狛江市長セクハラ疑惑 「防止指針」は市長の「懲戒」想定せず

高橋都彦市長が、セクシュアル・ハラスメントをした疑いが浮上、市議会で追及が続いているが...
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Ydefinitel via Getty Images

高橋都彦・東京都狛江市長が、市役所の女性職員に「セクシュアル・ハラスメント」(性的嫌がらせ)をした疑いがあるとして、同市議会の女性市議の有志6人が3月12日、真相の解明と再発防止を求める声明を市長に提出した。高橋市長は声明書を受け取ったが、関与を否定した。

市議たちは、情報公開された相談・対応文書などをもとに、3月1日からこの問題を追及している。市によると3月12日夕方までに200件を超す苦情や批判が寄せられている。

声明によると、情報公開された文書は「ハラスメントに関する相談資料」。2014年4月のものとされ、氏名は黒塗り(以下●●と表記)をされている。

一連の文書には、以下のような記述がある。

「●●から口をつけたコップで何度も飲むように強要された...と言われ、非常に不愉快だった」

「●●が口を付けたグラスのお酒を飲まされて困ったことがあり、●●から自席に電話が入る」

「●●から車内で手を握られたこと、エレベーター内でお尻を触られた被害がある」

「宴席で●●から肩や胸を触られて困っている」

「●●には、週明けに副市長からやんわりいうことに」

声明では、公開文書の内容から「副市長より上の人ということではないかと推察され、これからセクシュアル・ハラスメントが、高橋市長によって行われた可能性が非常に高いと推察できます」と指摘。その上で、第三者機関の設置を求めるなど、真相の究明と再発防止策を求めている。

高橋市長は市議会での指摘当初から事実関係を否定。3月2日付の朝日新聞デジタルによると、市長は、朝日新聞などの取材に「覚えていない」と答えたうえで、「職員との距離がちょっと近すぎた。一定の距離は保ちながらいくことが事故が起きない方法かなと思う」「異性への関心のもとにやったことじゃなくて、一種の一家意識で、狛江一家みたいな、家父長的な立場としてやったことなんだろうけども、もしそういうふうに受け止められたんだとしたら、ごめんねと言うべきなんだと思う」などと述べていた。

狛江市職員課によると、狛江市には「市職員ハラスメント防止指針」がある。指針では、職員がハラスメントをした場合は「その態様によって、懲戒処分等の対象になる」とされている。市長の役割は「ハラスメントの防止及び排除に努めるとともに、ハラスメントに起因する問題が生じた場合には、必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならない」と書かれ、何かあったときに対応する側の人間と位置づけられている。だが、市長自身は「懲戒処分」に関しては適用の対象外になっている。

なぜか。

地方公務員法では、法令・義務違反、非行に該当する行為には「戒告、減給、停職又は免職」といった懲戒処分が定められている。だが、地方公務員法は「一般職」の公務員が対象であり、市長のような「特別職」は「法律に特別の定めがある場合を除き、特別職である公務員には地方公務員法は適用されない」(同法)となっている。このため、一般職に対する「懲戒」が適用できない。あるのは、地方自治法で定めた、有権者による「解職(リコール)請求」だけのようだ。

2017年12月、岩手日報社の女性記者にわいせつ行為をしたとして同社から抗議を受けた岩手県岩泉町の伊達勝身町長(当時)の場合は、町長自ら町議会に辞職願を出し、町議会で同意された。ただ、この事例はペナルティーによるものではなく、町長自ら進退を決めている。

声明を提出した有志の一人、太田久美子議員は「庁内のハラスメント相談も当事者が安心して相談できる体制にはなく、市職員のハラスメント防止指針も、特別職の首長は懲戒処分の対象外。被害者への二次被害も起きていると聞いており、現状のままでは女性職員を守るのは、政治家の私たちしかいないと思っている」と話している。

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