生理用品不足を解消へ アメリカ連邦刑務所の新規則とは?

刑務所内で、生理中の女性たちは過酷な状況に置かれてきた。
Menstruation sanitary pad for woman hygiene protection. Critical days. Medical conception.
Masanyanka via Getty Images
Menstruation sanitary pad for woman hygiene protection. Critical days. Medical conception.

服役中の女性受刑者たちに必要なタンポンやナプキンを無料で提供するよう改善する新規則を、アメリカ連邦刑務局が発行した。

連邦刑務所では、すでにナプキンやタンポンは無料で配布されている。しかし数量に限りがある上、配布の状況は刑務所ごとに異なる。

「女性受刑者が使える生理用品は通常必要な数を下回っている」と活動家たちはこれまで訴えてきた。生理用品が足りない場合、受刑者たちは手持ちのわずかなお金を使って刑務所の売店で生理用品を購入するか、刑務官に追加の生理用品を供給するように嘆願しなければならない。

連邦刑務局のジャスティン・ロング広報官によると、今回発表した新規則には、女性受刑者が2種類のタンポンと2種類の羽根つきナプキン(それぞれレギュラーサイズとスーパーサイズ)、そしてパンティーライナーから好きなものを選べるよう明記されている。

この新規則は、コリー・ブッカー(民主党)、エリザベス・ウォーレン(民主党)、カマラ・ハリス(民主党)、ディック・ダービン(民主党)が7月11日に国会に「Dignity for Incarcerated Women Act(女性受刑者の尊厳法)」を提出した後、1カ月も経たないうちに発表された。

「女性受刑者の尊厳法」の法案は連邦刑務所に、無料の生理用品配布だけでなく、妊娠中の受刑者に対する手かせ・足かせや独房監禁の禁止、母親受刑者が子供たちとコミュニケーションを取りやすい環境づくりを求めている。

ロング氏によると、新規則はまだ計画段階の覚書であり、法制化にはまだしばらく時間がかかる。

ブッカー議員はハフポストUS版に対し、覚書を歓迎するが「義務化されるまでは、単に紙に書かれた言葉にすぎない」とコメント。連邦刑務局が全刑務所で新制度を実施するかどうかを注視していく、と述べた。

アメリカでは、受刑者のほとんどは男性だが、女性受刑者の数もここ数十年で増えている。新制度は1万2747人いると見られる連邦刑務所の女性受刑者に適用される予定だが、ほとんどの女性受刑者が収監されている、州刑務所や地方の刑務所は適用外だ。

■刑務所での生理をめぐる過酷な環境

コネチカット州ダンベリーの連邦刑務所で2年間服役した「女性受刑者・前女性受刑者たちのための評議会」の設立者、アンドレア・ジェームス氏にとって、刑務所での生理は恐怖だった。

供給されていた生理用品は小さな薄っぺらいナプキンで、大人の女性に十分な量ではなかった。ナプキンはトイレの床に置かれた木箱に入れられており、木箱が空になると、女性受刑者たちは刑務官に新しいナプキンを入れてくれるように願い出なければならない。ジェームス氏は、ナプキンを裂いて手作りしたタンポンを服役中に使っていた。

大手ブランドのタンポンは刑務所の売店に売られていたが、ほとんどの女性にとって高価であり、手が届かなかった。

「私たちに支払われる賃金は1時間あたり12セントでした。女性たちはそのお金を、子供に電話をするために貯めていました」

経血で洋服やシーツを汚すこともあり、生理は毎回ストレスだったという。

「とても野蛮な環境でした。刑務所に収監されるという、それだけでつらく苦しい状況で、女性受刑者たちは男性の刑務官に生理用品を求めるという屈辱を味わわなければいけないのです」

ジェームス氏の証言以外にも、刑務所での生理を巡る環境が悪いことを指摘する報告がある。

ニューヨーク州連邦刑務所の2015年レポートでは、調査した女性の半数が毎月生理用品が足りていないと回答した。必要な量を入手するために、女性受刑者たちは医療許可の申請が求められた。2013年に閉鎖されたある刑務所では、与えられた以上の生理用品が必要な場合、女性たちは管理官にバッグに詰めた使用済みのナプキンを見せなければならなかった、とも伝えられている。

レポートを作成した、ニューヨーク矯正協会・女性服役者プロジェクトのディレクター、ゲイル・スミス氏は、「服役中の全ての女性が生理用品を使える環境は、彼らの尊厳のためにとても重要なことなのです。生理用品を手に入れるために嘆願したり、屈辱的な思いをしたりすべきではありません」と、コメントしている。

■ 広がる「生理の平等化」という考え

生理と平等化についての本の筆者、ジェニファー・ウェイス・ウォルフ氏は、多くの場合、問題は刑務所に生理用品の予算がない、もしくは十分な数量が確保されていないことではなく、生理用品を手に入れるための複雑な手続きだと話す。

「これは女性たちを支配するパワーゲームなのです。それに生理が使われています。私たちは、女性服役者に十分なタンポンやナプキンが供給されていないと何度も耳にしてきました。パワーゲームが原因で、生きていくために必要不可欠な製品が入手できない状況は、人間の健康と尊厳に関わる問題です」

ウェイス・ウォルフ氏は、今回の連邦刑務局の新制度は、生理を「男女平等」の問題として捉えようという最近の動きに沿った大きな改善だと考える。

「多くの州や市で、生理用品に関係した法案を導入が活発になっています。学校やホームレスシェルター、矯正施設で、生理用品を提供しようとする動きがあります。生理の平等化は、議会でも社会でも支持される問題だとわかってきました。所属政党に関係なく取り組まなければいけない問題です」

ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。