2017年11月27日 12時00分 JST | 更新 2017年11月27日 12時02分 JST

年賀状でビジネスを成功させる、たった2つの方法

インターネットやベンチャーなど、最先端にいるビジネスパーソンほど、アナログな手法で大きなビジネスチャンスをつかんでいることをご存知でしょうか。

意外に思われるかもしれませんが、年賀状をはじめ、アナログな手書きコミュニケーションを大切にする起業家は数多くいます。

大手企業での法人営業を経て、15人ほどのベンチャー企業に参画し、そして2014年にレンタルスペース事業「スペースマーケット」を起業した重松大輔さんもそのひとり。重松さんは直筆の手紙を突破口にして大口取引を成功させたことから、アナログコミュニケーションの重要性に気付いたそうです。

年賀状を書く時のポイント、そしてアナログコミュニケーションならではのメリットなど、「ビジネスを成功させる」年賀状の秘訣について、重松さんに聞いてみました。

鈴木久美子 / GEKKO

重松大輔(しげまつ・だいすけ)

1976年千葉県生まれ。千葉東高校、早稲田大学法学部卒。 2000年NTT東日本入社。主に法人営業企画、プロモーションなどを担当。 2006年、株式会社フォトクリエイトに参画。 一貫して新規事業、広報、採用に従事。国内外企業とのアライアンス実績多数。 2013年7月東証マザーズ上場を経験。2014年1月、株式会社スペースマーケットを創業。お寺、野球場、古民家、オフィスの会議室、お化け屋敷などユニークなレンタルスペースのマーケットプレイスを展開。2016年1月、シェアリングエコノミーの普及と業界の健全な発展を目指す一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し代表理事に就任。

■ ビジネスにつながる年賀状の作り方、2つのポイント

――ご自身が営業をする上で、また、新しいビジネスを展開する中で、年賀状をどのように活用してきたのでしょうか。

もともとは筆無精だったのですが、新卒で入ったNTT東日本時代に、取引先へのメールや文書の書き方を、先輩や上司から徹底的に指導されました。営業用の年賀状も200〜300枚くらい出していましたから、この時の経験が、アナログコミュニケーションによる営業術に生かされています。

その後、ベンチャー企業の写真サービス会社「フォトクリエイト」に参画した時にブライダル部門を立ち上げ、年賀状などで結婚報告をするサービスを始めたら、これが大きな成功を収めました。はがきって、こんなに大切にされるものなんだと実感しましたね。

現在はイベントスペース、住宅・古民家やお寺、球場など、さまざまな遊休スペースを借りてパーティーやイベント、会議などができるレンタルプラットフォームの会社「スペースマーケット」を経営していますが、年賀状や手書きの手紙などのアナログコミュニケーションを生かして、ビジネスを大きくすることができています。

鈴木久美子 / GEKKO

——年賀状を書く上で、ビジネスにつなげるポイントは何でしょうか。

ポイントは2つあります。年賀状を送る最大のメリットって、送る相手との関係性を簡単につなげられることなんです。

1つ目のポイントとして、私はまず年賀状に「手書きの一言を入れる」ことを大事にしていました。印刷された定型文だけだと、受け取る側も物足りないですよね。手書きの文章を入れると、想いがこもります。

「これからの抱負」とか、「将来をあなたと一緒につくっていきたい」といった想いとか、普段の業務上のメールではなかなか書けないことも書けるのがいいんです。

もう1つは、これまでの1年を振り返ることができる写真をできるだけ多く入れること。仕事でも、プライベートでも自分がさまざまな活動をしてきた、ということが伝わるように、多くの写真を組み合わせるんです。

例えば、海外で私が講演している写真もあれば、子供と楽しく遊んでいる写真も入れる。受け取る側が「この人はこの1年でこんなに面白いことをしてきたんだな」と思ってくれるように、毎年どんな写真を入れるのかを考えています。

――相手に想いを伝える上で意識していることやフレーズ、テクニックなどはありますか。

「最近どうですか?」とか、「今度お会いしましょう」なんていう何気ないものでもいいのですが、「◯◯の件ではお世話になりました」「以前お話していた、あの店に一緒に行きたいですね」「実現しなかったあのプロジェクトを今年はもう一度復活させたいので、ご協力お願いします」といった、送る相手個人に向けた、「具体的で引っかかりのある一言」がポイントになります。それがお客様へ再アプローチするきっかけにもなりますし、新しいビジネスへと発展させる、重要な要素になるんです。

鈴木久美子 / GEKKO

――逆に、こういう書き方をして失敗した、といった経験はありますか。

「今年もよろしくお願いします」みたいな、定型文だけだとうまくいかないですよね。「この人には特別に書くことがないから」とか、「手書きだと面倒だよな」といって定型文に逃げず、一人ひとりに語りかけるように書くんです。私は今でも、プライベートを含めて150枚くらい年賀状を送りますが、150通りの「一言」を入れるように心掛けています。

――手書きの年賀状を送って、取引先やビジネスパートナーからどのようなリアクションがありましたか。また、どのような形でご自身のビジネスに結実しましたか。

再訪や会食のアポが取りやすくなりましたね。そこからビジネスに展開させるためのハードルが低くなります。営業でも、新規ビジネスを立ち上げる時でも、どんなことでもいいから口実をつくって接点を持つのが基本です。年の始めに年賀状であいさつするのって、ごく普通のことですし、受け入れられやすい。自然な形でつながりをつくる最高のきっかけにできるのが大きいですね。

■ 大きなビジネスチャンスをつかめたのは、直筆の手紙だった

――年賀状を送るなど、アナログなコミュニケーションが、ビジネスに役立つことを実感できたきっかけは何ですか。

フォトクリエイト時代、ある上場企業との大口取引がうまく進んでいなかった時に、手書きの手紙を送って一気に話を進められた、という経験があります。

役員レベルまではうまくいっているけど、半年経っても、1年経っても取引成立にならない。なぜかというと、その会社で最終意思決定権を持つ社長にまで、取引の話がなかなかたどり着かなかったからなんです。その社長は、表舞台には出てこないし、メールをしても返信が来ない。紹介してもらおうとしても、誰も引っ張り出すことができないし、会社の前で出待ちしてもうまくいかない。その社長と会う手段が全くありませんでした。

その時、フォトクリエイトに投資をいただいた方から「手紙を書いて、社長の自宅に送ってみませんか」と提案されたんです。こちらとしては、どんな手段を使ってでも社長にアプローチしたい。直筆の手紙と提案資料一式を、「必ずお読みください」というメッセージを添えて、会社情報として公開されている社長のご自宅に直接送りました。そうしたら、すぐに連絡が来て、取引が成立したんです。直筆の手紙の力と社長に直接届けるというアイデアが良かったんでしょうね。

ダイレクトに反応が返ってきて、しかも大きな成果を上げられたので、ビジネスパーソンとして、そして起業家、経営者としての自分のキャリアに大きな影響を与えた経験でした。

■年賀状こそ、「自分を目立たせる」有効なツールになる

――年賀状や手紙といったアナログツールをビジネスに使うメリットはどこにあるとお考えですか。

ビジネスパートナーや取引先との接点をつくる時に、こちらの要望やメッセージを確実に伝えられて他に埋もれない、ということなんです。電話や訪問でこちらが伝えたいことを全て伝えきることは難しいですし、メールでは他のメールと一緒に埋もれてしまい、差別化も難しい。

でも、年賀状や手紙だったら、コンパクトに伝えられるし、確実に届くんですよね。よっぽどのことがない限りはがきは裏面の内容を確認したり、手紙の封を開けたりするものですから。コミュニケーションのバリュー(価値)が全然違います。

私も社長になった今になって分かるのですが、手書きの提案書とか、手書きで書かれている年賀状をもらうと、「ちょっと会ってみようかな」と思うようになるんですよね。

年賀状って、期間中(※)は、52円で出せるじゃないですか。その金額の数千倍、数万倍のバリューを生み出すことができると思うんです。相手に伝えたいことや、自分がこんなことをしてきたという空気感をパッケージできるという意味で、これほど有効なものはありません。

※2017年12月15日(金)から2018年1月7日(日)まで、年賀はがきは52円で差し出すことができる。2017年12月14日以前、2018年1月8日以後に差し出す場合は、10円分の切手を貼り足す必要がある。

鈴木久美子 / GEKKO

——ビジネスを成功させる上で、デジタルファーストとなっている今の時代にアナログなコミュニケーションを取り入れる意義はどこにあるでしょうか。

セールスパーソン、経営者、起業家......どんな人であっても、ビジネスをする上で求められるのは、「目立ってなんぼ」だということです。これは今も昔も変わりません。どれだけ自分の存在を覚えてもらえるか、「あいつ面白いよね」と思ってもらえるか、なんです。営業成績アップ、社内での出世、人脈の構築、資金調達、魅力ある人材の採用、プロダクトの開発など、あらゆるビジネスのシーンで成功するためには、まず自分が目立つことなんです。

今の時代ですから、SNSなどデジタルツールもフル活用します。その一方で、年賀状で年始のあいさつをする、手紙を送る、イベントで会うといったリアルなコミュニケーションが、自分を目立たせる上で大きな意味を持つんです。意外と、デジタルとアナログの両方を使いこなせる人っていないんですよ。

私たちのレンタルスペース事業でも、古民家がイベントや会議の場所として引っ張りだこになっていますし、今インタビューを受けているこの空間のように、リノベーションされた古いアパートも、とても人気です。一周回って、古き良きツールが最先端のリアルになっているんですよね。年賀状のやりとりも、レンタルスペースで行われるイベントも、リアルなコミュニケーションという意味では一緒。リアルなコミュニケーションがリアルなビジネスにつながるんです。

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「これからビジネスを大きくしたい、と思っている人たちに知ってもらいたいのは、デジタルとアナログ、両方のコミュニケーションツールを使えば新しいビジネスも生み出せるし、面白いことができる人間になれること」と強調する重松さん。

手書きの一言を添えて年賀状を送ることを、重松さんは「微差」と表現します。ちょっとだけ工夫する、ちょっとだけ手間をかけてコミュニケーションを図る。そうした「微差」の積み重ねが、ビジネスでは「大差」になり、大きな成果を生み出す原動力になるのです。

たった1枚のはがきが、人とのつながりを強固にしてより大きなビジネスへと発展させるツールになる――そのことを実感するために、想いのこもった「一言」とともに、年賀状を送ってみるのはいかがでしょうか。