール・ライター財団蔵 (c)Saul Leiter Estate

そんな彼の展覧会「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」が、Bunkamuraザ・ミュージアム(東京・渋谷)で6月25日まで開催されている。

ライターはどんな隠遁生活を送ったのか。長い時を経て脚光を浴びた彼の人生を、その言葉とともに振り返ってみよう。

写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時折提示することだ。

第一線のファッション・カメラマンを退いた後も、ライターは2013年に89歳で亡くなるまで、創作のために写真を撮り続けた。

カラー写真黎明期に撮影された、ライターの写真を見ていただこう。

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雪に映える鮮やかな赤い傘、街に溶け込むファッション写真、歩道をとびはねる猫、雨の街に浮かびあがる人々……。街や人が生き生きと浮かびあがる。

被写体を見つめるライターの視点からは、独自のユーモアや美しさを大切にする姿勢が伝わってくる。

人間の背中は正面より多くのものを私に語ってくれる。

2006年、約20年のときを経て、“世界一の出版社”と称されるドイツのシュタイデル社から作品集が出版されると、ふたたび世界の注目を集めた。2012年には映画「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」(日本公開は2015年)が公開された。

沈黙していた20年間、彼は何かをしていたのだろうか。

毎朝、起きたら絵を描き、カメラを持って書店まで散歩に出かけ、コーヒーを飲み、帰宅したら愛猫レモンの世話をする——。

この暮らしは、再び脚光を浴びてからも変わることはなかったという。ときにインタビューを受けることもあるが、自分の作品を語ることは嫌いだった。時代がめぐっても、ライターの街や人を見つめる姿勢は変わらなかった。

東57丁目41番地で撮影するソール・ライター、2010年 撮影:マーギット・アーブ (C)Saul Leiter Estate

雨粒に包まれた窓の方が、私にとっては有名人の写真より面白い。

「私たちが見るものすべてが写真になる」と、ライターは語った。

写真展では、絵画作品やスタジオの写真も展示される。彼の写真や言葉、生きかたを知りたい人は、足を運んでみるのもいいだろう。帰り道、美しい傘が欲しくなるかもしれない。

ソール・ライター 《ペリー・ストリートの猫》 1949年頃 ゼラチン・シルバー・プリント ソール・ライター財団蔵 (C)Saul Leiter Estate

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