30代から不妊治療を始め、5年の不妊歴を経て体外受精で妊娠したという「猫野きなこ」さんは、「きなこ猫の不妊活ブログ」というブログで、「妊娠菌」という言葉について自身の経験や想いをつづっている。ハフポスト日本版では猫野きなこさんに許可を得て、ブログ内の漫画を転載させてもらった。
猫野さんによると、妊娠菌とは「妊婦に接したり、妊婦が触った食べ物や物をもらうと妊娠しやすくなるというジンクス」のことで、医学的根拠は一切ないとされているという。
人気フリマアプリ「メルカリ」に妊娠菌が付着した白米が売られていたことでもその言葉が話題になった。
不妊に悩んできた猫野さんは「妊娠米」のようなビジネスをしていたケースは当然「言語道断」としながら、「悪気なくいい意味」で妊娠菌という言葉を使っている女性に対する違和感を語っている。
●「妊娠菌置いていきます」という「励まし」への違和感
猫野さんは、妊活中に利用したインターネットサイトで、妊娠することができた女性たちの情報投稿の中に「妊娠菌置いていきます」という言葉をたくさん見たとつづる。
単純に、妊娠初期の症状などを知りたかっただけなのに、この文末の「お祈り」は何なんだろうか。
「『妊娠菌置いていきます』というメッセージを読んで『幸せにあやかりたい」』と素直な人は思うのでしょうか…」と違和感を表現した。
●「妊娠菌」というマウンティング言葉
妊娠に成功した女性たちの、妊活中女性への「妊娠菌置いていきます」。
猫野さんは「私には簡単に妊娠できた人が妊娠できない人に使うマウンティング言葉としか思えませんでした」という。
「朝日現代用語・知恵蔵2017」では「マウンティング」について以下のように説明されている。
サルなどの動物が個体間で自分の優位性を示す行為になぞらえ、女性同士が容姿やファッション、仕事や出産など様々な場面においてお互いに格付けし合い、自分の優位性を誇示することを「マウンティング」と呼ぶ。そのようにマウンティングをする女性を「マウンティング女子」という。
妊娠菌という言葉を使ってマウンティングする「成功者たち」に対して猫野さんは、当時の気持ちを表す漫画イラストの中で「この脳内お花畑妊婦どもは…」と自身の戸惑いを記した。
また「中には苦労して妊娠した人も(妊娠菌という言葉を)使っていましたが、『そういう人こそ使ってほしくないのにな』と思ってしまいました」とその心情をつづった。
●「励まし」を不愉快に感じてしまう人がいることに気づいて欲しい
猫野さんは、そういった「マウンティング言葉」に対して「その女性が『励まし』といういい意味で使っていることはわかっていますが、不妊歴が長い私はそんな風にひねくれた取り方をしてしまいます」と率直な想いを書いた。
また、お参りやお守りなどの他の風習には感じない不快感をなぜ感じてしまうのかについて考察し、「素人が厄払いを見よう見まねでして『いいことをしてあげた』と思っているような感覚」が要因なのではないかと語った。
●誰だって心の余裕が欲しい
猫野さんは、マウンティングされた気分になってしまう妊活中の女性の気持ちを以下のように書き、思いやりや想像力を持ってほしいと呼びかけた。
本当は誰だって妊娠した知らない誰かを祝ってあげられる位、妊活中に心の余裕が欲しいです!
だけどそれができないほど、追い詰められている不妊の女性はたくさんいます。
妊娠できた女性には『妊娠菌』という言葉で、妊活中の誰かを嫌な気持ちにさせている可能性があることを知ってほしいです。
(「妊娠菌」という不愉快なマウンティング言葉が嫌いー「きなこ猫の不妊活ブログ」より 2017/6/7)