「集団レイプされ、逆卍のタトゥーを入れられた」17歳少女の証言がモロッコを震撼させている

支援が集まる一方で、少女を攻撃する声も
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「誘拐され、集団レイプされて、無理やりタトゥーを入れられた」とする17歳少女の訴えが、モロッコを震撼させている。地元テレビが、被害者女性ハディージャのタトゥーとタバコを押し付けられた火傷の痕を、彼女の証言とともに報じた。

ハディージャは、親戚の家から誘拐されて2カ月間監禁され、拷問され、「逆卍」も含めたタトゥーを無理やりほどこされたのだと語った。

インタビューは反響を呼び、女性に対する暴力を止めさせようという大きな流れが起きた。7万5000人以上の人が、「私たちはみんなハディージャだ」と書いた嘆願書に署名をし、ソーシャルメディアのトレンドにもなった。

当局はこの事件で8月28までに12人の男性を逮捕した。ハディージャとその家族に対する支援は広まり続けている。

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被害者が攻撃される文化

しかし、この保守的な国では、レイプの被害者が攻撃されがちだ。容疑者の親たちの中には、ハディージャの信頼性を損なおうとする発言をするものもいる。

近所の人たちが、ハフポスト・マグレブに状況を語った。

ある容疑者の母親は、地元メディアに対して、ハディージャは喫煙し、酒を飲み、川で泳ぐような人物で、薬の売人と付き合っているし、タバコの火を手でもみ消すような女だと語ったという。

似たような話だが、別の容疑者の母も、モロッコのChouf TVに出演してハディージャを非難した。曰く、ハディージャは「盛り場をフラフラして、男に酒やタバコ、クスリをせびるような女だ。それに、無実の人たちを糺弾しようとしている」。

なぜ行方不明だと報じられていなかったのかなどと疑問を呈し、ハディージャが話をでっち上げたのではないかと疑う人もいた。

こうした非難は、ハディージャを良く知る人たちに大きなショックを与えた。近隣に住むヨウセフさんもショックを受けたひとりだ。「もし、本当に売春していたとすれば、あんな平凡な暮らしはしていないでしょう」。ヨウセフさんはハフポスト・マグレブに語った。

ハディージャの父モハメドさんも、次のように語り、娘を擁護する。

「親たちが、そういう風に言うのはわからないでもないです。子どもに容疑がかかってるんですから。もちろん誰も傷つけたくはないですが、正義はなされるべきだし、私はでっち上げなんてできません」

父親は、ハディージャが「この人たちは違う」と述べたため、逮捕された14人のうち2人が釈放されたと指摘する。

ヨウセフさんも「もし、でっち上げだとしたら、2人を見逃すなんてこと、しないでしょう」と述べた。

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「彼らは獣ですか?」

ハディージャの母親は、AP通信のインタビューで、娘の身体を見たときに卒倒したと話す。

「犯罪に巻き込まれて、こんな状態の娘を見ることになるとは......。油断していました。私は卒倒しました。崩れ落ちました。タトゥーをされ、火傷をされ、尊厳を傷つけられた娘を見ることになったんです」。

母は、家族のプライバシーを守るため、娘をファーストネームの「ハディージャ」とだけ呼んだ。

「なぜ、私の子がこんな目に遭うのでしょう? 彼らは獣ですか? 娘は元に戻ることがあるんでしょうか?」

モロッコ中心部の、貧困と高い非識字率・失業率のエリアで暮らす母は、こんな風に問いかけた。

深刻な「女性への暴力」

女性に対する暴力は、モロッコでは広く残っていて、話題にすることすらタブー視されている。

2016年にUNウィメンがモロッコ首都付近で実施した調査では、41パーセントの男性が「配偶者に対するレイプは、経済的支援で正当化できる」と回答した。

また過半数が、感情的に妻を虐待してきたと回答。15%は女性に暴力を振るったことがあるとしている。

この調査によると、実に62%の男性が「家族の絆を保つために」女性は暴力に耐えるべきだと考えていた。

「欠陥社会の犠牲になるのは、いつも女性だ」

「私たちはみんなハディージャだ」と題した嘆願で、モロッコの著者・映画監督アブデラ・タイアさんは「モロッコのレイプカルチャー」を食い止めるために何かすべきだとして、政府や王を批判した。嘆願書には、多数のモロッコの知識人たちが署名していると、AP通信が報じている。

「これは残念ながら、来週には、もしくは来月には、忘れられる出来事かもしれません。時は過ぎていきます。また同じような、痛ましい事件が起きてしまうでしょう。何にもなりません。この社会は解決策を探そうとすらしていません。この現状に驚かないでください。これはライフではなく、ジャングルです。そして変わろうとしない欠陥社会の犠牲になるのは、いつも女性なのです」

支援が集まる

17歳少女の代理人を務めるイブラヒム・ハシャーン弁護士は、彼女が2カ月も監禁され、集団レイプをされ、タトゥーを入れられたと警察に訴えた。裁判を待つ間にも、様々な組織や医者、法律家、市民たちがハディージャの支援に集まっている。
17歳少女の代理人を務めるイブラヒム・ハシャーン弁護士は、彼女が2カ月も監禁され、集団レイプをされ、タトゥーを入れられたと警察に訴えた。裁判を待つ間にも、様々な組織や医者、法律家、市民たちがハディージャの支援に集まっている。
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地元の団体はハディージャに血液テストを受けさせた。また、保健省が入院のための費用をまかなってくれたと父親は話す。

「今日、ハディージャの顔に、また笑みが浮かびました。状態は安定しています」「みなさんの支援のおかげで、彼女は再び希望をもつことができました」

ボランティアで弁護を引き受けたイブラハム・ハシャーン弁護士によると、誘拐とレイプの容疑で12人が拘束されたが、3人がまだ逃亡中。裁判官の調査とヒアリングは、9月6日に予定されているという。

(執筆:Ibtissam Ouazzani記者 ハフポスト・マグレブ / 英語版から翻訳しました)

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