文部科学省の有識者会議・国立大学法人評価委員会は6月6日、全国の国立大学の教育や業務運営に関する評価結果を公表した。
付属病院で死亡事故が相次いだ群馬大、付属高校でいじめの対応が不適切だった東京学芸大が、業務運営の分野で5段階評価で最低ランクに位置付けられた。
有識者会議は6年に1度、全国に86ある国立大学などを対象に、各大学が設定した中期目標の達成状況を評価している。NHKニュースによると、中期的な評価は2回目で、今回は2010年度から15年度の期間で調査、分析した。
評価方法は、教育や研究、業務運営など8分野で、「非常に優れている」「良好である」「おおむね良好である」「達成状況が不十分である」「重大な改善事項がある」の5段階。
全8項目を通して、群馬、東京学芸の2つの大学のみが、業務運営の分野で最低の「重大な改善事項がある」と評価された。2004年度から09年度を対象にした1回目の評価では、全ての項目を通じて最低評価を受けた大学はなかった。
群馬大に対しては、付属病院で腹腔鏡手術を受けた患者が相次いで死亡した事故について触れ、「適切な要因分析や病院長への報告がなされることなく手術が継続して行われていたことがあり、特定機能病院の承認が取り消されるという事態に至った」と指摘。評価理由として、「医療安全管理体制に抜本的な改善が必要と判断される」ことを挙げた。
また東京学芸大の評価では、2015年に付属高校で起きたいじめで、「事態の把握が遅れたことに加え、発覚後も関係生徒に対する事実確認が不十分で、高校の対応が不適切であった」と説明。「いじめという重大事態への対応で法人ガバナンスが欠如していた」と、抜本的な改善の必要性を指摘した。
■外部諮問機関、クラウドファンディングが高評価
一方で、同じ業務運営の分野で最高ランクに評価されたのは13大学。優秀な人材確保のためにほぼ全教員に年俸制を導入した帯広畜産大学、海外の有識者らでつくる外部諮問機関を設置した神戸大学、地域に必要な人材育成を図る学部を新設した高知大学などが名を連ねた。
また財務の分野では、東京芸術大が、クラウドファンディングを活用した壁画復元プロジェクトで、唯一の最高評価を得た。「支援金調達と同時に、復元事業の文化的意義を広く周知する効果も得られた」と評価されている。
各分野で、最高・最低評価を受けた主な大学は以下の通り。
※( )内は該当する大学数。業務運営の改善・効率化以外は最高評価のみ
▽教育=該当なし
▽研究(5)
東京外語:言語文化基礎資料等の情報資源化
東京工業:他機関との連携による研究の推進
▽その他(社会貢献・国際化など) (1)
東京芸術:早期教育プロジェクトの実施
▽業務運営の改善及び効率化
【非常に優れている】(13)
帯広畜産:高い目標の早期達成に向けた学長のトップマネジメント
神戸:学外者の意見の教育研究体制への反映
【重大な改善事項がある】(2)
群馬:付属病院での相次ぐ死亡事故
東京学芸:付属高校でいじめ事案
▽財務内容の改善(6)
山形:研究体制の強化による外部資金獲得
東京芸術:クラウドファンディングを活用した壁画復元プロジェクト
▽自己点検・評価及び情報提供(7)
佐賀:佐賀大学版IRを活用した大学運営
熊本:教職協働組織の設置による大学情報の一元的な収集・分析・活用
▽その他業務運営(5)
三重:環境マネジメントの推進と水平展開
室蘭工業:情報セキュリティ及び事業継続マネジメ ントシステムの国際認証の取得
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