《大阪地震》ブロック塀が凶器に、事前にできることは? 寿栄小で9歳女児が死亡

小学校のプールを囲むブロック塀が、約40メートルに渡って道路側に倒壊しました。

大阪府北部で6月18日発生した大地震により、震度6弱を記録した高槻市。小学校でブロック塀が倒壊し、通学中の女児が死亡した。

地震で倒壊し、下敷きとなった女児が死亡した市立寿栄小学校のプール外壁=18日午前、大阪府高槻市
地震で倒壊し、下敷きとなった女児が死亡した市立寿栄小学校のプール外壁=18日午前、大阪府高槻市
時事通信社

高槻市災害対策本部によると倒壊したのは、市立寿栄小学校のプールの周囲を囲む高さ3.5メートルの壁のうち、ブロック8段で組まれた上段部分(高さ1.6メートル)。約40メートルに渡って道路側に倒れた。

この小学校の4年生の9歳女児が、壁に挟まれて心肺停止になった。病院に緊急搬送されたが、午前9時4分に死亡が確認された。女児は通学中だったようだ。

高槻市長は18日午後の会見で、女児が亡くなったことについて、「児童の保護者、ご家族に対して、心からお悔やみ申し上げます。学校施設の一部の壁が倒壊したことにより死亡事故が発生したことについて深くお詫び申し上げます」と謝罪。頭を下げた。

大阪府警によると、午後2時10分時点で大阪府内の死者は3人。大阪市東淀川区でも街路のブロック塀が崩れ、下敷きになった80歳代の男性が死亡。茨木市内では自宅で本棚の下敷きになって、80歳代の男性が死亡した。

■ブロック塀の倒壊による死者、過去にも

倒壊前の寿栄小学校のブロック塀(Googleストリートビューより)
倒壊前の寿栄小学校のブロック塀(Googleストリートビューより)
Google

過去の朝日新聞の報道によると、宮城県沖地震(1978年)や福岡沖地震(2005年)で死者が出たことから、地震によるブロック塀の倒壊は全国的に問題になっている。

塀の基準は建築基準法で決まっており、宮城県沖地震後の1981年に改正された。高さが1.2メートルを超える場合は鉄筋を入れることや、塀を支える「控え壁」を設置することなどが、規模に応じて決められているが、法改正前の古い塀は鉄筋が入っておらず、補強工事が済んでいないケースが多いという。

2016年の熊本地震では、当時29歳の男性が益城町で、約4メートルの高さから落ちてきたブロック塀の下敷きとなって死亡。遺族が塀の所有者に対し、慰謝料など約4200万円を求める訴訟を2018年3月、熊本地裁に起こしている。

■倒壊を防ぐためにできることは?

工業会のサイトが掲載している図面「鉄骨で補強する一例」
工業会のサイトが掲載している図面「鉄骨で補強する一例」
全国建築コンクリートブロック工業会

全国建築コンクリートブロック工業会では、以下のような注意を公式サイトに掲載している

「ブロック塀は地面から自立をしている板状の単純な構造物です。見掛けはしっかりしていても、その一部に安全性が欠けると塀全体の倒壊につながる危険性があります。特に地震時における道路側への塀の倒壊は、人身への被害また道路を塞ぐことによる避難や救助・消防活動などの妨げになります」

同サイトの「診断カルテ」で注意が必要と出た場合には、早急に専門家と相談をして、そのブロック塀の状態に応じた補強をすることが大切と訴えている。

■菅官房長官が通学路での点検指示

NHKニュースによると、9歳女児ら2人がブロック塀の倒壊で死亡したことを受けて、菅官房長官は与党幹部との協議会で、全国の通学路にあるブロック塀を点検するよう指示した。

18日昼に開かれた政府・与党の幹部による協議会で、公明党の井上幹事長は「ブロック塀の危険性はこれまでも指摘されており、耐震基準の整備や見直しもしてきたのに、こうした事態はあってはならない。緊急の点検・調査を行い、必要な場合には直ちに工事してもらいたい」と要請。これに対し、菅官房長官は全国の通学路にあるブロック塀を点検するよう関係省庁に指示したことを明らかにしたという。

(UPDATE)建築基準法に違反していたことが判明

朝日新聞デジタルによると、倒壊した寿栄小学校のブロック塀について高槻市市教委は18日夜、建築基準法に違反していると認めた。

塀は、地面からの高さが全体で3.5メートルだが、建築基準法施行令では、高さが1.2メートルを超す塀は、一定の間隔ごとに、強度を高めるための「控え壁」を設置することが定められている。

寿栄小学校のブロック塀は、控え壁がないことに加え、塀の高さも「2.2メートル以下」という基準を超えていたという。(2018/6/19 09:18)

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