『花のち晴れ』、中盤のシリアス展開は「『花より男子 リターンズ』の空気と近いものがある」

道明寺を演じた嵐・松本潤のゲスト出演、宇多田ヒカルが手がけたイメージソングが話題をさらった。
主人公・江戸川音を演じる杉咲花
主人公・江戸川音を演じる杉咲花
Stephane Cardinale - Corbis via Getty Images

「花晴れ」Pが語る"テレビの若者離れ"

2005年に第1シリーズが放送され、第2シリーズ、そして映画版のファイナルが2008年に公開された『花より男子』。その10年後となる2018年。原作者の神尾洋子が描いた新章『花のち晴れ~花男 Next Season~』が4月17日により放送を開始。第1回では前作で道明寺を演じた嵐の松本潤もゲスト出演するなど、当時を知るファンも含め、早くも大きな話題をさらった。いよいよ物語が動き始める第2回を前に、同シリーズの始まりから手がけてきた瀬戸口克陽プロデューサーに話を聞いた。

◆「花男」シリーズを再び実写ドラマ化する理由

「最初に『花より男子』をドラマ化したころ、少女漫画は連ドラに向かないと言われていたんです。でも、いざやってみたら多くの人に愛されてブームになって、それから十数年が経ちました。今は少女漫画原作の映画はあるけれど、ドラマではなかなかないという状態になってきています。

それは「若者のテレビ離れ」と言われているけれど、よく考えたら、「テレビの若者離れ」なんじゃないかという話になり。ちょうどそんな時に、神尾先生が新シリーズを連載し始めたことを知り、これはうちがやるしかないんじゃないかと、勝手に使命感を感じたんです」(瀬戸口氏/以下同)

前シリーズではヒロインのほかにF4という4人が中心に描かれていたが、今回は、C5と5人になったほか、ライバル校に通うヒロイン・音の婚約者なども登場する。

「今回は、C5がいる上に、ライバル校もあって、より多様なキャラクターが登場します。だから、ロケ地を探したり、制服を作るだけでも大変で。でも突き抜けた世界観を作るからこそ、伝わるものがある。ちなみに、今回のテーマは"自分らしく生きる"ということです。

『花より男子』の時は、"格差社会"ということを裏テーマに据えていたのですが、現代って、誰かにこう見てほしいという理想像と、実際の自分というものの間で生きているっていう人も多いじゃないですか。『花男』の時もフィクション性の高い世界が舞台でも、その中にはリアリティのあるキャラクターが出てくるのが特徴でしたが、今回も今の時代に沿ったリアリティが感じられると思います」

◆魅力的な登場人物がズラリ、キャスティングのポイントは

原作ものを映像するときに重要なのが、キャラクターに合ったキャスティングだ。

「それは1年ほど前に企画が始まったときから力を入れてきたところでした。特にヒロインの音ちゃんは、天馬という婚約者がいながら最悪の出会いの相手である晴に惹かれていくという複雑な心理描写が求められます。気持ちが揺れていても、応援したくなるキャラを演じてもらうには、お芝居もできる人でなければと考えた時、真っ先に杉咲さんが思い浮かびました。

髪を切ってもらわなくてはいけないので最初に相談しましたが、すぐに快諾してもらえたときは、ほっとしました。晴は、表向きはF4に憧れていてカリスマっぽくふるまっているけれど、実はヘタレという役。平野くんについては、舞台を観に行って、かっこよくキメられることは十分に想像できていたのですが、ヘタレな部分は未知数で、お芝居でカバーしてもらおうと思っていたんです。そしたら、実際に会ってみるとすごく天然で、これはいけると思いました。

天馬は、正統派の王子様なのですが、物語が進むにつれて、感情をかき乱されることもある。それを我々スタッフは"ブラック・天馬"と呼んでいるのですが、そんなギャップを表現できるのは、中川くんしかいないと思いました」

◆2度めのタッグ、宇多田ヒカルのイメージソング聴き「鳥肌立った」

そして、話題となったのが、宇多田ヒカルが手がけたイメージソングだ。

「今回の『花のち晴れ』は、中盤からシリアスな展開になるのですが、それは『花より男子 リターンズ』の空気と近いものがあり、『~リターンズ』のイメージソングを手がけてくださった宇多田さんの世界がぴったりなのではないかと思ったんです。できあがったものが届いたら、タイトルが『初恋』で、それは宇多田さんの1stアルバムの『First Love』と重なるし、曲を聴いたときは鳥肌が立ちましたね」

宇多田に限らず、道明寺役の松本潤など、前回のキャストたちも協力している本作は、関わってきたすべての人にとっても、思い入れの深い作品であることがわかる。

「若いキャストの皆さんも『花男』を観て育った方がほとんどですが、スタッフにも『花男』を観ていた人が多いです。そんな若いスタッフに、英徳のライバル校は、どんな学校だったら面白いかアイデアを出してもらい、実際に採用されたところも多くて。このドラマが俳優だけでなく、スタッフの成長の場になればと思っています」

(文/西森路代)

◆瀬戸口克陽(TBSテレビ 制作局 ドラマ制作部 部長代理)

せとぐち かつあき

73年生まれ。96年にTBSに入社。その後、『花より男子』『華麗なる一族』など数々のヒットドラマのプロデュースを務める。近年では『99.9‐刑事専門弁護士‐』『99.9‐刑事専門弁護士‐ SEASONII』『A LIFE~愛しき人~』などを手がけた。

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