大坂なおみ、ブーイングを拍手に変えた言葉の力

日本人女子初の4大大会優勝「セリーナ、戦ってくれてありがとう」
EPA=時事

大阪市出身。日本人の母とハイチ出身の父(ハイチ系アメリカ人)の間に生まれ、3歳からアメリカに移り住む。やがて磨き上げた才能が開花し、ニューヨークの地で日本人選手として初のグランドスラム制覇を成し遂げた。9月8日、大坂なおみは女子テニス新世代の旗手となった。

表彰式はブーイングから始まった。対戦相手で元世界1位のセリーナ・ウィリアムズは出産後、初の優勝を狙った。試合も荒れていた。客席のコーチの動きがコーチング(指導)と取られ、試合中に警告を受けたセリーナ・ウィリアムズは、主審を「嘘つき」と激しく罵った。

ブーイングをやめよう、とセリーナは呼びかけた

AFP=時事

ジャッジに不満を持っている観客、セリーナファンは大坂の優勝に納得せず、ブーイングを続けた。最初に「もうブーイングはやめよう」と言ったのはウィリアムズだった。インタビューで「やめよう」と呼びかけ、大坂を讃えた。

大坂は子供の頃からアイドルはセリーナである。インタビュアーから決勝でセリーナと対戦して優勝するという夢が叶ったのかと問われると、大坂は「質問と違うことを話したい」と切り出した。

「みんなが彼女を応援したことを知っています。こんな終わり方ですいません。試合を見てくれてありがとう。本当にありがとう」と涙をこぼしながら語った。ニューヨークの観客はブーイングをやめ、新しいチャンピオンに拍手を贈った。

「セリーナと全米決勝で対戦する夢が叶いました。プレーしてくれてありがとう」。インタビューをこう締めくくり、彼女はトロフィーを持ち上げた。

異例ずくめの初優勝だったが、それでも飾ることなく自分の言葉で観客にメッセージを伝えた。トロフィーを手にし、ようやく笑顔が戻った。

大坂はまだ20歳。この先、何度トロフィーを手にすることができるのか。大坂時代の幕開けを告げる優勝になったことは間違いない。

【UPDATE 2018/9/9 12:25】一部、記事内の表現を追記、修正しました。

注目記事