日本ボクシング連盟が告発された内容は? 渦中の山根会長は姿見せず

国内のアマチュアボクシングを統括する団体で、一体なにがあったのか。
日本ボクシング連盟・山根明会長 撮影日:2015年10月19日
日本ボクシング連盟・山根明会長 撮影日:2015年10月19日
時事通信社

国内のアマチュアボクシングを統括する団体「日本ボクシング連盟」に対し、役員や元選手ら333人が7月27日、日本スポーツ振興センター(JSC)や日本オリンピック委員会(JOC)などに告発状を提出した。

告発内容は、試合用グローブなどをめぐる不透明な独占販売、パワハラ、2016年岩手国体での不正審判疑惑など12項目。日本ボクシング連盟の終身会長・山根明氏への権力集中を告発するものにもなっている。

その中では、JSCがリオ五輪代表の成松大介選手に交付した助成金240万円の不正流用が指摘されている。日本ボクシング連盟の山根明・終身会長が、他の2人の選手と3等分するよう指示したとしている。

助成金は国費から捻出され、その原資は税金だ。第三者への譲渡など目的外の使用は認められていない。

2016年の岩手国体では、2度のカウントをとられた選手が勝利。告発状では、不正審判の疑惑があったと指摘された。

勝ったのは奈良県の選手で、山根会長は奈良県連盟の元役員。アマボクシングの世界では「奈良判定」という言葉があり、試合で奈良県の選手を優遇する空気があったという。

朝日新聞デジタルは「会長の意にそぐわない判定をして干されたらおしまい。接戦になったら奈良に有利にせざるを得ない」と、ある審判の証言を伝えている。

さらに告発状では、山根会長がスイートルームへの宿泊や豪華な食事などを要求し各都道府県連盟にとって過大な負担になっているとしている。

告発状には、全国大会を開催する都道府県が山根会長を接待する際の注意事項を列挙した「おもてなしリスト」が添付されていた

日刊スポーツによると、「おもてなしリスト」の内容は以下の通り。

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◎ホテルの会長部屋

・ミネラルウォーター(1ケース=24本)・・・6本は冷蔵庫へ

※銘柄は問わない。愛媛県はサントリーの六甲のお水

・みかん1ネット・りんご(ムツ)2〜3個 高級品

・ぶどう(デラウエア?) 高級品

・バナナ1房 高級品

・メロン

・アーモンドチョコ(明治)

・森永ミルクキャラメル

・カンロ飴

・いかみりん

・乾パン1缶

・麦焼酎(赤シャツ500ml愛媛の銘柄 1本)瓶であること

※銘柄は問わない。赤シャツは愛媛県のもの。

・梅酒(栄光酒造の蔵元の梅酒720ml 1本)瓶であること

※栄光酒造は愛媛県、一般歴なチョーヤの梅酒でもよいとのこと

・せんべい詰め合わせ 1缶(のり、サラダ、しょうゆ等の詰合せ)

・落花生

・剣先するめ

◎体育館 会長控室

・ドリップコーヒー(2種類)20パック

・お茶パック(緑茶とほうじ茶)

・紙コップ

・カンロ飴1袋

・その他の飴2種類くらい各1袋

・せんべい詰め合わせ 1缶(のり、サラダ、しょうゆ等の詰合せ)

・みかん等の果物

★その他の注意事項

・肉・・・和牛肉しか食べない。(豚・鳥ダメ) ハンバーグも合挽きはダメ

・牡蠣は生でも何でも食べる(好き)

・ホヤ貝(大好き)

・カニ

・エビ、アワビは食べる・・・車エビ大好き

・ゲソ

・塩サバ

・タイやマグロは食べる

・ウナギやアナゴなど長いものは食べない

・冷蔵庫にミネラルウォーターを冷やして置くことと、常温のミネラルも用意

・梅酒

・麦焼酎

・ジョニーウォーカー黒

・目玉焼き・・・外はカリカリ、中は半熟

・ふりかけ・・・かつおぶし

・食べ物、揚げたての物は食べる。

・夕食の内容についてはホテル側と要協議、会長だけ別の物を出すことも検討

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一連の問題の告発をうけて、ロンドン五輪金メダリストで世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王者の村田諒太選手がFacebookを投稿。成松選手を慮りつつ、「そろそろ潔く辞めましょう、悪あしき古き人間達たち、もうそういう時代じゃありません」と、日本ボクシング連盟を批判した。

告発状について、日本ボクシング連盟は8月1日に公式サイトで反論文を掲載した

まず、助成金の不正流用については「遺憾ながら、これは事実」と認めた。成松選手に支給されるはずだった160万円は、選手に返却したとしている。

その上で、以下のように釈明した。

「3人の有力選手のうち、どの選手をトップアスリートとして選ぶべきか、いずれも甲乙付け難いと考え、悩んでいた」

「他の2選手の強化にも助成金がまわすことができればボクシング全体の強化に役立つと安易に考えた」

「会長が他の2選手のことを思う親心からしたことであり、会長個人が個人の利益目的からしたことではない」

ところが、公式サイトで当初掲載された文章では、助成金の流用は「山根会長の責任」「日本スポーツ振興センターやJOC(日本オリンピック委員会)に謝罪致します」と記されていたが、1時間足らずで削除連盟は「誤って作成途中の文章が掲載された」と釈明した上で再掲載した。

連盟側は助成金の不正流用は認める一方で、指摘を受けた他の問題については反論した。

岩手国体の不正審判疑惑については、「プロとは異なり、ダウンはクリーンヒットの一打であり、それ自体に加点することはありません」「さも不正審判であるかのように吹聴することはボクシング審判に対する不信を煽るものであって断じて容認できません」と、強く反論している。

また、山根会長への接待については「日本連盟がそのような指示をしたことはありません」「広い部屋を会長室としているのは、夕食後に役員・審判員のミーティングのため、会議室等を別に確保すれば費用が掛かるので、その費用負担を軽減するため」「告発側の言い分は、全く的を外れています」と否定した。

8月1日には全国高校総体(インターハイ)ボクシング競技の開会式が岐阜市内で開かれた。壇上には山根会長の席も設けられていたが、体調を崩し欠席。検査のため、大阪の病院に入院したという。

開催地の岐阜県ボクシング連盟・四橋英児会長は、開会の挨拶で「一連の報道で恥ずかしい思いをしている。問題が事実だとすれば、山根会長をはじめ周囲の人間には辞めてもらいたい」と、辞任を求めた

告発状で不正審判の疑惑が取り沙汰されたこともあり、今回のインターハイのボクシングは、岐阜県ボクシング連盟が全試合をカメラで撮影し、映像として記録することになったという。

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