アート&カルチャー
2018年06月23日 15時10分 JST | 更新 2018年06月23日 15時11分 JST

世界を驚かせるチームラボの仕掛け人が提唱する「ボーダレス」とは?

「世界は、ほんのちょっとなら変えられる」

AbemaTIMES

21日、お台場に過去に類を見ない超巨大デジタルアートミュージアムが登場した。手がけたのは、圧倒的な技術と作品の美しさで世界を魅了し続けるデジタルアート集団「チームラボ」。

先月2日、オープン前の館内を見せてもらうと斬新な技術を駆使していた。例えば凹凸のある複雑な場所へのマッピングは約200万円もする最新プロジェクターで映像を投影していた。また、物の動きに応じて作品を変化させるため、約60作品ある全ての作品に精密センサーが搭載されており520台のコンピューターで制御しているという。

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ミュージアムのテーマは「ボーダレス」だ。「呼応するランプの森-ワンストローク」では、部屋中に敷き詰められた鏡によってランプが360度・無限に広がる幻想的な雰囲気を体感できる。ランプの色は人の動きに応じて変化し、中に入ると、他の人が本物なのか、それとも鏡に映った虚像なのかがわからなくなってしまう不思議な感覚を味わえる。

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四季をイメージした色鮮やかな花や蝶を壁に映し出す「花の森、埋もれ失いそして生まれる」は、一瞬たりとも同じ風景はなく、常に変化し続ける。見る人が壁の絵に触れると、手の動きに併せて花びらが散り、蝶が消えていく。室内にいる観客とアートがインタラクティブで作用しつづける仕組みだ。チームラボ代表の猪子寿之氏は「立っている人の服に蛹が映り、そこから出てきた蝶だけが飛んでいる。舞っている蝶は触ると死んでしまうので、人々から産まれた蝶よりも、触られた蝶が多くなると、部屋から絶滅してしまう」と独特の世界観を説明する。

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この他、光と鏡が連動した「Wander through the Crystal World」では、雨天など、自分が選んだ自然の状態に変化。四季折々の里山の風景が映し出される「地形の記憶」では、終わりのない棚田の中に身を置き、草をかき分けて進む雰囲気を体感できる。また、「人々のための岩に憑依する滝、小さきは大きなうねりとなる」の滝は、岩に当たって弾ける水の流れや白い水しぶきが繊細に表現されている。

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■「デジタルによって、イメージを物質に付着・固定化させる表現から解放された」

取材にあたった小松靖・徳永有美アナウンサーが人と虚像の区別がつかなくなったり、「酔います」と感想を漏らしたりしていたように、作品と作品の境界、作品と鑑賞者の境界など様々な境界を超えることを目指している。

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「作品自身が動き回り別の作品と融合する」「2度と出会えない今だけの風景」「通路は真っ暗、順路説明もなし」「鑑賞者もアートの一部」といったコンセプトのもと、これまでの美術館の「ここに行けばこれが見られる」という常識を覆し、東京ドーム約1個分にも及ぶ広大な展示スペースを歩き、他の様々な作品へと入り込んでいくのだ。

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猪子氏は「作品同士の境界が曖昧で影響を与え合うということと、世界にはそもそも境界がないということを表現したかった。地球と宇宙の間には本来境界はなく、連続的な変化のなかで宇宙になっていく。多くの境界は人間が後から作ったもので、境界がある状態の方が異常なのかもしれない。世界のそういう側面を作れたらいいと思っている。都市にいる人は自分が独立した存在だと感じてしまうが、本来は世界と非連続的につながっていることを感じてほしかった」と説明する。

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そのため、順路の説明なども設けてはいない。「動物園は動物を檻に閉じ込めているので地図を作ることができるが、本物の森にいる動物の地図は作れない。作品が動いてしまうのでマップみたいなものは作れない。世界の何かを見ているってことは、それ以外のどこかを見ていないということ。彷徨って、佇んで、歩き回って、その中で色々なものを発見して楽しんでもらえたら。でも、見たことがない世界で、暗いとちょっと危ないので、さすがに真っ暗なところは無くした(笑)」と話す。

チームラボはプログラマー、数学者、建築家、エンジニアなど、様々な専門家で構成されている。表現に最新のデジタル技術を用いる理由について猪子氏は「これまで人間が脳内に思い描いたものを表現するためには、イメージを物質に付着させて固定化しなければいけなかったが、デジタルにすることで物質から分離・解放され、表現や概念の幅が広がる。より自由になるポジティブな方法だ」とした。

■「"世界をほんのちょっとでも前に進める係"をしたいと思う」

日本全国で活動してきたチームラボだが、すでにアジアや欧米でも大規模な展示会を開催している。アメリカやシンガポールなどの常設展に加え、この夏にはフィンランド・ヘルシンキ、また中国・深圳では都市開発プロジェクトまで手がける。そんなチームラボが2年前から準備してきたのが、芸術の都・パリでの個展「teamLab:Au-delà des limites」だ。日仏交流160周年を祝う芸術文化イベントの先陣を切る。

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彼らの"ボーダレス"なデジタルアート作品に、イル・ド・フランス地域圏のジェローム・シャルティエ副知事は「フランス人みんな夢中になるはずだ。(フランスにとってボーダレスとは)国境のない愛、永遠と繋がる愛。それをマジックのように表現した」と絶賛。ニューヨークを中心に世界6か国に展開する「Pace Gallery」のCEO・Marc Glimcher氏も「チームラボは新しいアートの歴史をつくる数少ないパイオニアの1つ。アートを進化させている。ボーダレスこそアートの未来」と評価。ヴォーグやルモンド紙など、多くの地元メディアも紹介した。

「技術的にすごいすごくないじゃなくて、新しい概念を提唱して、その概念が本当に形になっていることに対して、100%ポジティブ。このテーマの展覧会をフランスでやれたというのは、本当に嬉しい」と猪子氏。

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実は、"ボーダレス"の原点はパリにあったという。エッフェル塔の近くにあるケ・ブランリ美術館の庭がそれだ。「普通の庭だと、均等にものが独立していて工業製品のよう。でもここは自然の森みたいに境界が曖昧で、雑草が生えていてもわからないくらい。逆に本当の自然だと人間からするとパワフルすぎて居心地が悪い」(猪子氏)。自然に息づく草花と、人が植えた緑が作る、とても曖昧でボーダレスな空間と、そこに集う人々が思い思いに過ごす姿からインスピレーションを受けたようだ。「例えばニューヨークだとハイラインという場所の居心地がいい。実は線路だった場所で、100年前に廃線になって自然林になったのを利用しながら歩道を作ったり、ちょっと手入れしたり。自然を活かしたより良い環境、より良い空間に興味があるのかもしれない。生まれ育った家の近所に小さな原生林の山があった。今となってはそれもラッキーだったのかなと思う」。

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国際的にも評価されるチームラボだが、猪子氏は自身を日本代表のように思うことはないと話す。「"世界をほんのちょっとでも前に進める係"をしたいと思う。でも、日本は今までなかった価値基準や概念をポジティブに受け止めるのが苦手かも」。

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そんな猪子氏が常々口にするのが「世界は、ほんのちょっとなら変えられる」という言葉だ。「映画やゲームのようにスターがいて世界を完全に救うことはできないし、全部はコントロールすることもできないが、自分の存在によって世界がちょっと変わることがあると思う。自分は一切関係ないということではなく、色んな人が関わって少しずつ都市は変えられるものなので、そういう風にしていきたいなと思う」。

「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボ ボーダレス」は、お台場・パレットタウンで開催中だ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶猪子寿之氏による解説を期間限定で公開中