泡を吹き、意識を失ったバスの乗客をみんなで救助。トルコ人の連携プレーがすごかった

「助け合いも、文句の言い合いも、なんでもすぐに始められるんです」

バスの乗客が口から泡を吹いて倒れ、意識を失った。すると、周囲の人たちが横になるスペースを用意。倒れた人の携帯で家族に連絡を取る人、救急車を終点に呼ぶ人...。

トルコの人々のテキパキとした対応を見て、イスタンブール在住の漫画家・市川ラクさんは「素晴らしい連携プレー」と感動したという。

2月27日、Twitterに投稿したところ大きな反響を呼んだ。

Twitter/Raku_ichikawa
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■マンガの作者に「トルコ人の人柄」を聞いた

ハフポスト日本版編集部では、このマンガを描いた市川さんにメールでインタビューした。

以下は、そのやり取りだ。

---バスで乗客が急病になったのを目撃するのは、いつごろの話でしょうか?

先週末、友だちの家からの帰り道だったので、2月24日の土曜日午後7時半くらいの車内でのできごとです。

---乗客の連携プレイが大変印象的ですが、こうしたことはトルコではよくあるのですか?

よくあります。道で転んだご老人を助けたり、というのはもちろんのこと、火事のときも、デモのときも。デモ参加者が警察隊から催涙スプレーをくらったときに、その道のアパートの上の階のひとがバスケットにペットボトル入りの水をつめて道路へ下ろしたりします。

同じ感じで、道で遊んでいる子どもにバスケットでメモと小銭を下ろし買い物を頼んだり。(おつりはチップとしてあげたり)他人でも、ちょっと喋ったら仲間になっちゃうというか。

助け合いも、文句の言い合いも、なんでもすぐに始められるんです。言い方は悪いですが、日本だと目的地に向かう途中に居合わせる人たち(他人)は、映画の背景みたいに考えてるひとが多いように感じています。トルコでは他人もちゃんと人間です。

---日本と比べてどう感じましたか?

私が暮らしたことがあるのは東海・関東だけですが、日本ではトラブルが起きることが少なすぎるので、急な状況変化に対応できないんだと思います。何もないのが普通だから、たとえば移動中携帯で音楽を聴いてたら、そこから頭をとっさに切り替えられるひとが少ない、みたいな。

トルコだと、どこでもトラブルだらけなので、たとえ携帯をみていようが、自分の部屋で無い以上そこまで集中することはないです。「それで瞬時に対応できるんじゃないかなあ」と、2年暮らしてみて感じています。

---病人の携帯電話を使って家族に連絡を取るのは、緊急時とはいえ、日本ではあまり見ない光景だと思いますが、どう感じましたか?

個人情報のアレコレが気になる行為ですが、トルコにはその感覚がまだ備わっていません(笑)。たとえば銀行で書類提出して口座を作ったときに、その書類に書いた番号に担当の職員からナンパメールが来ることがあります。

女性の職員だった場合は「日本人と友だちになってみたい!」みたいな感じでメールや電話が来ることが。もう慣れちゃったので、あるある~と思いますし、こういう非常時にはすごく良いですよね。

--- トルコ人の緊急時の一連の行動を見て、市川さんはどのように思いましたか?

めちゃくちゃ素晴らしいことだと思いました。みんながみんな、やるべきことをわかってて、淡々とこなしていたことがスゴイ。トラブルに慣れていらっしゃるので(笑)今なにが必要か、何をするべきか、すぐ判断できるんだと思います。

--- トルコでは近年、イスタンブールを中心にテロが多い印象もありますが、治安は大丈夫でしょうか?

2016年12月のテロ以来、大きな事件はイスタンブールでは起こっていないので、そういう意味では平和です。でも今はトルコに限らずどこでも、何が起こってもおかしくないんじゃないかなと思います。治安は、安全なエリアに居れば大丈夫です。

--- 市川さんはトルコのどこに、いつ頃、どういう理由で転居されたのですか?

2015年10月にイスタンブールに来ました。大学卒業後はずっとマンガ家で生計を立てているんですが、「日本の中のトルコ」をテーマにした連載(『白い街の夜たち』)がうまくいかず、打ち切りに。

一度頭を冷やしたいなと思って、とか、ちょっと仕事を休みたかったから、とか、トルコで暮らしてみたかったから、日本から出てみたかったとか、理由はひとつじゃないです。

宣伝になりますが、詳しくは『わたし今、トルコです。』というコミックエッセイを読んでいただけましたら嬉しいな~と思います。月刊コミックビームにて鋭意連載中で、単行本第1巻も出ています。

--- トルコの魅力を一口で言うとどんなところでしょう?

『人々の熱さ』でしょうか!『余裕があるところ』?こういうトラブル対処も、余裕からくることなのかなーとも思っています。

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