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2018年04月15日 20時04分 JST | 更新 2018年04月15日 21時01分 JST

広がる巨大ナメクジを追え 「ナメクジハンター」の調査に同行し、見たものは…

農業への被害が少しずつ出始めてきている。

最大で体長15cmにもなる巨大外来ナメクジが、いま日本で密かにひろがっているのをご存じだろうか。およそ10年前に茨城県で初めて確認され、現在、北海道から長野県まで生息域が広がっていると報告されている。日本で数少ないナメクジ研究者の調査に同行した。

(取材・文 NHKサイエンスZERO「カガクの"カ"」取材班/黒ラブ教授)

日本では数少ないナメクジ研究者「ナメクジハンター」

NHKより画像提供

「あ、ここですね。」

幹線道路から小道に折れ、車で5分ほど入った田園地帯で、宇高寛子さん(38)は車を停めた。

京都大学で生理生態学を専攻する彼女は、日本でも珍しいナメクジの研究者だ。茨城県内の農家の協力を得て、ここ3年ほど、あるナメクジの生態調査を行っている。

「ナメクジは、ほどよく湿っていて暖かいところが好きです。放置されたものの下や、積み重なった落ち葉の間なんかに多いですね」

放置されたタイヤや木材をめくり続けること、わずか5分。彼女が1点を指さした。その先には確かに、ヒョウ柄の模様があるナメクジがいた。大きさは5センチほどに見える。

「いました。マダラコウラ(ナメクジ)ですね。まだ大きくなると思いますけど、いちおう成体にはなっているのかな・・・」

呟きながら、バッグからピンセットとプラスチックケースを取り出し、手早くナメクジを捕獲。ケースの中に入れて丁寧にフタを閉める。早春の陽光に照らされたケースの中で温度が上がったのか、ナメクジが動き始めた。すると、みるみる体が伸びていく。大きい!

捕獲時点では気温が低かったため、体を縮こまらせていたのだろうか。ケースの中で暖まるほどに体長は大きくなってゆき、最終的には15センチほどにまで達した。茶褐色の体表は、ヒョウ柄のようなまだら模様で覆われている。

これがいま、日本でひそかに増えつつあるという、マダラコウラナメクジだ。

宇高寛子さん提供
マダラコウラナメクジ

全国に広がるマダラコウラナメクジ

マダラコウラナメクジはヨーロッパが原産の外来種で、日本では2006年に茨城県で初めて生息が報告された。日本の一般的なナメクジ(チャコウラナメクジ)が体長5センチほどなのに対し、マダラコウラナメクジは最大で15センチほどにまで成長する。成人男性の指先から手首までに至るほどの大きさだ。

体全体を覆うマダラ模様が、よく見ると頭部の3分の1ほどは密になっており、コウラのように見える。攻撃性の強い種類で、いま生息域を広げつつあると考えられている。

NHKより画像提供

宇高さんの調査により、初めての報告からわずか10年ほどで、北海道から長野まで東日本の8都道県に生息していることがわかってきた。体が大きい分、食べる量も多い。調査に協力している農家は「こいつが出てきてから、外でキノコを育てられなくなった。ヒラタケなんて一晩ですっかり食べちゃう」と話す。たとえ食害はなくとも、ナメクジが作物の上を這うと、粘液によって「這い跡」と呼ばれる跡がつき、売り物にならなくなってしまうという。

巨大ナメクジの広がりによって、農業への被害が少しずつ出始めてきている。

矢野徳也さん提供
マダラコウラナメクジによって食害を受けたヒラタケ

・わかってない生息域

東日本を中心に生息域を広げつつあると考えられるマダラコウラナメクジだが、どのくらい広がっているのか、その実態は詳しくわかっていない。なぜなら、国内でナメクジ専門の研究者は宇高さんのほか数少なく、生息地の広がりをとらえきれていない可能性があるからだ。

そこで宇高さんは、Twitterや個人で開設したウェブサイトを通じて、マダラコウラナメクジの見分け方を掲載している。研究者だけでは限界があることでも、一般の多くの人に協力してもらえれば、より広い範囲で広がりの実態を調べられるのではないかと考えているからだ。

もし、すでに確認されている8道県以外の都道府県から1件でも報告があれば、科学的にも大きな発見となる。散歩のついでや、子どもの昆虫採集の一環として、あなたも調査に参加してみてはいかがだろうか?

ナメクジが多いのは、ビニールシートや落ち葉、石などで覆われた、湿って暖かな場所。シートをめくった下をよく見ると、下記の写真のような姿で見つかることがある。

マダラコウラナメクジと確定するためにはサイズが大きなポイントとなるので、写真のように、硬貨などサイズがわかるものと一緒に撮影し、発見した場所や状況などと共に宇高さんのウェブサイト「ナメクジ操作網」に投稿するか、ツイッターで #サイエンスZERO #ナメクジ をつけてつぶやけば報告となる。

「ふだん、ナメクジってあまり見かけない気がしますよね。でも、"そこにいる"と思って探すと、案外見つかるものです。いつもは見ない足元の世界に目を凝らしてみると、意外と多くの生物がいることに気がつく良い機会になるかもしれません。よかったらぜひ、ご協力ください。」

NHKより画像提供
投稿例のひとつ

マダラコウラナメクジの見分け方

マダラコウラナメクジの特徴は体長が大きい事と、体の模様だ。動かない状態で10cm以上ならマダラコウラナメクジの可能性が高いと判断できる。また、体全体を覆うまだら模様が、頭部に近い3分の1は濃く緻密で、継ぎ目があるように見えるのも特徴だ。

宇高寛子さん提供
イラスト 見分け方

 

若いマダラコウラナメクジでは、体長が小さかったり、模様ではっきりしなかったりして、他の種類のナメクジとの区別がつきにくい。

駆除したい場合は、どうするの?

マダラコウラナメクジは、法律で飼養が制限されたり、場合によって駆除が行われたりすることもある「特定外来生物」ではないため、必ずしも駆除する必要はない。しかし環境のことなどを考えて駆除する場合、宇高さんによると次の方法がオススメだという。

「おすすめは、マダラコウラナメクジを、袋にいれて燃えるゴミの日に出す事です。水を入れて溺れさすなどの方法などやると、たちまち臭くなり絶対おすすめはしません。」

NHKサイエンスZEROとハフポスト日本版は、旬!な科学の現場に潜入する『カガクノ"力"』というプロジェクトを行っています。宇高さんの活動に関しては、 4月15日(日)・22日(日)23:30~Eテレ「サイエンスZERO」そして、6月頃、生態調査の結果を紹介する予定です。

科学に対する疑問や質問について、#サイエンスZERO #ナメクジ でつぶやいてください。番組でご紹介させていただくことも!