スペイン・カタルーニャ州の独立問題、なぜEUはあんなにも沈黙していたのか

「#恥を知れEU」というハッシュタグが、SNSを賑わせた。
Yves Herman / Reuters

EUはなかなか重い腰を上げようとしなかった。

スペイン北東部カタルーニャ州で10月1日に行われた住民投票は、同国を立憲制上のかつてない危機に陥れている。これを受けて4日、欧州議会がフランス・ストラスブールで緊急会議を行った。

カタルーニャ問題をめぐる連日の侃々諤々とした議論に対して、EU側がようやく沈黙を破ったかたちだ。投票後すぐには、いかなる国家元首も、政府も、EUの各種機関も、国際的に非難を浴びたスペイン警察による住民への数々の暴力的対応に対して、コメントをしなかった。

唯一メッセージを発したのはベルギーのシャルル・ミシェル首相。首相は自身のツイッター上で「あらゆる暴力」を断罪し、「政治的な対話」を訴えた。

「暴力は決して答えにならない!私たちはあらゆる暴力を許さず、政治的な対話を改めて訴える」

投票翌日の2日になってやっと、欧州委員会はすべての関係者に「対話を通した解決」をするよう呼びかけた。また「暴力は決して政治的手段にはなりえない」としながらも、「スペインの憲法を鑑みれば、昨日のカタルーニャの投票は合法ではなかった」と見解を示した。

とはいえ欧州委員会は、スペイン警察による暴力をとりわけて非難することはなかった。ただ欧州議会の議員のフィリップ・ランベール氏は、この危機は「ブレグジット(EUからのイギリス脱退)以上に、ヨーロッパの統合という精神そのものに悪影響を及ぼしかねない」と評した。

独立投票が行われた1日、#ShameonEU(恥を知れEU)というハッシュタグがSNS上に咲き乱れた。人々がとりわけ怒りを示したのは、警察による武力制圧に関するEU側の支援の欠如だ。3日にはそれが元で、サッカークラブのバルセロナがクラブを一時閉鎖するなど、州全土で大規模なストライキが起こっていた。

欧州議会の多くの議員が、投票に際して行われた「乱暴さと警察による暴力」を非難した一方で、「EUの仲裁」をともなった「国際的な仲介」を訴えかける議員もいた。

4日、欧州委員会のフランス・ティメルマンス第1副委員長は次のように断言した。「対話をし、語り、袋小路から脱する道を見つけ、スペインの立憲制に沿って作業していく、大いなる時が来たのです」

「ドミノ倒し効果」への恐れ

しかしEUの態度はなぜこんなにも控えめなのだろうか。それはEUが、カタルーニャと同様の希望がくすぶるその他の地域に、独立の門戸を開放したくないからだ。

仏モンペリエ大学のエマニュエル・ランゴート助教は、「この"国民国家ヨーロッパ"という考え方は、各々が強い地域から成り立つヨーロッパを構築するという考えと、逆をいくものだ」と述べている

EUとしては、このカタルーニャ独立問題をきっかけに、スコットランド、北イタリア、フランドル地方、さらにはコルシカ島やバスク地方にも広がりかねない「ドミノ倒し効果」を何とか避けたい考えだ。

英紙「ガーディアン」も次のように述べている。「カタルーニャは唯一のケースではない。ヨーロッパの至る所で、それぞれのアイデンティティを定義し直し、中央国家を拒絶しようとする動きが多数生じている」

各国リーダーの「内政干渉」と呼ばれることへの懸念

カタルーニャのカルラス・プチデモン州首相は、独立問題に関してEU側に仲介役を務めるよう求めている。しかし仏紙「ル・モンド」によると、欧州委員会は本件はスペインの「内部事情」であるとして、その申し出を拒否している。「ル・モンド」はさらに続ける。

「ヨーロッパの指導者の大部分が、内政干渉と呼ばれることを恐れて、今回の独立投票に関していかなる公式の発言もしなかった。マクロン大統領は、スペインのラホイ首相だけがフランスにとって唯一の交渉相手だと語った」。ラホイ首相陣営の議員は別のところで、スペインは「監督」も「仲裁」も不必要だと強調していた。

仏メディア「RFI」も指摘しているように、欧州理事会、欧州議会、欧州委員会の各トップ(ドナルド・トゥスク氏、アントニオ・タイヤーニ氏、ジャン=クロード・ユンケル氏)はいずれも中道右派で、政治思想的にラホイ首相と近いとされている。

4日に行われた緊急討議会も、当初はエコロジストを中心とした左派勢力によって「カタルーニャにおける平和な市民に対する警察の暴力」と題されていたが却下され、最終的に「スペインにおける憲法、法治国家、基本的権利。カタルーニャの最近の事件と照らし合わせて」となった。表現は明らかに踏みとどまったものになっていた。

ハフポスト・フランス版より翻訳・加筆しました。

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