財務省が「書き換えた」森友文書、4つの要点はこれだ。1ページ丸ごと削除も…

野党は政治責任を追及、自民は佐川氏&昭恵氏の証人喚問を拒否
時事通信社/HuffPost Japan

森友学園との国有地取引をめぐり、財務省が公文書を「書き換えていた」と3月12日に報告してから一夜が明けた。

「官庁の中の官庁」と言われる財務省が、国権の最高機関である国会に提出した公文書を、決裁後に書き換えていた――。この事実は、日本中に大きな衝撃を与えた。

財務省が公表した報告書がどんな内容だったのか、ここで4つの要点をふりかえっておこう。

財務省「決裁文書についての調査の結果」より
財務省「決裁文書についての調査の結果」より
HuffPost Japan

財務省は公表した報告書はA4版で78ページ。この中で財務省は、2017年2月下旬から4月にかけて「財務省理財局」において14の文書で「書き換えが行われていた」と認めた。野党や一部メディアからは、「もはや"改ざん"」「偽造だ」という批判も出ている。

2017年2月下旬から4月といえば、森友学園への国有地売却の経緯が国会で問題視された時期と重なる。

書き換えがあったのは、3つの決裁書を含む14の文書。決裁書の書き換えに合わせる形で、玉突き事故のごとく他の文書にも影響が及んだようだ。

報告書は、「書き換え前」と「書き換え後」を比較するかたちで作成された。

「書き換え前」の文書が左、「書き換え後」が右。双方で異なっている部分には、下線が引かれていた。

財務省「決裁文書についての調査の結果」より(*赤下線は編集で記入)
財務省「決裁文書についての調査の結果」より(*赤下線は編集で記入)
HuffPost Japan
財務省「決裁文書についての調査の結果」より財務省「決裁文書についての調査の結果」より(*赤下線は編集で記入)
財務省「決裁文書についての調査の結果」より財務省「決裁文書についての調査の結果」より(*赤下線は編集で記入)
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「書き換え前」に記されていた項目が、全て消えた例もあった。

「普通財産売払決議書」(平成28年6月14日)では、「貸付契約までの経緯」と題し、森友学園が国有地を借地・購入するまでの経緯や近畿財務局などやりとりを記した37行にわたる説明文があった。

ところが、この部分は「書き換え後」には全て削除。1ページ以上が、丸ごと消えていたことになる。

財務省「決裁文書についての調査の結果」より
財務省「決裁文書についての調査の結果」より
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左から鴻池祥肇氏(自・参、元防災担当相)、北川イッセイ氏(自・元参、元国交副大臣)、平沼赳夫氏(自・元衆、元経産相)、故鳩山邦夫氏(自・元衆、元総務相)
左から鴻池祥肇氏(自・参、元防災担当相)、北川イッセイ氏(自・元参、元国交副大臣)、平沼赳夫氏(自・元衆、元経産相)、故鳩山邦夫氏(自・元衆、元総務相)
時事通信社

報告書では、「書き換え前」の文書にあった複数の閣僚経験者や国会議員の各秘書らの発言や対応内容が削除されていたことが判明した。名前が削除されていた政治家は、以下の通り。

・安倍晋三首相

・麻生太郎財務相

・鴻池祥肇氏(自・参、元防災担当相)

・北川イッセイ氏(自・元参、元国交副大臣)

・故鳩山邦夫氏(自・元衆、元総務相)

・中山成彬氏(希・衆、元国交相)

・三木圭恵氏(維新・前衆)

・平沼赳夫氏(自・元衆、元経産相)

・杉田水脈氏(自・衆)

・上西小百合氏(元衆)

時事通信社/HUFFPOST JAPAN

「特例承認の決裁文書(1)『普通財産の貸付けに係る承認申請について』」(平成27年2月4日)では、近畿財務局と森友学園との打ち合わせについて言及した部分が削除されていた。

削除されていたのは、以下のような内容だった。

財務省「決裁文書についての調査の結果」より

H26.4.28

近畿財務局から森友学園に対し、資料提出を速やかに行うよう要請したところ、森友学園から(1)当初計画していた本年7月の大阪府立審議会への諮問を本年12月に変更したいので、その前提で対応してほしいとの要望とともに、(2)豊中市との開発協議を急ぐ必要があるため、大阪府が小学校新設に係る設置計画書を受理した段階で、近畿財務局から豊中市に「森友学園との本財産の契約を締結することを証する」旨の文書を提出してもらいたいとの要望あり。

なお、打合せの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた。」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が並んで写っている写真を提示) 。

さらに「書き換え前」の文書には、昭恵氏が森友学園で講演・視察した事実や、「安倍首相夫人が森友学園に訪問した際に、学園の教育方針に感涙した」と報じたとする産経新聞のネット配信記事も紹介されていた。

ところが、「書き換え後」には、これらの内容も削除されていた。

昭恵夫人の名前が出てくるのは5カ所。「書き換え後」の文書からは、全て消えていた。

KIM KYUNG HOON / REUTERS / HUFFPOST

報告書には、森友学園の籠池泰典(本名:籠池康博)前理事長のプロフィールに関する部分が削除されていたが、そこには憲法改正などを目指す保守系団体「日本会議」に関する記述が含まれていた。

記述が削除されたのは、2015年4月30日付けの《特例承認の決裁文書(2)「普通財産の貸付けに係る特別処理について」》という文書。

財務省「決裁文書についての調査の結果」より
財務省「決裁文書についての調査の結果」より
HuffPost Japan

「書き換え前」の文書には、日本会議と連携する議員懇談会の会長に「平沼赳夫議員」、副会長に「安倍晋三総理」、特別顧問に「麻生太郎財務大臣」の名前が記されていた。

これらも「書き換え後」の文書からは、丸ごと消えていた。

財務省が「書き換えが行われた」と報告した2017年2月下旬。この時期、財務省側の答弁を一手に引き受けていたのが、当時財務省理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官だった。

佐川氏は、交渉記録はない、事前に価格交渉はしていないと繰り返し答弁していた。

衆院予算委員会で答弁する財務省の佐川宣寿理財局長(当時)。撮影日:2017年02月24日
衆院予算委員会で答弁する財務省の佐川宣寿理財局長(当時)。撮影日:2017年02月24日
時事通信社

「近畿財務局と森友学園の交渉記録というのは、ございませんでした(2017年2月24日:佐川宣寿・前理財局長=衆院予算委員会)

「価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」(2017年3月15日:佐川氏=衆院財務金融委員会)

ただ、3月12日に公表された財務省の報告書では「書き換え前」の文書から、国有地取引に関する交渉記録や価格提示に関する記述が削除されていることが判明。「本省担当課から承認の内諾を受けている」という文言も消されていた。

Toru Hanai / Reuters

大量の「書き換え」があった理由について、麻生財務相は12日のぶら下がり会見でこう述べた。

佐川の答弁と決裁文書の間に齟齬があった。麻生財務相(2018/03/12)

誤解を招くということで、佐川の答弁に合わせて書き換えられたのが事実だと思う。

麻生財務相(2018/03/12)

麻生財務相は、組織ぐるみでの「書き換え」を否定。あくまで理財局の「一部」の職員が、「佐川氏の国会答弁」に合わせる形で書き換えたとする姿勢を貫く姿勢だ。

「書き換え前」の文書から削除された部分は、国会議員や昭恵氏による取引への明白な関与と言える記載ではなかった。

ただ、森友学園側との関係を、意図的に文書から消したことは事実だ。野党側は「誰が指示したのか」「なんのためにやったのか」を、今後も追及する構え。佐川氏と昭恵氏の証人喚問を引き続き求めている。

これに対し自民党の森山裕国対委員長は13日午前、立憲民主党の辻元清美国対委員長と会談。佐川氏と昭恵氏の証人喚問について拒否する意向を伝えた。

ある野党関係者は「書き換えの裏には、安倍首相が国会で"私や妻が関わっていたら、議員も総理も辞める"と発言したこともあるのではないか」と、財務省側の「忖度」があったと指摘する。

与党内からも批判の声が出ている。自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長は12日、国会内で報道陣にこう語った。

「なんで書き換えたのか。それを知りたいと思うのは当然。何が真実か。あり得ないことだが、なぜ書き換えたのか知りたい」

「自民党自身も、なぜこうなったのか重く受け止め、行政だけでなく政治がどう向き合うかが問われている」

「自民党は官僚だけに責任を押しつける政党ではない。その姿を見せる必要があるのではないか」

Toru Hanai / Reuters

公文書管理法では、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と位置づけている。

今回の「書き換え」問題について野党は、「行政が民主主義の根幹を否定した」と猛批判。安倍首相と麻生財務相の政治責任を厳しく追及する構えだ。

安倍首相は12日、「行政全体の信頼を揺るがしかねない事態であり、行政の長として責任を痛感している。国民の皆様に深くおわびを申し上げたい」と謝罪した。

一方で、「麻生財務相には、その責任を果たしてもらいたい」と、あくまで続投させる意向を示した。麻生財務相も、自身の進退については「考えていない」と明言した。

ある野党関係者は、こう語る。

「安倍首相にとってみれば、麻生さんは第二次安倍政権の発足から自分を支えてくれている"内閣の屋台骨"です。最後まで守りたいところでしょう」

「ただ、安倍首相は世論の動向を見ている。麻生さんは財務相と副総理を兼任しているので、『財務相だけ辞任させる』というシナリオも出ているようです。ただ、与党内からの突き上げもある。全ては世論次第でしょう」

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