知床で流氷を見ながらテレワークしてみた。ウニと音楽が堪能できるカフェバー「GVO」

マスターの相原晋一さん「自分もお客さんも一緒に楽しめる場所を」
流氷に沈む夕日。カフェバー「GVO」に近いウトロ漁港にて(3月27日撮影)
流氷に沈む夕日。カフェバー「GVO」に近いウトロ漁港にて(3月27日撮影)
Kenji Ando

ノートパソコンで記事を書きながら、ふと顔を見上げると、窓の向こうの海に流氷がプカプカと浮いていた。

ここは北海道斜里町ウトロ地区のカフェバー「GVO(ジーヴォ)」だ。世界遺産「知床」の自然に囲まれながら、いつもと同じ仕事をしていることに、不思議な感慨を覚えた。

この日は波一つない鏡のような海面だった。マスターの相原晋一さん(62)は「流氷が沖の波を止める影響でこのシーズンは波が少ないけど、こんなにベタ凪な日は滅多にないですね」と話した。

知床半島にカフェバー「GVO」にて(3月27日撮影)
知床半島にカフェバー「GVO」にて(3月27日撮影)
Kenji Ando

■なぜ知床でテレワークを?

私は3月26日から30日までの5日間、斜里町がサテライトオフィスなどを提供する「斜里ふるさとテレワーク」のモニター企画に参加した。東京でやっているのと同じ仕事を、約1000km離れた斜里町でもやってみようという趣旨だ。2017年11月初旬に同僚が家族で滞在したのに続いて、単身、北の大地に向かった。

知床に魅せられたのは、2016年5月に北海道横断旅行をしていたときのことだった。札幌で知人に会ったあと、特急で釧路まで行き、レンタカーで屈斜路湖、摩周湖、知床を回って、札幌に戻るという強行軍だった。そのときに、知床五湖から見た山々の美しさに「ここはアラスカか」と感銘を受けた。「また行きたい」と2017年にも知床を再訪した。

そんな感じだったので、斜里町のテレワーク事業があると聞いて、会社に掛け合い「是非参加したい」と名乗りを挙げたのも当然の流れだった。

3月末とはいえ北海道。寒さが気になったが、28日にはウトロ地区で気温が20.4度。95年ぶりの温かさだった。

■「自分もお客さんも一緒に楽しめる場所を」

「GVO」の外観
「GVO」の外観
Kenji Ando

「GVO」は、世界自然遺産の指定地域に隣接した斜里町のウトロ地区にある。インターネット完備で、店が空いているときにテレワーカーにも店を開放している。オホーツク海に面した店内にはレコードやギターが立ち並んだオシャレな雰囲気だ。

「GVO」の店内
「GVO」の店内
Kenji Ando

マスターの相原さんはウニ漁師。夏場は漁に出るため、GVOが空いているのは9月から3月までの半年間だけだ。山形県出身で、小学3年生でウトロに移った。東京の大学を卒業後は、ミュージシャンとして活動していた。ソロデビュー目前の29歳のとき、父親が病気で倒れたため、地元に戻って漁師を継いだ。

音楽活動からしばらく離れていたが、息子の高校進学を機に少しずつ再開。2010年からライブなどもできるカフェバー「GVO」を始めた。GVOは、相原さんがバンド時代に担当していたGuiterとVocalから命名した。名物は相原さんが採ったエゾバフンウニを使った料理だ。

「GVO」名物の「塩ウニのっけ飯」
「GVO」名物の「塩ウニのっけ飯」
Kenji Ando

「僕が採っているウニを店にも出せる。ウトロではライブができる場所がなかったから、自分もお客さんもみんなで一緒に楽しめる場所が欲しかった」

そう、相原さんは言いながら笑った。夜間に定期的に開かれるライブでは、バンド時代に知り合った奥さんとともに楽曲を披露するのだという。

「GVO」のマスター、相原晋一さん
「GVO」のマスター、相原晋一さん
Kenji Ando

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