アート&カルチャー
2018年09月10日 07時00分 JST | 更新 2018年09月10日 17時47分 JST

「好かれる人は、だいたい低姿勢」 川栄李奈の仕事観

川栄李奈の「調子にのらない仕事術」に迫る

川しまゆうこ

女優・川栄李奈の演技は、高い評価を受けている。映画、ドラマ、CM......彼女を見ない日はないと言っても過言ではない。現在は、『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)で生活保護の新人ケースワーカー役を熱演している。

しかし、当の本人は「調子に乗らない」ように気をつけているという。芸能界の第一線で活躍しながら、なぜ「低姿勢」を貫くのか? 川栄李奈の仕事観に迫った。

「選んでもらえる」人になる

――高い評価を受けても、調子に乗らないようにしていると聞きました。

「あまり調子に乗らないようにしよう」というのは、AKB48時代から心がけていました。AKBを辞めてからは、よりいっそう思うようになりました。

気づいたんです。

結局お仕事をたくさんしている人とか、よくテレビに出ている人とかを見ていて、「この人は何ですごいんだろう」って考えたときに、あいさつだったり、仕事に取り組む姿勢だったり、人に接する態度がやっぱり違った。

川しまゆうこ

ドラマもそうですけど、結局は「人」が選んでくれるじゃないですか。その人にまず好かれないと選ばれないな、と思って。たくさんの人から好かれるような人は、だいたい「低姿勢」な人だなぁって思ったんです。それから自分の中で意識するようになりました。

もちろん、やりたくない仕事もときにはあります。あるけれど、やらなきゃいけないし、それがいつかきっと何かにつながるだろうなと思って、楽しんでいます。今はなんでもチャレンジしたいから、仕事を選ぶのはマネージャーさんにお任せして、自分から「こういう仕事がしたい」と選ぶようなこともしていません。

やっぱり、この業界にいたら、「川栄李奈」という自分の名前は「商品」のようなものでもある。

だから、仕事とプライベートはすごく切り分けています。「本当の自分の姿をみんなに知ってほしい」と思わないようにしていますし、テレビの向こう側にいる人が「川栄はこうだよね」と評価をしていたとしても、あまり気にしない。

(C)関西テレビ
ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』では、生活保護の新人ケースワーカー・栗橋千奈を演じている。

仕事は仕事。やらなきゃいけないから

メンタルは強いほうだと思います。あまり悩んだりすることもないです。これも、やっぱりAKBにいたっていうのが大きいですね。悩んでいても結局やらなきゃいけないし、やるのは自分だし......。

AKBのときは自分がリーダーなわけでもないから、怒られるときはみんなで怒られるみたいな感じだったのが、一人になってからは全部自分の責任になりました。お仕事がなくなったら、それは自分の責任。だからこそ、あまり悩みすぎても「自分が疲れるだけだなぁ」と思って、悩まないようにしています。

「役を引きずる」とかもまったくなくて、スタジオを出たら「おしまい」という感じです。引きずって自分が崩れるのがすごく嫌なんです。

もちろん、仕事でムカついたり嫌だなって思ったりすることもあるんですけど...。仕事の場面で起きたことを引きずり続けたら、自分が疲れてしまうから、「仕事は仕事」って割り切って、女優「川栄李奈」として、やるときはやる!という決意を持っています。「本当の自分」ではやっていないというか......お芝居で「役」を演じるのと同じような感覚かもしれません。

川しまゆうこ

ほめられても調子にのらない

――「自信を持たないようにしている」とも伺ったのですが。

「自信を持たないようにする」というか、ほめられたり、評価されたりしても、あまり鵜呑みにしないようにしています。私の性格上はならないですけど、調子に乗ったりしたら嫌なので...。

この業界ってすぐ新しい人が出てくるので、ね(笑)。それでしばらくテレビに出なかったら「あいつ消えた」とか言われるじゃないですか。そこもちゃんと理解している。

私は、ガツガツいくよりも「遠慮がちな人」のほうが結構好きなんです。たとえば、オーディションでガツガツ前にいく人よりも、一歩引いている人が受かったりするんです。

だからオーディションでは意識して引いてみるけど、そうしたら落ちるっていう(笑)、そういうパターンもすごく多いんですけど......。「ガツガツいけばよかったぁ」って(笑)。だからそのバランスは難しい。ぐいぐい姿勢で「やりたいです!!」って言って落ちたとしても嫌だし。

でも、すべてはご縁です。落ちたら落ちたで、相性が合わなかった。「だから次」って前向きに考えています。

川しまゆうこ

自分がやりたい仕事、やりたいことができているのが一番

――いまの若い人は「働き方」に悩んでいる人もたくさんいます。

私は、本当に自分が楽しければいいんじゃないかな、と思います。その人にとって、すごく楽しいことをしてほしい。

やっぱり、自分がやりたい仕事、やりたいことができているのが一番いいんじゃないかな。好きだから学ぼうと思うし、好きだから「もっとこうしたい」と思う。好きじゃないとやる気が出ないじゃないですか。

でも、みんながみんな、最初からやりたい仕事をできるわけじゃないですよね。やりたくない仕事をしている人もいると思うし、「やりたいことがない」って悩んでいる人もいると思います。

若い人にメッセージとか、そんなに偉そうなことが言える立場じゃないですけど...。もし今、自分が好きじゃない仕事をしているとしても、それで成立しているならいいんじゃないかな。仕事をしてちゃんとお金をもらっていて、そのお金でちゃんとプライベートを楽しめているなら、何も問題ない。

でも、お給料も安くて、好きな仕事でもなくて、めちゃくちゃ不満と不安が溜まっているなら、やっぱり違うことをした方がいいんじゃないかな、と思います。自分で納得がいって、ちゃんとバランスが取れているならいいんじゃないかな。

「やりたいことを見つけた」と思って、AKBを辞めた。

「やりたいことがない」って言っている人は、そもそもやっていないんじゃないかな、とも思います。人間はやったことないことの方が多いですし、「絶対つまらない」と思っていたものが、実際やってみたらすごく楽しいということもある。何がきっかけで好きになるかわからないので、いろいろ挑戦してみるのがいいと思います。

私は、AKBにいた時はダンスと歌にすごく苦手意識があって......。お芝居をやらせてもらった時、すっごく楽しくて、「やりたいことを見つけた」と思ってAKBを辞めました。

小さい頃からドラマとかもずっと見ていて、「役者になりたい」という思いはそんなに強く持っていたわけではないんですけど、「他の人になれる」のがすごく楽しかったんですよね。普段感情をそんなに出さないので、お芝居になってめちゃくちゃテンションが高い役とか、暗い役とか、いろいろな役をできるのが楽しいって思います。

だから、最初からやりたいことだけをやっているよりも、どこかで苦労とか挫折を経験していた方が、それが強さになってその先に活きてくるんじゃないかな、とも思います。楽しいこととかやりたいことを選ぶ一方で、耐えること、受け入れることも大事だと思いますね。

(C)関西テレビ

自分のイメージづくりやブランディングはしない

――最後に。今後のキャリアはどう設計していますか?

いまはまだ年齢的にも若いので、いろんな方に出会って、いろんな経験をして、自分の中の引き出しを増やそうと思っています。30、40歳になったときに女優としていろんな役ができる人になりたいので、いまはとにかく吸収する時期だなと思っています。

お芝居が好きなので、ずっと女優の仕事はやっていきたいですし、女優業以外にやりたいことも今はないです。

役で自分とは違う人間になるというのが楽しいんです。今回の『ケンカツ』では、若い人にあまり馴染みがない生活保護のケースワーカー役をやっています。学園ものだって、もう23歳なんだから、普通だったら制服を着たりとかできない。自分の普段の生活では触れることができないようなことを、役を通して経験できるから、本当に楽しいんです。

自分のイメージをつくったり、ブランディングしようとは、あまり思わないです。でも、見ていたら「親近感」が湧く人でありたい、とは思っています。「めちゃイケ」に出させてもらったときのイメージで覚えていてくださる方が多くて。「親しみやすい」感じがあればいいなって思っています。

すごくきれいで美しい人って、「話しかけていいのか」っていう雰囲気があるじゃないですか。ちょっとこう、お高い感じ。私はきれいでも美人でもないからその雰囲気は出ないんですけど。その空気感よりは、フラットでフレンドリーな感じを出したい。そういう人の方が私自身も好きなので、そうありたいと思っています。

川しまゆうこ

川しまゆうこ

ドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」

毎週火曜夜9時からカンテレ・フジテレビ系で放送中。9月11日(火)に第9話放送予定。最終回は9月18日(火)。

(執筆:竹村俊助、編集:生田綾、撮影:川しまゆうこ)