衆院選の序盤情勢調査、各党の反応は? 希望の党、安倍首相への批判に比重移す

各党の戦略には変化も見える。
各政党のマニフェスト
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朝日新聞社

衆院選の序盤情勢調査、各党の反応は? 戦略に変化も

朝日新聞など各紙が12日付朝刊で衆院選の序盤情勢調査を報じたことを受け、各党の戦略には変化も見える。「堅調」と報じられた自民党は引き締めを図る。伸び悩む希望の党は、安倍晋三首相への直接的な批判に比重を移しつつある。

自民党の二階俊博幹事長は12日、全ての自民候補に緊急通達を送り、「報道とは逆に情勢の悪化を招いている候補が見られる」と戒めた。通達では、橋本龍太郎首相が退陣に追い込まれた1998年参院選などを念頭に、過去の選挙で事前予測と異なる結果があったことを強調。「緩み」への警戒を呼びかけている。

安倍首相はこの日新潟県の6選挙区を回った。情勢調査で勢いがあると報じられた立憲民主党に言及し、「菅内閣はひどかった。菅さんたちが作ったのが立憲民主党だ」と同党最高顧問の菅直人元首相らを名指しで批判した。

一方、伸び悩みが報じられた希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は12日の街頭演説で、これまでよりも森友・加計学園問題に時間を割いた。政権の情報公開の不十分さを訴え、「総理大臣である安倍晋三氏はいまだに指示を出していない。都合が悪いからと思われても仕方がない」と批判のトーンを上げた。

■明暗が分かれた野党勢

報道各社が報じた衆院選序盤の情勢調査。再編劇があった野党勢は明暗が分かれた。堅調な与党は緩みを警戒する一方、選挙後への思惑や懸念も広がった。

「このままでは何も変わらないどころか、白地小切手を自民、公明党に渡すような流れになってきている」。12日の街頭演説で政権批判のトーンを強めた希望の党代表の小池百合子・東京都知事は調査結果について、記者団に「まだ序盤。しっかり戦っていく」と言葉少なに語った。

報道各社はこの日、衆院選序盤の情勢を「自民堅調 希望伸びず」(朝日新聞)、「自公300超うかがう 希望伸び悩み」(毎日新聞)、「自民単独過半数の勢い 希望伸び悩み」(読売新聞)などと報じた。自民に次いで多くの前職を候補に立てた希望には、いずれも厳しい結果だった。

調査が浮き彫りにしたのは、野党候補の乱立で「反自民」票の行き先が分散した現状だった。朝日新聞の10、11日の調査では、安倍政権の5年間を「評価しない」(41%)とした人の投票先は、立憲民主党27%、希望26%、自民18%、共産14%などに分かれた。

「自民・公明」「希望・維新」「共産・立憲・社民」の三つの勢力が争う選挙区は全体の6割近い162。39の選挙区では、希望が立憲に対立候補をぶつけた。民進の前原誠司代表が「どんな手段を使っても安倍政権を止めなければいけない」と言って進めた希望への合流が、「野党側が乱立しているわけだから、与党にとって有利」(松井一郎・日本維新の会代表)な状況を生んだ。

共産の志位和夫委員長は12日、名古屋市での街頭演説で、「希望の党が野党共闘を分断し、壊した。この漁夫の利を一時的に自民党が得ているに過ぎない」と訴えた。前原氏は朝日新聞の取材に対し、「緊張感をもてるような状況をつくるために頑張ります」と繰り返すだけだった。

希望の樽床伸二選対事務局長は「(野党は)『安倍政治ノー』で一致している。登る道は違っても頂上が一緒ならいい」と話すものの、選挙戦の構図自体は変わらない。希望側は政権批判を強めることで局面打開を図る方針だ。

一方、「勢いをつけている」と報じられた立憲は、代表の枝野幸男氏を前面に勢いの維持を図る。枝野氏は記者団に「まだ(党を)立ち上げて10日で、伸びしろはある。我々が大きく伸びることで1強体制を崩していく。その責任を負っている」と強調した。

■自民、緩みを警戒する声広がる

「堅調」と報じられた自民党には、緩みを警戒する声が広がる。首相に近い前職は「必ず揺り戻しがある」、参院幹部も「実感とかけ離れている。甘くない」と語る。

懸念は、安倍内閣の不支持率が下がっていないことだ。朝日新聞が3、4日に行った世論調査では支持率は40%、内閣不支持率は38%と拮抗(きっこう)している。

石破茂元幹事長は記者団に「政権奪還の時に感じたような、『自民党頑張ってね』という声はほとんど聞かない」と指摘。閣僚経験者も「誰も、総理が正しいなんて言っていない。野党の失点だ」と分析する。

それだけに政権幹部は野党批判を緩めない。

首相が12日の街頭演説で批判の矛先を向けたのは、野党のうち唯一「勢いがある」と報じられた立憲民主党。枝野氏のほか、菅直人元首相、福山哲郎幹事長らの名をあげ、「我々が政権奪還前のあの時代を思い出して欲しい。あの時のメンバーが別の政党を作った。本質を見ていこうじゃありませんか」と声を上げた。

菅義偉官房長官も都内の街頭演説で、安全保障法制を容認する「踏み絵」を踏んで希望の党入りした元民進党議員の対応を批判。「絶対に廃止すると、野党共闘していたが、看板政策を投げ捨ててまで当選したいと、希望に行った。信用できない」

一方、自民の堅調ぶりに、憲法9条の改正に慎重な公明党からは選挙後を危ぶむ声が漏れる。党幹部の一人は「自民は憲法で押してくる。国会での発議に向かって推進力がつく」と言う。

首相にとって、9条改正を含む改憲論議に前向きな希望や日本維新の会が一定の議席を得れば、さらなる追い風となる。維新や希望との連携が、改憲をめぐって公明に圧力を強めるカードとなるからだ。

今回、自民は公約の柱として「自衛隊明記」など改憲4項目を掲げた。党憲法改正推進本部の幹部はいう。「公約に掲げて選挙に勝てば、民意を得たということ。余裕を持って勝ったとなれば、なおさらだ」

(朝日新聞デジタル 2017年10月13日 09時02分)
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