パイオニアが経営悪化した理由は? 香港ファンドが500〜600億円を出資して筆頭株主に

カーナビ専業で生き残りをかけるも裏目に
パイオニアのロゴマーク
パイオニアのロゴマーク
Chesnot via Getty Images

経営再建中のカーナビ大手「パイオニア」は9月12日、香港を拠点とする投資ファンド「ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア」(BPEA)の支援を受けると発表した。BPEAは2018年内に500~600億円を出資。日経新聞によると、筆頭株主になるという。

パイオニアは18日に総額250億円のつなぎ融資も受ける予定で、共同通信によると9月下旬が返済期限の133億円の借入金の返済に充てるという。

■かつては「オーディオ御三家」

パイオニアは、1938年に福音商会電機製作所として都内で創業した。国内では珍しかった高音質スピーカー「パイオニア A-8」の発売を皮切りに、スピーカーメーカーとして地位を築いた。

戦後の1961年にパイオニアと社名変更し、オーディオメーカーに転身。1960〜70年代の高級オーディオブーム当時は、山水電気(2014年に破産)、トリオ(現JVCケンウッド)と共に「オーディオ御三家」と呼ばれていた

■カーナビ専業にシフトするも裏目に

1980年代にはオーディオ部門が低迷したため、国内では「カロッツェリア」のブランド名を使ってカーナビ事業に参入。高品質の映像と音を記録できるレーザーディスクや、大型のプラズマテレビに注力した。

しかし、レーザーディスクは通信式カラオケの台頭で減速。プラズマテレビも大型液晶の普及で売上げが伸び悩んだ。家庭用オーディオも携帯型の音楽プレーヤー登場で存在感が低下した。

こうした中で、パイオニアは2010年にテレビ事業から撤退した。世界シェア1位だったDJ機器事業も、2014年にアメリカのファンドに売却。創業から手がけるオーディオ事業も売却して、2015年に音響機器メーカーのオンキヨーと経営統合された

これらは、全て経営資源をカーナビ事業に集中させる戦略だったが裏目に出ることになった。

ニュースイッチによると、GPSを搭載したスマートフォンの普及で、車に後付けする市販向けのカーナビ需要が減少傾向になった。

その上、自動車メーカー各社もスマートフォンとカーナビの連携機能といったコネクテッド機能の採用で車の付加価値を高める戦略にかじを切った。パイオニアは度重なる仕様変更への対応に追われることになり、小谷進会長によると「莫大な開発費を費やさざるを得なくなった」という。

朝日新聞デジタルによると、2018年6月末時点で保有する現預金は290億円まで減っていた。9月下旬に借入金133億円の返済期限を控え、4~6月期の決算短信には、事業継続への懸念を示す「継続企業の前提に重要な疑義が存在」との注記がついていた。

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