韓国・済州島で初のプライドパレード 許可⇒取消⇒取消の取消でやっとの開催

開催にこぎつけるまで、困難つづきだった。
Rainbow flag over blue sky.
Rainbow flag over blue sky.
Adam Korzekwa

韓国西南部の済州島で10月28日、第1回目となるプライド・パレード、クィア・カルチャー・フェスティバルが開催された。

今回のパレードには主催者発表で約1000人が参加したが、決定から開催までは多くの難関を乗り越えなければならなかった。

聯合ニュースによると、済州クィア・カルチャー・フェスティバルの組織委員会が結成されたのは8月28日のことだ。済州市庁前での記者会見で「性的マイノリティはあなたがたと同じ人間なのに、異性愛者ではないという理由だけで様々な差別と苦痛に晒されてきた」「狭くて人間関係が濃密な済州では、性的マイノリティの人権は保護されるどころか排斥されてきた」とし、パレード開催の目的を地元での差別とヘイトの撤廃だと明かした。

しかし、開催場所の選定で難航を強いられた。地元紙の漢拏日報によると、パレードは当初、済州市朝天邑の咸徳海水浴場での開催を目標としていたが、地元住民の反対で断然せざるを得なくなった。

咸徳の町内会関係者は「性的マイノリティへの偏見はない」としつつも、「住民が散策路として使っている場所」「住民感情にそぐわない部分がある」と反対理由を述べた。

組織委員会は、開催場所を済州市中心部の新山公園に決め、9月27日、市に公園使用許可申請をした。市は翌28日に許可を出した。

ところが、ニューシスによると10月17日になって、市は許可を取り消した。苦情が多数来ているとの理由で、請願調整委員会での議論を行った結果だと説明した。

これに対して組織委員会は、決定を不服として済州市を相手取り、使用許可の取り消しを取り消すことを求めて提訴した。

ソウル、釜山、大邸で開催されたプライド・パレードに対して、保守系、プロテスタント系団体が激しい反対運動を展開しているが、済州も例外ではなかった。

地元の16の団体は「公序良俗と済州の地域感情に反しており、淫乱だ」との理由を挙げ、パレード開催に対する反対運動を始めた

しかし、司法はパレード組織委員会側の訴えを認めた。

済州日報によると、済州地裁はパレード前日の10月27日、済州市の措置が公共の福祉に重大な影響を及ぼす懸念があると見なすだけの資料がないとして、使用許可の取り消しの執行停止を命じた。

韓国日報によると、28日午前11時、新山公園には大学生や性的マイノリティ父母の会などによる30あまりのブースが立ち並び、ステージではトークショー、ライブなどが開かれた。

一方、パレードに反対する団体は済州市庁前で集会を開催した。警察は万一の事態に備え警察官300人を動員して警備に当たらせたが、両者間での衝突はなかった。

パレード参加者たちや反対する人たちは何を思う

パレードに反対する人々は「エイズ患者の9割は男性同性愛者」「同性愛祭りを許可した済州市は青少年エイズ拡散の原因」「島民感情と性的倫理を崩壊させる同性愛クィア集会に反対する」などと書かれたプラカードを持って沿道に沿ってパレードを追走し、参加者に罵声を浴びせかけ続けた。

パレードに参加した地元出身の20代男性は「済州島は狭いコミュニティで誰に見られるかわからないから怖い」としつつも、「ソウルや大邸で開かれるパレードを見て羨ましく思っていた」と参加を決意した思いを述べた。

パレードに反対する人々については「済州島は、歴史的経緯から自分の意見を社会運動で表明することがはばかられる土地柄」「(反対の先頭に立っている)クリスチャンだが、地元の人ならあんなことはしない、言葉のアクセントや立ちふるまいを見る限り、おそらく内地(韓国本土)から飛行機に乗ってやって来た人たちだろう」と述べた。

韓国統計庁の人口住宅総調査(2015年)によると、済州島の全人口に占めるクリスチャン(プロテスタント)の割合は10.0%。ソウルの24.2%はもちろん、全国平均の19.7%より低く、全国で最も少ない

組織委員会はパレード開催後に発表した声明で、「驚くほどの連帯を経験した」と明かした。参加者、ボランティアに加え、支援団体、弁護士、通訳、近隣住民、商店、警察、メディアのおかげでパレードが平和裏に行われたとして、「ポクサク・ソガッスダイェ」(済州の方言で「お疲れ様でした」の意)と感謝の意を表した。

韓国では、2018年5月19日に全州市でも第1回となるクィア・パレードの開催が予定されている。

(翻訳・編集 植田祐介)

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