道路の穴ぼこを通報したら野球観戦券プレゼント。自治体が穴ぼこ探しに熱心なのはなぜ?

インフラ老朽化ともつながりがあるようだ。

道路などのインフラ老朽化が進み、トラブルの対応に頭を悩ませている自治体は多い。事故予防につながる発見をどう効率的に進めるかも課題だ。そんな中、埼玉県所沢市が2015年から始めた「穴ぼこ通報キャンペーン」が好評だ。2018年も7月9日から2週間開かれる。

道路にあいた穴の通報を増やし、早く補修に取りかかれるようにするのがねらい。所沢市道路維持課の担当者は「市内で課員が道路パトロールをして穴などを見つけてふさぐ作業をしているが、耐用年数が経ち、劣化が進んだ結果、市の確認だけでは追いつかない」と説明する。

キャンペーン1年目の通報は66件、51カ所の補修につながった。2年目、地元球団の西武ライオンズから譲り受けているペア観戦券を謝礼にすると通報が115件、2017年度は138件の通報が。期間中の通報件数が2年で倍増したことになる。

これだけ通報に力を入れているのは、穴が放置されていると、車のタイヤのパンクや歩行者のけがなどの原因につながり、ひいては市が修理や治療費用を補償しなければならなくなるからだ。

2014年6月には、梅雨の大雨で市道のひび割れから雨水がしみこみ、舗装の下の路盤が緩んだことで舗装がはがれ、一晩で大きな穴が開いた。この箇所で車のタイヤのパンク事故が1日に4件も起き、補償件数の多さを巡って市議会でただされたこともあった。

所沢市の公式ホームページから

仙台市は試験運用を経て2018年4月から、道路の不具合の通報にアプリ「まちもん」(Fix My Street Japan)を使っている。地図上に穴ぼこの箇所を示せるので、場所の特定が早い。

まちもん
まちもんの公式サイトから
通報当日の夕方には補修が完了していた
通報当日の夕方には補修が完了していた
まちもん

日本では1960年-1970年代に整備された道路や橋などのインフラが一斉に老朽化している。特にお金のかかる橋やトンネルの改修は費用の不足などから進んでいないのが現状だ。また、小規模自治体などでは専門技術者の不足からきちんとした点検がされていないところもある。

国土交通省の資料から

国土交通省の審議会による「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」(2014年4月)によると、建設から50 年を超す橋の割合は2013年の18%から2023年には43%まで増えるとされている。トンネルも20%から34%になる予定だ。ただ、政府や自治体の道路整備予算が削減されるなか、財政難の自治体では、ただちに改修に取りかかれないままのものも少なくない。国土交通相の調べでは、自治体管理の橋が老朽化や変形などの理由で通行規制がかけられた件数は、2008年4月の977件から2018年4月には2559件まで増えた。

2012 年 12 月、中央自動車道の「笹子トンネル」内で、天井のコンクリートが約130メートルに渡って崩れ落ちた。この落下に巻き込まれた乗用車などに乗っていた9 人が死亡、長く通行止めになった。「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」は、この事故を「老朽化時代が本格的に到来したことを告げる出来事」と総括している。

AFP PHOTO / KAZUHIRO NOGI

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