ゾウ90頭が殺害される。アフリカ最大の生息地ボツワナで史上最悪の大虐殺が繰り広げられた理由とは?

「密猟者たちは今、ボツワナを狙っている」

自然保護団体「国境なきゾウたち」は、アフリカ南部ボツワナの野生動物保護区周辺で、2018年7月以降の2カ月間に90匹のゾウの死骸を発見したと明らかにした。BBCなどが9月4日報じた。

ボツワナは、大型の野生動物が数多く生息している国として知られているが、最近は密猟の蔓延が懸念されている。

「国境なきゾウたち」の創設者で、保全生物学者のマイク・チェイス博士によると、密猟者たちが標的にしたのは35歳以上の雄のゾウで、ボツワナ国内のオカバンゴ湿地帯周辺の水場付近で殺害し、その牙を切り取ったという。ゾウ以外にも、シロサイ6頭も殺害された。

チェイス博士はハフポストUS版の取材に対し、「今回の密猟の規模は、アフリカで過去に起きたものの中で最悪だ。毎日のように、ゾウの死骸を数えている」と語った。

■ アフリカ最大のゾウ生息国で起きた大虐殺

「国境なきゾウたち」によると、7月10日からボツワナでカバやゾウ、サイなど動物の個体調査をしたところ、ゾウの死骸を発見するようになったという。

ボツワナには約13万頭のゾウが生息しており、アフリカにいるゾウの3分の1以上を占めている。

ボツワナでは5月まで厳格な密猟の取り締まりを行っていた。反密猟部隊を組織し、部隊には密猟者を現場で射殺する権利を与えていた。

「殺害されたゾウは、60〜70ポンド(約27〜31キロ)以上の大きな牙を持っていた」と、チェイス博士は語った。

アフリカ大陸で2年間にわたって大規模なゾウの生息数調査を行っていたチェイス博士によると、「特定の重さの牙が引き抜かれている。大きな象牙は需要が大きいのではないか。アフリカで、大きな牙を持っている動物はほとんど残っていない」という。

「密猟者は季節によってできる水場で、水を飲みに来る雄のゾウを狙っているようだ」

【閲覧注意】下の画像には、殺害されたゾウの画像を掲載しています

『国境なきゾウたち』がボツワナでゾウの個体数を調査していた期間に撮影したゾウの死骸。
『国境なきゾウたち』がボツワナでゾウの個体数を調査していた期間に撮影したゾウの死骸。
ELEPHANTS WITHOUT BORDERS

■ 「狩猟が解禁されたようなものだ」

「国境なきゾウたち」は、ボツワナ政府の野生動物・国立公園保護局(DWNP)と提携し、ゾウの個体数調査をしてきた。「ナショナルジオグラフィック」によると、保護局は4年ごとに調査を依頼している。

しかしボツワナ政府は、「国境なきゾウたち」の調査結果は「誤りであり、誤解を招く」として否定している。政府は声明で、「国境なきゾウたち」が記録した死骸の多くは「密猟によるものではなく、自然死や、人とゾウが対立する中で報復として殺害されたものがほとんど」だと述べた。

地元紙「サザン・タイムズ」によると、反密猟部隊は過去20年で52人の密猟者を殺害したが、政府は2018年5月、説明もなく反密猟部隊の武装解除を決めた。

政府はFacebookで、「DWNPの反密猟部隊を武装解除したことが、ゾウの密猟が増加した原因のように報道されたのは、ボツワナ政府として遺憾に思う。実際には、武装解除で反密猟の効力や業務にいかなる影響も及ぼしていない」と投稿した。

しかしチェイス博士はBBCに、「近隣諸国ではゾウの数がすでに『局所的に絶滅の危機にある』レベルまで減少しており、反密猟部隊が武装解除した影響で、密猟者たちはボツワナに侵入している」と述べた。

「密猟が深刻になることはこれまで警告されていたことだし、我々は密猟の蔓延に備えていたつもりだ」と、チェイス博士はBBCに語った。「密猟者たちは今、ボツワナを狙っている。密猟者たちにとっては、世界で最もゾウが多く生息するボツワナで狩猟が解禁されたようなものだ」

ハフポストUS版より翻訳・編集しました。

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