「人間は退屈な作業から解放される」 アウディが量産車初の自動運転レベル3(東京モーターショー2017)

ハンドルから手を離すことが可能な新型A8とは?
東京モーターショーで挨拶をするアウディ・ジャパンの斎藤徹社長(10月25日撮影)
東京モーターショーで挨拶をするアウディ・ジャパンの斎藤徹社長(10月25日撮影)
Kenji Ando

ドイツの自動車メーカー「アウディ」は、10月28日から東京ビッグサイトで開かれる東京モーターショーに、量産車としては初めて「レベル3」と呼ばれる高度な自動運転を可能にした「アウディA8」の新モデルを出品した。

報道陣向けに事前公開された25日のプレスデーには、アウディ・ジャパンの斎藤徹社長が会場であいさつ。渋滞時の高速道路での自動運転を念頭に「自動運転技術が人間を単調で生産性の低い作業から解放し、より自由な時間を生み出していく」と話した。

これまで実用化されてきた自動運転機能は、人間が常にシステムの動作状況や、外界を監視する必要がある「レベル2」だった。しかし、「レベル3」では全ての操作をシステムが実施。運転手はハンドルから手を離し、テレビを見たりメールをチェックするなど運転以外の作業をすることができる。システムが介入を求めたときに初めて運転手はハンドルを握ることになる

東京モーターショーでお披露目された新型「アウディA8」のロングタイプ
東京モーターショーでお披露目された新型「アウディA8」のロングタイプ
Kenji Ando

ただ、「アウディA8」のレベル3は極めて限定的で、中央分離帯のある高速道路を、比較的混雑している時速60キロ以下で走行している場合のみだ。今秋にヨーロッパ、日本では2018年の販売を目指している。さらにハンドルから手を離しての運転は、各国の法律で認められてないため、法改正が必須など乗り越えるハードルは多い

自動運転に対しては拒否反応を示す自動車ファンを多いことを考慮してか、斎藤社長は「アウディは、車を運転する行為の意味や楽しみを否定するものではなく、完全自動運転の時代になっても操る楽しさのあるスポーティなクルマを作り続けるつもりです」とフォローしていた。

斎藤社長の主な発言は以下の通り。

■渋滞時に自動運転に任せることで「25時間目」が生まれる

全世界で12億台以上の車が走る現代社会では、過密化する都市の渋滞や経済損失、それによる事故などがますます増大しています。常に外界と繋がり忙しい毎日を送る現代人にとって、毎日の通勤路の運転や都市間の長距離移動は、退屈で無駄な時間と感じられるでしょう。そうした状況では自動運転システムが運転を代行すれば、そこで生まれた時間を仕事や同乗者との対話、リラックスすることなどほかの有意義な活動に使えます。

アウディが「新型A8」で搭載した、高速道路における渋滞時に同一車線内での自動運転を行う「AI トラフィックジャムパイロット」を開発したのは渋滞中に費やす時間をユーザーに有効に使っていただけると考えたからです。アウディでは、こうして生まれる時間を「25時間目」と呼んで、どのような過ごし方が可能で有意義か、研究を重ねてきました。

新型『A8』は、パークパイロットやガレージパイロットといった自動運転機能を含め40種類ものドライバーアシスタントシステムを搭載しています。レベル3の『トラフィックジャムパイロット』の導入には、日本を含むほとんどの国でシステムが人間に代わって運転するための法的な整備が必要です。

アウディはそれに向けて積極的な働きかけを行っています。なぜなら、アウディはこうした自動運転技術が事故を減らして車の安全性を高めることはもちろん、人間を単調で生産性の低い作業から解放し、より自由な時間を生み出していくという、自動車のモビリティの新しい可能性を信じてるからです。

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