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2018年06月06日 14時40分 JST | 更新 2018年06月06日 16時05分 JST

「私たち、契約結婚しました」一番大切にした条件は、恋愛ではなく◯◯でした。

「恋愛は向いていませんでしたが、誰かと一緒に生きていきたいとずっと思っていました」

「恋愛や結婚生活に自信が持てない」

そんな声も聞こえてくる昨今。結婚や夫婦生活を描いた人気ドラマも増え、中でも2016年に公開された契約結婚をテーマにしたドラマ「逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)」は社会現象になった。こうした背景には、今ある結婚のイメージやかたちにしっくり来ていないことがあるのではないだろうか。

Nonoka Sasaki
契約結婚をした江添さんと長谷川さん

自分にフィットする結婚のかたちを求めて、条件を決めて契約結婚をした長谷川さん(写真右)もそのひとり。

江添さんと長谷川さんの夫妻は、現在は同居しており、「1年更新制で、やめたいときにやめられること」「夫婦だからといって、性的に独占し合わないこと」「経済的にそれぞれ自立していくために、お財布は別にすること」の大きく3つの契約を取り交わして結婚生活をしているという。

2人はどうして契約結婚という答えにたどり着いたのか。結婚に至るまで2人でどのような話し合いを重ね、今のかたちを実践しているのか。そして、既存の婚姻制度についてどんな考えを持っているのか。2人の自宅で、食卓を囲みながら話を聞いた。

blog/hasegawa
2人の契約結婚の内容(長谷川さんのブログより一部抜粋)

「自分にしっくりくるかたちは何だろう?」と考えたら、契約結婚だった

Nonoka Sasaki

――2人は、どういった経緯で契約結婚をすることになったんですか?

長谷川:私が契約結婚をしたいと思い立って、当時住んでいたシェアハウスの住人に「私と結婚しませんか?」と提案していったんです。江添さんもそのうちの1人で、お互いの求める条件がピッタリ合ったので一緒になることにしました。契約結婚をして、今年で4年目に突入します。

――どうして一般的な結婚ではなく、契約結婚という形式をとったんでしょう?

長谷川:契約結婚をしようと思っていた、というよりは、恋愛関係を築いて一般的な結婚をすることが私には向いていなかったからですね。

恋愛関係が生産的なものにならないんですよ。うまく説明はできないんですけど、恋愛的なものを求められすぎると自分の中のバランスを崩しやすくなって相手を突き放してしまうというか。そういったことを突き詰めていっても生産的になるとは思えませんでしたし、相手の方も不幸にしてしまうし(笑)。

――確かに恋愛が向いていないと感じている方は多いかと思いますが、結婚を諦めてしまう人がほとんどです。長谷川さんはどうして今のかたちに落ち着いたのでしょうか?

長谷川:恋愛は向いていませんでしたが、誰かと一緒に生きていきたいとずっと思っていたんですよね。「自分にしっくりくるかたちは何だろう?」と模索を続けて、しっくりこないものややりたくないことをどんどん取り除いていくようにしたら、契約結婚という方法が残りました。

聞こえはよくないかもしれませんが、私のやりたい条件に賛同してくれる人ならどんな人でもいいなと思えたんです。なので、江添さんにも「こういう結婚をしたいと考えているんですけど」とほんのり打診してみました。

――長谷川さんからの提案を受けて、江添さんは率直なところどんな感想を持ちましたか?

江添:長谷川さんが最初にその話をしてくれたときは「私(江添さん)と結婚したい」というよりも「こういうことを考えていて」という話だったので「へぇ~、いい人が見つかるといいね」というくらいで。

長谷川:私も様子をうかがっていたんですよ。たいていの人はまともに取り合ってくれなかったんですけど、江添さんは気持ち悪がらなかったし、否定も肯定もされなかったので、別日に改めて「どうですか?」って聞いたんだよね。そしたら、面白がってくれたみたいで。

江添:私自身はあまり人に関わってこなかったし、若いときはお金もなかったしで、恋愛するような環境になかったこともあって、恋愛的に人を好きになったことがありませんでした。ただ、結婚はしたかったんですよ。

――それは、なぜですか?

江添:多分、日常に飽きていたからだと思います。

シェアハウスに入居したのも毎日に飽きてきたからだったんですが、長谷川さんの提案があったとき、私はすでにシェアハウスでの生活に飽き始めていましたし、面白そうだなと思って確か「可もなく不可もない」って言ったんですよ。

実際、長谷川さんも「目の前にいるから挑戦してみるか」っていう感じだったよね。あとは、仲人の存在も大きかったかもしれない。

――仲人を立てたんですか?

長谷川:シェアハウスに遊びに来ていた年の近い女の子が仲人的な役割を買って出てくれて。結婚するならどういった条件がいいのかを私たちから聞き出して、箇条書きにしてまとめてくれたんです。

仲人さんがなかったらお互いに踏み切れなかった可能性もあるので、お互いに譲れない部分を視覚化して話し合えたことがよかったんだと思います。

「恋愛結婚じゃないから冷静に対応できる」

Nonoka Sasaki

――契約結婚をされて4年目に突入するということですが、2人はどんな生活をされているんですか?

長谷川:彼も私も会社勤めなのですが、私は平日18時くらいまで働いて、 彼は不規則な勤務で夜も遅くなることが多いです。

なので、週2〜3日くらい一緒に夕飯を食べられれば良い方ですね。彼が料理を多めにつくっておいてくれるので、残っているものを自分のタイミングで食べる感じです。

――江添さんのほうが料理をされるんですね。家事の分担については、よくある夫婦ゲンカあるあるの1つですが、長谷川さんと江添さんの間ではどうでしょう?

長谷川:最初はどちらがお皿洗いするかでよくケンカしていました。私が誰かと食卓を囲めるのがうれしくて、率先して料理をつくることが多かったので、「お皿洗いくらいやってよ」と。

でも、彼の仕事柄どうしても帰りが遅くなってしまい、1人で食事をすることが続いたので料理をつくるのをやめたんです。そうしたら彼が料理をつくって、私が皿洗いを担当するようになってケンカはなくなりました。

誰かと一緒に生活している以上、価値観の違いでぶつかることはあると思うのですが、私たちは恋愛関係にない契約結婚だからこそ、「うまくいかなかったら別れてもいい」という前提のもと、お互いの考えていることを伝えて、冷静に対応できるんだと思います。

――逆に、契約結婚をしてみて困ったことなどはあるのでしょうか?

長谷川:困ったというほどではないんですけど、周囲の方の理解を得るのが難しいですね。「結婚している」と言えば、一般的な結婚を想像するでしょうし、かと言って自分から「私の結婚はこういうかたちで......」といきなり話し始めるのも何だか違うし......。

「誰かいい人を紹介するよ!」と言われるのが面倒で、最近は1000円のファッションリングを買って、左手の薬指に付けているのですが、みんな"わかった気"になってくれるんですよね。きちんと自分の口で説明していかなきゃいけないなと思っているんですけど。

――周囲の理解と言えば、親御さんにはこの結婚について話しているんですか?

長谷川:話しましたし、両家に挨拶にも行きました。「契約結婚」という言葉こそ使いませんでしたが、事実婚かなにかだと思っていると思います。「友達だった人に結婚しようと言ったらOKをもらえたので、結婚します」と言ったら、「あんたが決めたことだったらいいんじゃない」と納得してくれて。

結婚した後は頻繁に会うことはないんですけど、旅先で近くに行くことがあったら会いにいくことはあります。

「恋愛も身体の関係もない、添い寝できる異性」といられる安心感

Nonoka Sasaki

――先ほど「求める条件に賛同してくれる方なら誰でも良かった」という話がありましたが、一緒に過ごした月日の長さからか、お二人からは元来の相性の良さのようなものを感じます。

長谷川:条件に合えば誰でもよかったというのはそうなんですが、契約の条件以外に結婚相手の条件の中に「添い寝できる人」という私の中の条件があって。なかなか満たせる人はいなかったのですが、彼はそれを満たしてくれたので、一気に結婚に踏み切れました。

――添い寝が条件の中の1つだった、ということですか?

長谷川:むしろ、添い寝が最重要条件ですね。それくらい、私にとっては大事なものだったんです。恋愛関係にない人と、セックスでなく、ただ、添い寝することが。

――添い寝を大事に思うようになった理由は? もし原体験などあれば聞かせていただけますか?

長谷川:相手に踏み込むことはあっても踏み込まれたくないという感覚がずっとあって。それに加えて性被害に遭ったことが何度かあって、女性の身体に生まれたことを弱さのように思うようになっていきました、

何が決定的なきっかけかはわからないんですけど、そうしたいろんな要素が絡まって、自分の身体を肯定できず、他人と身体の接触をすることができなくなった時期があったんです。

そんな中、恋愛関係にない男友達と添い寝する機会があって、そのときに初めて、自分の身体を好きになりたいし、触れるようになりたいと思えるようになりました。

20歳のときだったんですけど、その体験以降、自分の中で「革命を起こさなきゃ」と思うようになって、自分にフィットするかたちを模索し始められたんですよね。

――それで、出会って結婚したのが江添さんだった、ということですね。添い寝できるかどうかという基準はどういったところにあるんですか?

長谷川:うまく言えないんですが、横にいても安心して眠れる、という感覚的なところが大きいですね。だから、正式に結婚を申し込む前に、シェアハウスで一度試したんですよ。

――トライアル添い寝ですね(笑)。

長谷川:そうそう。仲人の子も一緒に、川の字になって添い寝して。そうしたら、よかったんですよ。びっくりするくらいフィットした。恋愛でなくても、人とのふれあいが好きな人なんだなってわかって。

江添:でも、たいていの男はそうなんじゃないの? 女にあぶれている男は世の中にたくさんいるから、適当に声かければよかったのに。

長谷川:その微妙なニュアンスが彼には伝わらなくてもどかしいんですけどね。

添い寝ができても性的な関係になって終わってしまうだけなら、たくさんの人とできることかもしれないんですけど、そうなると心のバランスを崩してしまうので、「フィットする添い寝だけができる人」を探していたのですが、それが難しい。

先ほど条件に見合えば誰でもよかった、とは言いましたけど、そういう人は20歳のときに出会った男友達と江添さん以外にいなかった。

正直なところ、江添さんとは共通の趣味もないし、お互いがどんな仕事をしているかもいまいちわかっていませんが、安心して添い寝できる相手だということが私にとっては最も大事なことだったんです。今はとても安定して満たされているというか、幸せです。

「お互いのパートナーと4人で暮らすのが夢」

Nonoka Sasaki

――条件には「性的に拘束し合わない」という項目がありましたが、これはそれぞれ外に恋愛関係や身体関係があっても良い、ということですよね。お互いに恋愛の話はするのでしょうか? 恋愛関係にないとは言え、嫉妬はないのかなど、素朴な疑問が湧いてきます。

長谷川:しますします! まず身体的接触がある場合は性病のリスクがあるので、お互いに話すことは契約によって決めました。

私は恋愛関係と身体関係を別物だと考えていますが、身体的接触がなかったとしても恋愛の話を隠すような関係が嫌なので、それを話せないなら一緒にいられないんですよ。江添さんは恋愛の話をしても、悲しませたり嫉妬を買ったりすることがないので、すごく安心します。

ただ、私自身はやきもち焼きなところがあるので、江添さんが話すとムッとしてしまうこともあって不平等なんですけど(笑)。彼の寛容さに憧れて尊敬しているので、フラットに受け入れる努力はしたいなと思っています。

江添:無理だと思うな~。

長谷川:頑張ります!(笑)。でも、お互いに性的パートナーができて、みんなで一緒に暮らせたら1番いいねとは話しているんです。

私たちは籍を一緒にしてはいませんが、場合によってはお互いの性的パートナーと入籍をして、同居するのが面白いんじゃないかって。

――お互いの性的パートナーと同居・入籍すると、どんなメリットがあるんでしょうか?

長谷川:1つの理由は合理的だからです。うちは共働きなので扶養関係にはなれないんですけど、たとえばお互いの性的パートナーが無職や学生で、扶養関係になれるようなら入籍したうえで、江添さんと同居したほうがお得ですよね。

江添:婚姻制度は1人が稼ぎ、1人が家を守るような想定のもとに制度づけされていますよね。なので、結婚相手に収入がない場合は収入から控除が発生しますし、配偶者の健康保険や年金に入ることもでき、配偶者が死んだ後も年金が入ってくるので、無職の人と結婚するのは世帯としてメリットが大きいんです。

――婚姻制度をそんな風に捉える人は少ないかもしれませんね。

長谷川:婚姻制度は突き詰めれば合理的に使えると思うのですが、それに乗っかろうとしている人は少ないですよね。

今の私と江添さんには法律婚のメリットはないのでしていませんが、必要に応じて環境をカスタマイズしていくことはあるかもしれないなと思います。

――最後に、今ある結婚のかたちに「しっくりこない」人たちに向けて、メッセージをお願いします。

私の話になるんですけど、「ちょっと嫌だな」と思ったことは絶対にやらないというところで今まで生きてきたという部分があるので、悩んでいる女性に対しても「少し違うな」とか嫌だなって思ったことは、とことん反対したり逃げたりして、自分の生きやすいような人生をカスタマイズしていってほしいなと思います。

.........

インタビューの中で、長谷川さんは何度も「カスタマイズ」という言葉を口にしていた。

今ある制度やかたちがしっくりこないときには、制度やかたちを、自分にフィットする仕様に変えていく。小さな違和感にも妥協せずに自分自身を見つめありのままで生きやすくいられるように徹底して向き合っていく。

「カスタマイズ」という言葉は、長谷川さんの生き方そのものを体現している気がした。

(取材・文:佐々木ののか  編集:笹川かおり) 

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