北朝鮮の馬息嶺(マシンニョン)スキー場に注目が集まっている。平昌冬季オリンピックを控えた「南北合同トレーニング」のため、韓国が調査団を派遣したからだ。
このスキー場は、2013年末、金正恩・朝鮮労働党委員長が肝いりで完成させた。「馬息嶺速度」というスローガンのもと急ピッチで工事を進めたとされる。
この馬息嶺スキー場を、ハフポスト日本版の記者が2014年9月に取材していた。記者は何を見たのか。写真レポートをお送りする。(吉野太一郎・ハフポスト日本版)
首都・平壌から道路をひた走ること約2時間半、北朝鮮南東部の江原道の山中にあるリゾートホテルに、一行は案内された。
「馬息嶺ホテル」
ホテル入り口のゲート
吹き抜けのエントランス
ホテルは、2013年12月31日から営業を開始した「馬息嶺(マシンニョン)スキー場」と併設された。
ホテルは、金正恩・朝鮮労働党第1書記(当時)の肝いりで建設され、着工からわずか7カ月で完工したという。
現地の国営メディアや看板などでは、建設現場や農業などあらゆる作業のスピードアップを呼びかける「馬息嶺速度」というスローガンが盛んに使われている。
ホテルは全120室ある。2等室に案内された。ツインで2人使用の場合、約190ドル。工事中の1等室は約250ドル、4人で使える家族部屋は280~290ドルとのことだった。
2等室
廊下
スキー場として10のゲレンデを備えているが、開業時に完成したコースは2つ。訪れた日も、あちこちで工事が進められていた。
7階からゲレンデを見る
工事作業員とみられる男性のグループ
「冬はスキー、夏は登山やホテル施設の利用者を想定している。外国人ではヨーロッパからの利用者が多い。日本から観光客が訪れたこともある」と、フロント係は話した。営業開始後は、海外メディアや外国大使館関係者を招待するなどして、1カ月で約1万人の宿泊客があったという。訪れた9月20日はオフシーズンということもあってか、宿泊客は4人だった。
フロント係
2階の売店には日本の発泡酒も並んでいた。
地下2階にはプールもある。
理髪店もある。番号を指定すれば好みの髪形にカットしてくれる。
フロント係や従業員はまっすぐ前を見て、質問には答えてくれる。しかし、必要最低限のことしか喋らない。まさに「北朝鮮の高級ホテル」だ。
北朝鮮にとって、馬息嶺スキー場とは...
当時、日本メディアに説明した北朝鮮の担当者は、ヨーロッパを中心に海外からの訪問者の出身国を列挙し、国際的なスキーリゾートであることを強調していた。
平昌冬季オリンピックの一部競技を馬息嶺スキー場で開催することを提案するなど、当時の報道からもオリンピックに期待して建設されたことがうかがえる。
核実験や弾道ミサイル発射実験などによる国際社会からの経済制裁に直面する北朝鮮。平昌オリンピックの南北合同練習を契機に「国際スキーリゾート」をアピールし、外国人観光客の誘致や外貨獲得につなげたいとの思惑があるとみられる。