職場のタバコ問題「分煙求めたら解雇された」ぜんそく女性が日本青年会議所を訴え

「受動喫煙という軽微な問題にまでは気が回らなくて当然」と一蹴されたという。
労働審判を申し立てた女性(手前)=厚生労働省
労働審判を申し立てた女性(手前)=厚生労働省
SHINO TANAKA/HUFFPOST

職場のタバコの煙で喘息になったとして、分煙対策をもとめた30代の女性が解雇された。

女性は5月18日、勤め先の公益社団法人・日本青年会議所を相手に、解雇無効と慰謝料、未払い賃金など約500万円を求める労働審判を、東京地裁に申し立てた。

タバコを吸っている人の近くで煙を吸わされてしまう受動喫煙。健康増進法や労働安全衛生法では、職場の受動喫煙に対して「禁煙にする」「喫煙室を作り分煙にする」といった努力義務を課している。

だが、申し立てた女性によると、日本青年会議所は「ビル内の階段でさえ煙突のようにけむい状態」が続いていたという。

館内どこでも吸い放題。勤務して4年ほどで喘息の症状が

女性は2008年から、日本青年会議所の事務職員として勤めていた。そのころから、オフィスの一角ではタバコが吸えるようになっていた。

5階建てのビルの中には、「分煙」と書いた張り紙があっても、オフィスのほか、会議室、役員の個室、エントランスや廊下などでも喫煙できていたという。

日本青年会議所は、40歳以下の、主に中小企業の経営者らが会員となり、親睦を深めたり、憲法改正運動などの活動に取り組む法人だ。日本青年会議所が2016年に発表した会員向けのアンケートでは、「タバコを吸う」と答えた会員が49%と、高い喫煙率だった。

申立書などによると、女性は2010年ごろから分煙を徹底するよう、役員面談で訴えていた。

しかし、1年ごとに役員が変わるため、対策をとっても1年ごとに禁煙になる場所が変わったり、喫煙可に戻ったりと毎年ルールが変わってしまい、分煙化は進まなかった。

2012年の1月ごろから、息苦しさや動悸が激しくなりはじめ、喘息の治療薬を処方された。

職場に再度相談し、オフィス内は禁煙となった。だが、ビルに来る会員や元会員に周知されないため、会員たちは携帯灰皿やごみ箱を探してオフィス内で喫煙することも日常的にあった。

その翌年、2013年には会議室が禁煙になったものの、オフィスは喫煙可能だったので、会員や役員らが会議終わりにオフィスに流れ込み、一斉にタバコを吸いだすようになった。女性は息苦しさや咳などが起きるため、自身の呼吸に気を取られるようになり、仕事が進まないこともあった。

そして2014年、気管支喘息と診断された。小児喘息が10歳の頃に治ってから、約20年後の再発となってしまった。

「受動喫煙という軽微な問題」と相手にされず

女性は、役員面接のほかにも、職場の上司に何度も分煙について訴えた。

しかし、役員と交渉した女性上司は、訴えに対し「男性とは一度に1つのことしか考えられないもので、大きな運動目的を前に受動喫煙という軽微な問題にまでは気が回らなくて当然だ」「職場は、あなたの思い通りにはならない」と一蹴。

喫煙室を作ることを提案しても「役員とヒラが同じ喫煙所でタバコが吸えるか」などと拒絶されたという。

女性によると、喘息の発症から、改善のための要望を強く訴えるようになると、通知なしに担当業務を変更させたり、仕事ぶりへの非難をしつこく、日常的にされるようになったという。

その後、2016年9月には、受動喫煙の身体への影響や嫌がらせなどにより、PTSDを発症。休職せざるを得なくなった。

女性は「報復のような嫌がらせで、精神的にもつらかった。毎年毎年、『改善しましょう』という理事の、その場限りの回答に裏切られる形で、結局自分の身体のほうが先に負けてしまった」と語る。

「仕事は好きだった」 でも職場は変わらず、解雇通知が

「私は、仕事が好きだった。仕事が好きだったので、円満に解決し、元気に働き続けたいと話し合いを重ねてきた」

休職中も、職場の分煙対策は進まず、依然と変わりなく館内どこでも喫煙ができる状態だった。

何ら改善策がないなかで、日本青年会議所は女性が休職していることについて「業務対応に混乱が生じて誠に遺憾」「責任について因果関係がない」などといい、復職命令を出した。

女性側は改善策がないままであり、復職ができないと伝えていたが、2017年4月、解雇予告通知書が届いた。

理由は「会議所に不都合な行為をした」「心身の不調」などと書かれていた。

個人の問題ではなく組織に変わってほしい。法改正では受動喫煙対策に罰則も検討

「いちどもこの問題に正面から向き合ってもらうことができずに今回の申し立てまできてしまった」と女性は話す。

2018年3月に閣議決定された健康増進法の改正案では、事務所などの職場は原則屋内禁煙となる。

いままでは努力義務だったが、禁煙場所でタバコを吸う人には最大30万円、喫煙可能なまま放置するなど対策を怠った施設管理者には最大50万円の過料を科すことになる。

女性は「私個人の問題ではなく、組織全体の問題としてとらえてほしい。雇用する労働者の安全と健康の確保という観点から、考えてもらいたい」と訴えていた。

日本青年会議所はハフポストの取材に対し、「事実関係を調査中のためお答えできない」と答えた。

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