是枝裕和監督の新作、カトリーヌ・ドヌーヴの主演が決まる

「この人だったらいいなと思って書いていたキャスティングが全部、実現してしまった」
是枝裕和/カトリーヌ・ドヌーブ
是枝裕和/カトリーヌ・ドヌーブ
時事通信社

是枝監督新作は仏大女優カトリーヌ・ドヌーヴ主演 希望通りの配役に「さぁ、どうしよう」

『第71回カンヌ国際映画祭』コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞し、興行収入が37億円を突破した映画『万引き家族』の是枝裕和監督(56)の長編15作目となる新作『La Verite(仮)』(※「e」にアクセントあり 邦題未定 2019年公開予定)の製作が決定し、フランスの至宝と呼ばれる世界的大女優、カトリーヌ・ドヌーヴ(74)が主演することが決まった。そのほか、ジュリエット・ビノシュ(54)、イーサン・ホーク(47)ら豪華な面々をキャストに迎え、現地スタッフたちとタッグを組んだ日仏合作となる。

フランス映画界のスター女優の母(ドヌーヴ)と、元女優志望だった脚本家の娘(ビノシュ)の物語。母の自伝出版を機に、娘がアメリカから夫(ホーク)と幼い子どもを連れて帰省する。母と娘の再会は、たちまち対立へ変容する。さまざまな真実が露わになり、愛と恨みが告白される...。母はSF映画に出演することになるが、自伝に自分の名前がないことに傷ついたパーソナルアシスタントが突然辞めてしまい、娘が代わりに撮影現場に付き添うことに...。その現場で出会った新進女優(リュディヴィーヌ・サニエ)の姿に、母はかつて親友でライバルだった、今は亡き女優の面影を重ねていくのだった。母と娘は長年に渡ってへだてられてしまった2人の関係を修復できるのだろうか...。

ドヌーヴは「ここ数年、是枝監督の映画を観て、そしてパリ、カンヌ、東京でもお会いする機会がありました。称賛の気持ちをお伝えすることはできたのですが、まさか私たちが一緒に映画を作れる日が来るなんて想像もしていませんでした。一緒に映画を作れる...、それもフランスを舞台に!」と驚きのコメントを寄せた。「魅力にあふれ、ユーモアと同時に残酷さを備えた素晴らしい脚本です。言語の壁については、恐れるよりも私はむしろ好奇心をそそられます。それがもう1つの挑戦になるだろうと知りつつも、是枝監督と一緒に仕事をするのがたいへん楽しみです」と撮影を心待ちにした。

撮影は10月初旬~12月上旬まで約8週間を予定。邦題も決まっていない中での情報公開について是枝監督は「本当はもう少し後にと思っていたんですが...。いろんな情報がダダ漏れになって、しかもあまり正しくないかたちで出てしまっている」と説明。ドヌーヴについては「依頼は2年ぐらい前。意外と、いろんなところで会っていた。最初は社交辞令的に『いつか、一緒にできたらいいですね』という話が出ることがあったんですが、具体的なオファーは、この企画が脚本になってから。自分にとっては、フランス映画のアイコンのような存在ですが、せっかくフランスで撮影するのなら、と思い切ってオファーをさせていただきました」とした。

ドヌーヴとビノシュは脚本の段階から関わっているそうで、是枝監督は「同志的な感じ」という。脚本については「役者とはいったいどんな存在なのだろう。役を生きている時、演技で泣いている時、笑っている時、役者本人の存在と感情はどこにあるのだろう。そんな素朴な疑問から書き始めた脚本でした。今から15年程前に、『クローク』というタイトルで劇場の楽屋だけを舞台にした一幕もののお芝居を書き始めたのがスタートでした」と振り返り、当時は「残念ながら力不足で脚本は完成しませんでした」と打ち明けた。

それが11年にビノシュが来日した際の対談を機に「企画のキャッチボールをしていくプロセスで、引き出しの奥に眠らせておいたこの企画が再浮上し、フランスを舞台に書き直してみることにしました。その時にこの物語を、女優の母と女優にならなかった娘の話にしてみようというアイデアが生まれました」と明かした。

「ホームドラマじゃないんですけどホームドラマっぽくなって来ている。母と娘の確執が、どういうふうに溶けていくのか、いかないのか、と。書き直し続けていますけど、そっちの方に話が変化していってます」と脚本の現状も語った。

基本的にはフランスのスタッフが中心となって製作する。フランス人俳優の特徴については「ビノシュさんとかは気に入った監督がいると自分から積極的に『一緒にやらないか』とアプローチする。非常にポジティブですよね。そういった積極性はビノシュさんだけじゃなくドヌーヴさんにも感じる。現役バリバリという感じが頼もしいなと思う」と信頼を寄せる。

豪華キャストが勢ぞろいしたのには、パルムドール受賞も大きな影響があったという。ホークはカンヌの直後に面会して最終的なOKをもらえたそうで、その際に「このタイミングだと断りにくい。これは断れない企画になっちゃったな」と言葉をかけられたそう。「イーサン・ホークの役は当て書きしていたもんですから、断られたらどうしようかと思うぐらい」熱望。「好きな人に声をかけたらOKもらえちゃった。この人だったらいいなと思って書いていたキャスティングが全部、実現してしまった。さぁ、どうしようという感じですが、頑張ります」と意気込んだ。

現在の期待と不安の割合について「オーデションを経て、イーサン・ホークが決まったので、7対3ぐらいで期待が」とにっこり。「フランスの映画というつもりはない。いつもどおり。映っているのが日本人かフランス人の違いだけで押し切ろうかと思っている。今回は言語や文化の違いを乗り越えて監督するという、刺激的なチャレンジになりますが、本物の『役者たち』に正面から向き合ってみたいと思っています」と結んだ。

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