ペットが繁殖しすぎて、飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」が問題となっている。
神戸市東灘区の市営住宅で、賃貸契約に反して猫を飼い強制退去処分となった女性の部屋には、53匹もの猫が放置されていた。神戸新聞NEXTなどが報じた。
部屋は市営住宅で、2006年に入居。子ども3人と4人暮らしだった。契約でペットの飼育は禁止されていたが、2015年ごろから「ネコのふん尿で悪臭がする」と近隣から苦情が出るようになった。
市は女性に繰り返し対応を求めたが、状況は変わらず、16年10月に明け渡しを求めて提訴。17年1月にこの訴えを認める判決が出て、4月に強制執行に踏み切った。
毎日新聞によると、室内には去勢されていない53匹の猫と数匹の死骸があり、ふん尿で畳が腐るなど荒れ果てていた。
世話ができなくなった女性一家は、そのまま置き去りにして別の場所で生活。市は餌や水を与えに来ることもあったとみているという。猫は市民グループが引き取った。
市の担当者は毎日新聞の取材に対して、「繁殖しすぎたペットを飼育できなくなる『多頭飼育崩壊』の状態だ。悪質な事例が続けば、契約だけでなく市営住宅条例にもペット禁止を盛り込み、罰則を設けることも検討したい」と話している。
■多頭飼育崩壊とは
コトバンクによると、多頭飼育崩壊はネコや犬などのペットが過剰に繁殖し、適切に飼育できなくなるほど増えてしまい、飼い主の生活が破綻すること。
環境省が全国115自治体を対象に実施した2016年度調査では、ペットの飼育で生活環境が損なわれていると近隣住民から複数の通報があった事例は約2200件。
このうち、多頭飼育の目安とされる10匹以上が約3割で、50匹以上も100件を超えた。
中には、事件に発展するケースも。相模原市南区のマンションに住んでいた女性が、排泄物などを放置したまま13匹の猫を飼育して虐待。そのうち死亡した11匹の死骸を埋めたとして、6月に動物愛護法違反(虐待)などの疑いで逮捕された。
こうした事態を受けて、環境省は2018年度から自治体向けに「多頭飼育崩壊」に対処するためのガイドラインを作成する方針を決めている。