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2018年09月11日 18時55分 JST | 更新 2018年09月11日 18時57分 JST

「マタニティハラスメント」訴えた裁判、判決で会社に女性への慰謝料命令

「正義は認められた」一方で「失ったものが大きい」と女性は複雑な胸中明かす

Yuriko Izutani/HuffPost Japan

育児休業後に正社員から契約社員にされ、1年後に雇い止めにされたのは、違法なマタニティハラスメントだとして、都内の女性(37)が教育関連企業「ジャパンビジネスラボ」を訴えた裁判の判決が9月11日、東京地裁であった。

阿部雅彦裁判長は、「雇い止めは無効」だと認定、会社側に慰謝料100万円や給与などの支払いなどを命じた。一方で、正社員としての地位は認めなかった。

女性が2015年に雇い止めにあってから、判決までの間に3年が経過した。

好きだった職場を追われ、保育園にも子どもを預けられずに裁判を続けてきた女性。記者会見で時折声をつまらせながら「私の正義は認められた。けれど、キャリアを復活させるのは簡単ではない。マタハラの被害が大きいことを身にしみて実感している」と複雑な心境を明かした。

女性が雇い止めにあうまで

判決によると、女性は2008年に正社員として入社し、語学学校「プレゼンス」の英語のコーチとして勤務していた。2013年3月に長女を出産し、2014年9月に育休期間を終えた。

女性は、育休明け時点で子どもが通える保育園が見つかっていなかったため、一時的な休職を申し出たが認められなかった。女性は退職を回避するため、週3日の契約社員として働くことになった。

女性は育休中に、「(育休明けの)契約社員は希望すれば正社員への変更が前提」などとする書面を会社から渡されていた。そのため、女性はいずれ正社員として復帰できると考えていた。

契約社員として復職した1週間後、女性は会社側に正社員への復帰を要望した。10月から子どもが通える保育園が見つかったためだ。

しかし、会社側は女性が要望した正社員への復帰を拒否した。

会社側は「子が発熱するなどしても欠勤しない準備をするため」や、「育児休業によるブランク」などを理由に正社員への変更を認めなかった。

そればかりでなく、女性をクラスの担当から外したり、正社員復帰を求めたことで「社内の秩序を乱した」などと、懲戒処分の可能性をチラつかせたりした。

面談の中で上司は「俺は彼女が妊娠したら、俺の稼ぎだけで食わせるくらいのつもりで妊娠させる」などと発言したという。

そして女性は、1年間の契約社員の期間が満了となった2015年9月に雇い止めされた。

Yuriko Izutani/HuffPost Japan

判決では「マタハラ」を認定

判決は、会社が正社員への復帰を求める女性に、誠実に対応する義務を果たさなかったとして、不法行為があったと認定。慰謝料100万円と弁護士費用の計110万円を支払うよう命じた。

判決文では「原告の受けた不利益の程度は著しく、被告(会社側)の不誠実な対応はいずれも原告が幼年の子を養育していることを原因とするもの」と、マタハラを認定している。

また、上司による「俺の稼ぎだけで食わせる」発言については、「暗に妊娠した者とその配偶者に落ち度があると批判しているものと捉えられかねない不用意かつ不適切な言動であり、交渉に臨む態度として許容されない」と批判した。

判決は、雇い止めを無効と認定。女性は現在も契約社員であるとして、2015年10月から判決時点までの、給与を支払うように命じた。

正社員としての地位は認められず

一方、正社員から契約社員への変更については、「同一の労働契約と理解することは困難」と認定した。契約社員は「(正社員復帰までの)つなぎ期間だけと認識していた」という、女性側の訴えは認められなかった。

育休中に正社員復帰を前提とする書面を受け取ってはいたものの、女性が正式に会社と交わした雇用契約書には、そうした記載はなかった。判決は、女性がこうした点についての説明を受けたうえで、契約社員になったと認定。育児休業後の契約変更については、マタハラではないという判断を下した。

代理人の圷由美子弁護士は「育休から復帰する女性は不安を抱えており、契約社員という、仕事を軽減する働き方を出されると、ついサインをしてしまう可能性もある。その特殊な事情を考慮されず、法律論として解釈されてしまった」とコメント。

原告の女性は「私は会社を信じてしまった。このやり方が違法と認定されなければ、他の会社で育休明けの女性を解雇するために悪用されてしまう恐れがある。他の女性たちには『契約書をよく確認して』と言いたい」と話した。

Yuriko Izutani/HuffPost Japan
女性の長女と上司。職場との関係は良好だった(裁判の報告集会で示されたスライドより)。

逆に会社側から訴えられることになった女性

今回、女性は提訴時に記者会見で話した内容が「名誉毀損」にあたるとして、会社から逆に訴えられていた。判決では、会社の訴えは認められなかったが、女性側にとっては大きなプレッシャーとなっていたという。

圷弁護士は「子どもを抱えて裁判を続けてきたこと自体に、大変な困難があった。さらに会社側は女性を訴えるなど、ここまでするのかという憤りがあった」とコメント。

女性は「(会社の)嫌がらせはすべて判決文で否定してもらえた。私の正義が伝わったのではないかと思います。ただ、会社に騙される形で失った正社員の地位は回復せず残念。キャリアも絶たれ、失ったものは非常に大きいと思います」と涙ながらに語った。

また、社会へのメッセージとして、困難な中でも裁判を続けてきた女性は以下のように話した。

「マタハラは社会が一体となって、女性だけでなく、皆で解決していかなくてはならない問題。働き続けたい人も、子育てに専念したい人もそれぞれができる社会に。社会が一体となってマタハラはおかしいよねってことを言っていけたらいいなと思います」。