「想像力はオンラインで買えない」 スピルバーグ監督がストーリーを生み出す秘訣を語る

「肉体が続く限りは監督をしていたいと思っているんです」
Director Steven Spielberg poses at the premiere of the HBO documentary film
Director Steven Spielberg poses at the premiere of the HBO documentary film
Mario Anzuoni / Reuters

スピルバーグ監督が語る映画作りの原点 昔から変わらないストーリー作りの習慣

映画『E.T.』(1982年)、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『シンドラーのリスト』(94年)などを手がけてきたスティーブン・スピルバーグ監督。最新作『レディ・プレイヤー1』(公開中)のプロモーションのため13年ぶりに来日を果たした巨匠にインタビューする機会を得たため、71歳の現在もハリウッドの第一線で活躍し続ける理由に迫ることになった。

インタビューする記者たちが緊張しながら取材部屋で待機していると、飲み物を片手にスピルバーグ監督が「コンニチハ!」とあいさつしながら入ってきた。ニコニコしながら記者たちの顔を見渡すと、一人ひとりと丁寧に握手。『ジョーズ』のTシャツを着た記者を見つけて「サメ!」と日本語で喜ぶなど、"巨匠"のイメージとは異なる親しみやすい一面で緊張をほぐしてくれた。

『レディ・プレイヤー1』は、アーネスト・クライン氏のベストセラー小説を映画化。2045年を舞台に、主人公で17歳の少年ウェイドらによる巨大なVRワールド「オアシス」開発者の遺産争奪戦を描く。映画やゲーム、アニメが夢の共演を果たすことでも話題を集めており、日本からもガンダムや、『AKIRA』の金田のバイクなど、数多くの作品が登場する。

公開中の監督作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』が「大人として作らなければいけない映画」だったのに対して、同作は「子どもの心で作った映画」だった。歴史物や実話は正確に描く必要があるが、今回は「自分のイマジネーションの世界に正確さは必要がないので、開放的な気分で作ることができたんだ」。大人として、政治的な環境や歴史的な物語を語らなくてはいけない"使命"を感じるときもあるというが、同作は自身の想像力を生かした"子ども心"が伝わる作品。「社会的な現実を描いた作品と、今回のようなSFの世界の両方を行ったり来たりできるのが理想。ある意味、両極端なんです」と少年のように笑った。

VRの世界を映画にするなど、71歳になった現在も新たな挑戦を続けている。その衰えない映画製作への原動力について聞くと、「良い質問だけれど、自問するのはちょっと怖いです。答えが見つかったら、映画作りをやめてしまうかもしれない。肉体が続く限りは監督をしていたいと思っているんです」。そして、子ども時代から今も変わらないという、ある習慣を教えてくれた。

「とにかく小さい頃からストーリーを語るのが好きで、昔は3人の妹に毎晩怖い話を聞かせていたんだ。妹たちが怖がってベッドに入ると、私は父から『怖い話ではなく、いい話をしなさい』と怒られていたよ。今は、7人の子どもたちが眠る4つの寝室を回って、みんなにそれぞれ違う話を聞かせています。常に語っていたいんです」。

ちなみに、ストーリーを生み出すコツについては、インタビュー翌日に開催されたトークイベントで「想像力はオンラインで買えるものではないし、何かを飲んだり、何かを食べれば出てくるものではなくて、そこにあるものなんです。想像力を持っていない人はいないんです。重要なのは、常にイマジネーションにオープンでい続けて、アイディアが浮かんだら必ず書き留めること。そうすれば、普段の生活の中からでもストーリーが生まれてきます」と回答。一見簡単に聞こえるが、長年習慣化させるのは難しいことを飄々と話して驚かせた。

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